2008年08月27日
周の雑読備忘録「原田直示『笑っている─原田文、ダウン症20歳の記念に─』」
書 名 笑っている─原田文、ダウン症20歳の記念に─
著 者 原田直示
発行所 一莖書房
定 価 2,000円+税
発行日 2008年7月20日初版発行
読了日 2008年8月27日
本日手に入って、すぐに読み終わってしまいました。私が今年の2月9日に行ってきた絵画展でした。
http://shomon.livedoor.biz/archives/51322397.html
絵画展「原田文の世界」を見てきました
この絵画展をされたのは、埼玉県立近代美術館で、ここは、私の母校である埼玉大学の在ったところでした。そして、この絵画を展示されていた原田文さんのお父さんも、同時にここで写真展を開催し、お祖母さんの斎宮美重さんも水墨画を展示されていたものです。
そして原田直示さんは、私がちょうど1969年8月21日に東大闘争で、安田講堂で逮捕起訴され、府中刑務所から保釈になったあと8月末か9月に、埼大のバリケードでお会いしています。そこの場に、新しく出来た美術館で約40年近く経ってまたお会いしていたわけです。
ただし、この本は手に入れるまでに時間がかかりまして、私は次のようなUPをしたものでした。
http://shomon.livedoor.biz/archives/51495869.html
インターネットで注文しても未だ着かないものもあります
http://shomon.livedoor.biz/archives/51498439.html
もう手に入って読み終わりました
でもこうして手に入って読んでみますと、やっぱり読んでみてよかったなあ、という気持がわき上がり、私の娘二人にも読んでほしい、絵画を見てほしいと思ったものでした。
原田文さんは、昭和62年12月7日生まれです。だが、そこで直示さんは医師から伝えられます。
「おそらく、ダウン症です」
何を考える猶予も余裕もなく厳粛な空気が凍るようだった。(6ページ)
このときのご両親の驚きはいかばかりだったでしょうか。2カ月程たった頃の昭和六十三年二月十三日、直示さんは、友人に手紙の中で次のように書いています。
泣き声は弱く、体重の増加も普通児には及びませんが、それでも文は日一日と大きくなっています。とにかく手をかけた方がよいということでしたので、奈良から手伝いに来ていた義母は、「子守唄」を歌ったり、言葉かけをしたりと、一ケ月間献身的に文の面倒を見て帰りました。義母、妻の懸命な姿を見て、不安と心配で仕方なかった私は、一つひとつの問題が解決されそうな気にもなってきました。(8ページ)
このときは、私の二人の娘は小学生で、「ああ、あの頃だなあ」なんて思ったものです。
直示さん、そして奥さま、文さんのお姉さんも、みなで、文さんを見ていきます。これは実に大変なことだったでしょう。
「文の見た絵本・名画カード・絵カード・音楽テープ等 0歳〜三歳」(16ページから)に、文さんへのご両親の働きかけの記録が細かく載せられています。私なんか、私の娘への、こんな記録なんか、少しもありません。羞しいばかりです。
「二歳十ケ月」のところに、「*幸田文さん死去八十六歳」とありました。ああ、思い出した。私はお父さんの露伴も、この文さんも好きでしたので、今思い出したことがいくつもあります。
あ、今84ページを読んで、文さんの名前は、「幸田文さんのファンでしたので、その名前をいただきました。りんとした生き方、文章共にお手本になるといいなと思いました」(84ページ)ということで、「なんだ、そうなんだ」と思いました。私も中二のときに、『父、こんなこと』を読んでから、ずっとファンでいます。もちろん、私はお父さんの露伴のファンでもあります。
でもこの記録を見て行っても、私は自分の娘への愛が到底直示さんご夫婦の幾分の一にもならないことが羞しくなります。
長女の独奏、メンデルスゾーン作曲「ヴァイオリン協奏曲・ホ短調」の第三楽章でも、一緒になって、真剣な顔で弾きまくっていた。
そして、終われば、いち早くヴァイオリンを小脇にかかえ最敬礼をするのであった。
迷惑ではないかと心配したが、なりゆきに任せていただいた。
幸い、保護者の方々にも大目に見ていただき、
「文ちゃん、上手だったね。お姉ちゃんにもびっくりしたけれど、文ちゃんのリズムが合っているので、びっくりしたよ」
と先生におっしゃった方もいたそうだ。(65ページ)
私は、この言われた保護者の方の言葉で涙を流していました。
今ここ(64ページ)を読み返して、また深く感じました。
妻の育休があけ、文は公立の保育園にお世話になることになった。
障害を持った子どもを預かるのはどんなに大変だったことだろう。だが、先生方は温かく受け入れてくださり、幼い子どもが学ばねばならない一つひとつを丁寧に教えて下さった。乳幼児期の大切な時期に深い愛情と適切な躾をしてくださったこの園に深く感謝している。忙しい中、びっしり書き込まれた毎日の連絡帳は我が家の宝物である。(保育園でもクリスマス会 平成六年十二月十六日)
私の今このすぐそばにも、二人の娘の保育園でも連絡帳があります。これは本当に宝物です。でも、私はその頃は、全然書き込んでいません。遠慮があったのですね。おおいに反省するところです。
でも私はこのまま書いていくと、ただただ、この直示さんの書かれたことを写すばかりのことになってしまいそうです。それはまずいな、いけないなあ、と思うばかりです。
いくつもの作品展の記録が書かれています。私ははじめて見た今年2月9日の作品展のことも書いてあります。私はただただ、あのときの私の記憶を呼び覚ましました。
この作品展の「参観者の感想」に次のようにありました。
文さんの作品もとても素敵ですが、文さんを取り巻くご家族や知人の方の思いにも心を打たれました。(137ページ)
このことは、私のそのときの思いと同じです。そしてこの文さんの作品展のときに、同時に直示さんの写真展、斎宮美重さんの水墨画展も見たわけですが、それぞれに、私には深い印象を与えてくれました。
またこうした作品展が開催されたときには、必ず拝見しにまいります。でも作品の郵便はがきもあったのですね。私は阿呆ですから、まったく気がつきませんでした。判っていたら、多くの友人に切手を貼って送っていたのでしたね。
またの機会ですね。


