三国志 きらめく群像

　ちょうど、少し前に身体の調子がどうしてもいい感じがしませんでしたから、ベッドで寝ました。当然本をもっといきました。この本はけっこう部厚いのですが、ほぼ全部に目を通しました。やっぱり、実に面白いです。やっぱり、この著者はもう面白すぎるなという思いですね。

　こうしてベッドでなく、電車の中なんかですと、困ってしまいます。混んでいる電車の中でおおいに笑いそうになってしまうのです。ただただいろいろところで感心してしまいます。前にも書きましたことですが、曹操に逆らった韓遂のところなんかどうしても私は唸ってしまいました。魅力ある人物だったのでしょうね。
　それと袁紹の何人もの幕僚たちですが、優秀な人たちだったのだろうに、袁紹自体が駄目だったのですね。でも社長はやはり選べるのですからね。
　以下は、前にも書いたことです。

　それから、孔明には嫌われていました魏延に対する著者の思いが私と同じなのを知り嬉しくなりました。そうです、魏延が長駆して長安を攻めようという提案は間違いではありません。だが、ガチガチに生真面目な孔明には理解しようがなかったのでしょうね。ただ、魏延の提案のほうが弱小ベンチャー企業の蜀には、大いなる可能性のある提案だったように思うな。
　以下もまた同じく思うのです。
　古来、正史「三国志」よりも裴松之の註の方が字の分量が多いとされてきました。註のほうが２、３倍なのではないかと言われていたのです。私自身は、「そんなにないよ、おそらく１．５倍くらいだろう」なんて思っていたのですが、なんとなんと、つい近ごろキチンと字数を数えた人がいるということで（２０世紀後半にある学者は数えたところ３倍近いと言っていた。これ
は大ウソだったわけだ）、正確に数えると、わずかに正史のほうが字が多いのだというのですね。もうこれはたまげました。「うーん、そうなのかな」。………………………でもでも、やっぱり、私は裴松之の註が今も多く思えるのです。いや、この私の感じ方もまた、古いのかな。古いというよりも、何かに囚われすぎなのかしら。

　どうしてもね、「正史を書いた陳寿はやはりすごい歴史家ですね」と私が感じることが、実は、まだ私がよく判っていない、どうしても裴松之の註に書かれているたくさんのことと、そして「演義」のたくさんのこと、そして吉川英治のが、私には、まだまだずっと「三国志」なんですね。
　宮城谷昌光さんの「三国志」にこそ期待しています。そして私のこの期待は間違いないことでしょう。