11021411 5月18日に「第5回千葉YMCAチャリティーラン」がありました。前日夜から雨が降り続けて、とても心配でした。この雨を見ながら私が思い出したことがあります。

 私が赤坂で広告制作会社のチーフプロデューサーやっていたときの話です。あるクライアントの全国紙の全15段の広告制作をやることになりました。確か掲載は1月の15日。
 それで、ちょっとめんどうなクライアントなもので、11月末からまず最初8点くらいプレゼンテーションしたんですね。普通なら3点くらいで、しかもそれのほうがクライアントのためにはいいのですが、ここの社長はくせがあって、ろくに打ち合せもしないのに、カンプのプレゼンだけ求めるのです。カンプ見てからいろいろ注文つけだすのです。それが分かっていたから、8点くらいだして、これが全部けられても、そのときの相手のけなしかたから、考えていってそのあと2点くらのプレゼンで決るだろうという作戦だったのです。会社のデザイナー4名の総出演と外注のコピーライターの努力でいろいろ自信作ができました。
 ところが敵もさるもの、ひどい人で、いっこうにOKしないのです。それになにかこういうコンセプトでやってくれというようなことをひとつもいわないのです。住宅に関連した会社だったのですが、「とにかく人にとって、家は一生で一回しか買えない大事なもの」くらいしかいわないのです。
 それでいったい何点カンプつくりましたかね。全部で80点くらいだったか、とにかくもうアイデアだって、枯渇してしまいますよ。しかもタイムリミットがあります。
 なんと1月になって、もう期限的にぎりぎりだというときのプレゼンテーションで、

 社長「もうわかってねえな。家ってのは、一生の大事な買物だか
   ら……」
 私「だからそれを充分考えてあると思うのですが、たとえば社長
  はどんな、家の大事さをどう表現されると、ああいいなと考え
  るのですか」
 社長「それを考えるのが君らだろう。たとえばだな、家を買った
  人が、部屋に座っていて、雪見障子ごしに庭を見ていて、日の
  光が空けた障子の間から射していて、それで、ああ俺はこの家
  を買えたんだなと思えるような……………」
 私「分かりました、それでいきましょう」
 社長「でも間に合うのか」
 私「やります。すぐまずカンプ作ります。それでOKなら、これ
  は写真でいきますから、ぎりぎりだけどやりますよ」

 もちろん私とアートディレクターで、ちょっと目配せしたりして話しているわけですが、さあこれからが大変です。
 カンプOK、コピーほぼOK、あとは撮影です。私はプレゼンの際の社長の話のときから「これは私の詩吟の関係のどこかの家でやればいいだろう」とひらめいていたのです。
 しかしその家をさがさなくてはなりません。しかしこれはというところないんですね。雪見障子、日本間、日の光がうまい具合にさす、当然日本庭園、こんな条件のところ短期間ではむずかしいですよ。それで、私の頭には最終的にどこも無理だったら、うちの親父の自宅を使おうと思っていたのです。ただ雪見障子と日の光が問題です。親父にきいたら、床の間の部屋は雪見障子は使ってないが、ほかの部屋にあるとのことで、それをもってくればよい。最後の日の光ですが、その部屋は、庭の方向だと日がうまく射すのが午前9時なんですね。でもカメラマンが、とにかく強力なストロボでも使って、やってしまおうと決定しました。
 さて、スケジュール的にはリミットの日、私とディレクターとカメラマンと助手、午前8時に我孫子駅に集まりました。しかし天気予報のとおり、小雨の天気。一同がっくり。でもやるしかない。バルカーという、ストロボを圧倒的に強力にしたものを、カメラマンは4台もってきてくれた。それだけじゃない、カメラマンは、日本間にあうような座布団とか、いろいろな小物まで用意している。なんせもうスタイリストやとっている時間も予算もなかったのです。ただ、カメラマンがいうには、バルカーがいかに強力でも日の光にはとうていかなわないそうな。そのカメラマンは照明に関してもプロでしたから、本当は日光が欲しかったのです。
 それでいよいよ現場、うちの親父、おふくろ、兄嫁見守る中、バルカーを庭にすえていろいろポラロイドどり、親父たちも絵になるような小物いろいろ出して協力。ポラみて、「やはりバルカーだと弱いね、なんとか太陽出ないかな」などと言って、一同空を見上げたとき、奇跡が起きたんです。急に雲が晴れて、太陽が姿現したんです。すぐさま撮影開始。約8分で太陽は雲の中にはいってしまいました。それからバルカーつかっても撮影。 いや一同感動しました。あんなことあるんですね。でも鈴木さんというカメラマンがそのときいってました。

  こういうことってあるんですよね。みんなの気持ちがひとつに
 なると、こういうこと起きるんですよ。

 それから必死にやって、見事全15段完成。社長よろこんで、その広告をパネルにしてくれということで、社長室に早速かざりました。全国の支社支店にも。それに私の親父のうちにも。
 でも本当にこんなことあるのですよ。みんなの思いが一つになるときに、こうして一見不思儀なことが起きるものなのです。

 雨の天気見て、こんなこと思い出しました。(2002.05.20)