続々会社の寿命強さの研究」で「西武鉄道グループ」について書きました。さらにこのグループについて詳しい資料含め私たちに説明してくれている文書があります。

題  名 世界一の大富豪堤義明「コクド」の研究
    なぜ「コクド」は税金を払わないのか
    資産四十兆円を守る驚異のシステム
著  者 立石泰則
掲載誌 「文藝春秋」1994年9月号

11061207 ほぼ私が書いていた内容と同じなのですが、どうやって手にいれたのかは明らかではありませんが、コクド(旧国土計画)の昭和63年3月期から平成5年3月期までの財務諸表BSとPLが資料として提示されています。どうしてか決算書を手に入れることができたのでしょう。もっとも、各株式会社は公告を義務付けられていますから、これは本来むずかしいことではありません。とはいえ、私などは初めてみる資料になります。この内容については思っていたとおりという内容だと思います。
 問題は決算書の中身ではなく、税務申告書の中身だと思うのです。会計上の利益と税務上の利益とは異なっているものだからです。会計上ではわずかながら利益が出ています。

  課税対象となる企業の“儲け”は。損益計算書に記載された
  「利益」のことではない。「利益」は企業会計上のもので、「収
  益(売上)註」から「費用」を差し引いて計算されるものだ。そ
  れに対して、課税される企業の“儲け”とは、法人税法上、「所
  得」とよばれるものである。「所得」は「益金」から「損金」を
  差し引いて計算される。

 (註)ここでいう「収益」というのは「収入」といったほうがい
      いのではと思います(周)。

 この所得が多分極端に少ないか、あるいはマイナスだからということで、税金も極端に少額か、あるいは1銭も払っていないのではという予想が生まれるわけです。私がこの資料でみる限りは、法人税も住民税(均等割以外の法人税割額)もわずかながら払っているように思えます。それは「法人税等充当額」をわずかでも計上しているからです(平成5年3月期は15百万円)。
 また、昭和63年と平成元年で利益準備金が百万円増え、同じく平成2年より3年、3年より4年と利益準備金が百万増えているのは、わずかながらも配当をしていることを示しています。おそらく年500万円から1千万円のあいだくらいの配当をしているでしょう。配当は税引き後の利益からしかできません。税金はわずかながらでも払っているでしょう。それに第一受取利息からの所得税はそのまま源泉されているわけなのです。だが以上のようなことは、この立石氏の文章には書かれておりません。
 この申告書が手に入らないことから、所得がいくらあるのだろうという推測をしていくことになります。この文の中では、その推測の数字あわせの部分かかなりな量をしめています。受取配当金の益金不算入額についてはくわしく述べられています。私など気がつかなかった部分です。しかしあげあしとりになってしまいますが、金利の損金不算入部分のことについては何も書かれていません。おそらくはこのことも踏まえたコクドの借金戦略だと思うのですが、そこまでは筆が及んでいません。けっこうな数の会計士や税理士が関与してこの研究文ができているような筆者の書き方なのですが、どうしてなのでしょうか。
 このくらいのことが、少々気になったくらいで、あとはとりたてて目新しいことが書いてあるとは思えませんでした。ただ西武鉄道グループが前々から、こうした内容のことはささやかれていながら、このように「文藝春秋」に書かれてしまうことを見ると、おや少し堤義明への風向きも変わってきたかなと思うとの同時に、この内容だと「そのくらいで、ウチのこと判ったなんて思うなよ」というコクドの余裕みたいなものも感じてしまいます。ともあれ、どちらも私たちの存立している場とは随分離れているなと思います。やがてはどうしたって私たちこそが、社会と歴史の主役になるのですから。
 コクドがどのくらいの資産を帳簿上持っているのかという数字を見るのには、いいかと思います。そうした帳簿上の資産の源泉は膨大なる借金であり、その金利のために極端に利益は圧縮されて、税金をはらうこともできないくらいです。だから大した利益をださないこの会社の株価は安いのです(コクドは上場していない)。だから、だから、その株を相続するとしても、相続税をそんなに恐れることはありません。だがこの赤字に近い会社が、西武鉄道の大株主であり、その西武鉄道を通じて、たくさんのグループ会社の株式を所有しているのです。そして、その帳簿上の資産には、大変な「ふくみ」があると考えられるのです。この「ふくみ」があるから借金できるわけだ。
 この「ふくみ」に課税しようなんてことは、中核派でも政権をとったら、やるかもしれませんね。それにいつかアメリカもいいだすかもしれません。(1994.08.24)