11040405 私が隆慶一郎の作品で最初に読んだのは、『吉原御免状』でした。そしてそのあとは『かくれさと苦界行』を読んでいきました。ただどうしてもこの作家の作品には馴染める思いにはなりませんでした。
 思えば、どうしても私は小林秀雄を好きなことは間違いないことだったのです。やはりどうしてもアルチュール・ランボー『地獄の季節』(岩波文庫)の訳者の小林秀雄は忘れることができません。
 でもそんな小林秀雄に囚われているとしか思えない著者の作品には嫌になったものでした。この二つの作品で、主人公松永誠一郎に執拗に襲いかかるのは闇の柳生軍団ですが、これこそが小林秀雄なのです。だが、小林秀雄は実際にはそれほどの人物ではなかったように、その柳生のあとと言っていいだろうときに書いたのが、この作品なのです。
 その最初の二つの作品の主役の松永誠一郎とされたのは、実は誠一郎は後水尾(ごみずのお)天皇の落胤と言われているのです。
 この天皇は、大坂夏の陣が終わったあと、徳川幕府の最大の敵になりました。この帝のことを書いたのがこの作品です。ただし、この作品も作者の死で未完で終わりました。

 私が27歳のときに、京都の修学院離宮へ行きました。この後水尾上皇が作られた大きな庭園です。私はいつもこの離宮の中を後から、「もっと早く歩くように」と園の係に執拗に言われ続けました。その係の方の声とこの作品をいつも思い出しています。
 思えば、この天皇に関しても、少し書いていこうかなあ。