20170724012017072402 曹植の詩は彼の生涯に似て、哀しい詩ばかりなのですが、これもまた曹植29歳のときの自分の境遇を詩った悲しい作品です。

野田黄雀行 曹植
高樹多悲風 高樹 悲風多く
海水揚其波 海水 其の波を揚ぐ
利劒不在掌 利剣 掌(て)に在らずんば
結友何須多 友と結ぶに何ぞ多きを須(もち)いん
不見籬間雀 見ずや籬間(註1)の雀
見鷂自投羅 鷂(たか)を見て自ら羅(あみ)に投ず
羅家得雀喜 羅(あみ)する家(ひと)は雀を得て喜び
少年見悲雀 少年は雀を見て悲しむ
抜剣払羅網 剣を抜きて羅網をはらい
黄雀得飛飛 黄雀 飛び飛ぶを得たり
飛飛摩蒼天 飛び飛びて蒼天に摩(ま)し
來下謝少年 来り下りて少年に謝す

(註1)籬間(りかん) 籬は柴や竹であんだ垣根。

高い樹には 悲しい風が吹きつけ
海の水は その波を荒らげている
鋭い剣を手にもたにあのだから
多くの友を持つ必要はないだろう
ごらん、あの垣根の間の雀を
鷹を見て自分から、カスミ網の中に飛び込んだ
網をかけた人は 雀を捕らえて喜んでいるが
少年は雀を見て 悲しむのだ
剣を抜いて 網をきりひらいた
黄色の雀は また飛ぶことができた
飛び飛んで 青空にとどかんばかり
また下りてきて 少年に感謝している

10112913 兄である曹丕が魏の文帝として帝位についた頃、曹植の側近のものは、次々と兄により誅されていきます。だが、曹植はそれを目の前にしながら、何をすることもできません。それが最初の2句に表れています。高い樹である自分のところには悲しい風ばかりが吹き、海は暗く波がさわいでいます。
この詩の中の少年は、網に囚われた雀を助けることができますが、曹植は、自分の側近や友人を救うことができないのです。彼もまた剣を抜いて、友のところへ駆けつけたかったことでしょうが、こうして詩を作ることしかできなかったのです。
その哀しい思いが伝わってくる曹植の代表作の一つです。(2003.05.13)

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