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 建安の七子の一人である友人の阮元瑜が亡くなったときに作ったという詩です。この寡婦とは、阮元瑜の未亡人のことです。
 前半六句は、自然のさまを詩い、後半八句では未亡人の思いから、彼女の声として詩っています。

    寡婦(註1) 曹丕
  霜露紛兮交下 霜露紛として 交(こもごも)下り、
  木葉落兮淒淒 木葉落ちて 淒淒(註2)たり。
  候鴈叫兮雲中 候鴈 雲中に叫び、
  歸燕翩兮徘徊 帰燕翩(へん)として 徘徊す。
  妾心感兮惆悵 妾(しょう)が心感じて 惆悵(註3)として、
  白日忽兮西頽 白日忽(こつ)として 西に 頽(くづ)る。
  守長夜兮思君 長夜を守りて 君を思い、
  魂一夕兮九乖 魂一夕に 九たび 乖(はな)る。
  悵延佇兮仰視 悵(註4)として 延佇(註5)して 仰(あお)ぎ視れば、
  星月隨兮天廻 星(ほし)月(つき)に従いて 天に廻る。
  徒引領兮入房 徒(いたづ)らに領(りゃう)を引きて(註6) 房に入り、
  竊自憐兮孤栖 竊(ひそ)かに自ら 孤栖(註7)を憐む。
  願從君兮終沒 願くは君に従いて 終(つひ)に沒せん、
  愁何可兮久懷 愁ひは何ぞ 久しく懐(いだ)くべけん。

  (註1)寡婦 未亡人。夫に死別して再婚しないでいる婦人
  (註2)淒淒(せいせい) わびしく悲しいさま。
  (註3)惆悵(ちゅうちょう) なげき悲しむ
  (註4)悵(ちょう) うらむ。なげく。
  (註5)延佇(えんちょ) 長い間たたずむ
  (註6)引領(りょうをひく) 首を長くして待つ。
  (註7)孤栖(こせい) ひとりぼっちで住む

  露が降りる状態から、霜が降りる時が入り乱れて、
  木の葉も散ってしまい、寒々しくわびしい様子である。
  渡り鳥の雁がやってきて、雲の中で鳴いている、
  帰っていく燕は、翻ってまだ行ったり来たりしている。
  わたしの心は感じてしまい、なげき悲しんでいる、
  太陽もたちまち西にしずみかけている。
  秋の夜もすがら、あなたのことを思っている、
  魂は一夜に何度も離れている。
  長くただずむのを嘆いてあおぎ見れば、
  星は月にしたがいて、天をめぐっている。
  いたずらに首を長くして(亡き夫の帰りを)待ち望み、部屋に入り、
  ひそかに自分を哀れみ、一人だけで住んでいるのを悩む。
  願わくは、あなたに従って、死んでしまいたい、
  この愁いが、一体どうして、長い物思いとなってしまっているものだろうか。

 友人の妻が未亡人として、独りで暮らしているのを曹丕は大変に気にかかったのでしょう。そして実は、この詩を曹丕が書いたということは、この未亡人に対する求愛の詩とも思えてきます。
 間違いなく、これはその親友の未亡人に対する求愛の詩です。
「守長夜兮思君」とは、亡き親友を、その妻が思っているだろうという長い夜を通して、実は曹丕自身が、あなたをこそ思っているのだという気持を私は感じました。

 そんな曹丕のことが私は好きです。

 画像は29日朝8時に撮りました。