11010307 この本をひさしぶりに開きました。私は吉本(吉本隆明)さんの本等以外は、みな下北沢の古書店に我孫子の家に来てもらって売ったつもりでした。でもこの本はこの王子の家で私の義父が読んで自分の書棚に置いてあったのでした。
 最後のページで、この本は私が大学2年の秋に赤羽の紅谷書店で買って読んだものだと判りました。私が東大闘争の安田講堂で逮捕される数カ月前のことでした。
 最初の「司馬遷傅」が次のような言葉で始まります。

    司馬遷は生き恥さらした男である。士人として普通なら生きながらえ
  る筈のない場合に、この男は生き残った。……

 この生き恥とは、彼の受けた宮刑のことです。
 私が「史記」を読んだのは、高校1年の秋でした。実に長い書物で、私は筑摩書房の「世界文学大系」で全2冊読んだものです。
 最初の巻は、「本紀、表、書、世家」からなっており、下巻がすべて「列伝」です。もうこの列伝は面白いばかりなのですが、上巻は、少々退屈です。でも「これさえ読み終われば、列伝という超面白い篇になる」と思い込んで読んだものです。
 実に司馬遷の史記の醍醐味といいましたら、この「列伝」だと言って間違いないでしょう。もちろん、私は本記も面白かったのですが、でもそれはまた列伝を読んだあとで読みなおすと、これまたよく判ってくるという思いです。

 それにしても武田泰淳はたくさんのことを持っている作家だなあ、とつくづく感ずるものです。
 今後もこの司馬遷の『史記』の中からいくつも書いていくつもりでいます。(2010.03.05)