一昨日青空文庫で、この作品を読んで涙を流していました。やはり太宰治はいいですね。そして、この作品の対象になった藤野先生もいいです。魯迅が書いた『藤野先生』もいいですが、この太宰治も実にいい文章です。そして太宰治は実に丁寧に書いていますね。
 思えば、よく太宰治がこの作品を書いていてくれました。もしも、谷崎潤一郎だったら、魯迅の作品と比べられるようなものにはならなかったでしょう。いやこれは、そんなことを言い出す私がおかしいのです。
 この作品を読んで、主人公以外の学生たちのことも思い浮かべます。そしてみなが船に乗って見ているだろう松島のことも思い浮かびました。
 幻燈の中で小さな映画の映像を見つめている魯迅を思います。その気持を少しは思いやることができたのは、太宰治だけだったのです。他の作家を何人も思い浮かべました。どの作家も思い浮かべても、この「魯迅『藤野先生』のことでは、太宰治には比較のしようがないのですね。いや、そもそも魯迅の作品の素晴らしさを判っている方がどのくらいいるのでしょうか。
 そのたびに私はただただ太宰治を思い浮かべるのです。