10122110 司馬遷の書いた史記には、最初から、五帝本紀、夏本紀、殷本紀、周本紀、秦本紀となっていて、そのあとは秦始皇本紀となっています。始皇帝は一つの国と同じように大きな存在だと司馬遷は見たものでしょう。
 でも時代は、その秦のあとは漢という国の歴史になるわけですが、司馬遷はその前に「項羽本紀」を置いています。このことが私には、実に司馬遷が偉大な歴史家だと思うところです。
 項羽は実に戦に強い人間でした。それに最終的には勝利したはずの劉邦も何度も何度も戦に破れています。だが個々の戦争には強いはずの項羽でしたが、実に最終的には破れてしまします。「四面楚歌」の故事にあるように、項羽の国であるはずの楚国の多くの兵士も項羽を打とうと項羽を包囲します。
 史記はやはり、後半の列伝が実に面白いわけで、最初の「本紀」などは、どうしても面白いとは思えません。でも、この項羽本紀だけは実に読んでいていいのです。乱暴でただただ戦争に強いだけの項羽にも、実にいいシーンがたくさんあります。やはり、「垓下の歌」には、涙を流してしまいます。

   垓下歌     項羽
 力拔山兮氣蓋世 力は山を抜き 気は世を蓋(おお)う
 時不利兮騅不逝 時利あらず 騅逝(ゆか)ず
 騅不逝兮可奈何 騅の逝ざるを 奈何(いかん)すべき
 虞兮虞兮奈若何 虞や虞や若(なんじ)を奈何せん

 もちろん、項羽には詩が作れるわけがなく、これは司馬遷が作ったものでしょうが、どうしても項羽と虞美人のことを思ってしまうのです。
 そして項羽は私にも忘れられない英雄です。(2010.09.27)