2018080602 万延元年三月三日の「桜田門外の変」に、黒澤忠三郎らとともに戦った水戸浪士の一人に佐野竹之助がいます。

出郷作 佐野竹之助
決然去国向天涯 決然国を去って天涯に向こう10110617
生別又兼死別時 生別又兼ぬ死別の時
弟妹不知阿兄志 弟妹は知らず阿兄の志
慇懃牽袖問帰期 慇懃に袖を牽いて帰期を問う

決然として故郷を離れて 今回の挙に向かった
生きて別れることは 死別のことも兼ねている
この私の決意を弟妹は知らないでいて
「お兄ちゃんいつ帰ってくるの」と袖をひいて聞いてくる

見事井伊大老をたおして、老中細川藩邸に自首、斬奸の趣旨を上書しました。だが、重傷のために同日夕刻亡くなりました。享年23歳でした。
この「出郷の作」も同じく、この日戦った同士の詩であるわけですが、黒沢忠三郎らの詩とは大きく違います。「お兄ちゃん、いつかえってくるの」ときく弟や妹の姿が目に見えるような思いがします。
また佐野竹之助はたくさんの短歌を残しています。

思ひきや今のうき身は敷島の
やまと心の露の魁

敷島の錦の御旗もち捧げ
すめら御軍の魁やせむ

もろともに思ひる矢の強ければ
堅き岩をもとほさざらめや

君が為積もる思ひの天つ日に
とてて嬉しき今朝の淡雪

桜田の花とかばねをさらすとも
なにを撓(たわ)むべき大和魂

大君のうきみ心をやすめつつ
鬼住む国に桜狩せむ

憂き事はいや積るとも剣(つるぎ)太刀(たち)
あだなす人をはらひ清めむ

かりならぬ旅のやどりに今日はまた
おもひぞ出ずる敷島の道

八重葎(むぐら)しげりて道もわからねど
さげはく太刀に薙(な)ぎ尽くさまし

私が学生のときから知っていたのは、一番最初の短歌だけでした。今こうして他の歌もたくさん知ることができて嬉しい思いです。
私が黒澤忠三郎「絶命詩」とならんで、よく吟います「出郷作」でした。(2003.06.23)

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