11061608 昔新宿のある飲み屋でのことです。私はそこで、いかに平将門が素晴らしいのかを大声で演説していました。将門が土地をいかに大事なものと考えていたのか、関東の土地を関東の人民の為に解放するためにいかに闘ったのかということを。随分長くはなしていましたが、そこのママがひとこと

  その将門さんがやりたかったのを、実現したのがマッカーサー
  なんだよ

といわれ、絶句しました。
 たしかにそうなんですね。農地改革というのは、大変に偉大な改革です。アメリカという国はよく日本のことを理解していたんですね。まああれは、アメリカではなく連合軍だという意見もあるでしょう。でもコミンテルンの二七テーゼ、三二テーゼの日本の把握をみていると、ソビエト共産党には日本の社会の正確な分析ができていたとは思えません。やはり戦後のさまざまな改革はアメリカの分析よりできたものだと思います。
 逆に日本には鬼畜米英といいながら、アメリカという国を分かっていたでしょうか。勿論否ですね。アメリカどころではなく、中国もアジアの国々のことも何も理解していなかったといえるでしょう。
 でも戦後という言葉もなくなりつつある現代はどうなのでしょうか。日本はアメリカを判っているでしょうか。アジアの国々のこともどうでしょうか。そんなこと思うとき、打ちのめされるほどのことがあります。それが日米構造協議です。

書  名 日米構造問題協議最終報告
編  者 日米構造問題研究会
発行所 財経詳報社

 あるときに私はNIFTYの新聞記事検索で、この日米構造協議という言葉で検索してみました。最初その年の7月から9月までとしたら、莫大な件数があり、課金を考えて、9月のみとしました。しかしそれでも出てくる出てくる、大変な記事の分量です。それで、このひとつひとつの記事をながめてみると、それはもう実に細かいんですね。地方新聞にはよく大店法のことなんかが書いてあったものです。
 そしていま、ああそうかこれは日米構造協議のおかげかなんてのが、いくつか思いあたります。銀行のCDが日曜日も稼働していること、土曜日も時間延長されたこと。うちの近所の農家がアパート建てられたのは、借地・借家法の改正のおかげか。
 しかしそれにしてもこと細かくいろいろ勧告されているもんですね。ここまでなんでいわれなきゃならないの。本来これは日本の政治家が提案すべきものじゃないの。何故ここまでアメリカは日本のこと分かっているの。
 日本の政治家は分かっていても、提案できない。もう利害があちこちにありがんじがらめだからだ。中核派と同じ超保守反動派になってしまっている社会党なんかには、こんな分析提案できるわけありません。
 暗澹たる思いです。それとも日本の政治家は、またペリー黒船や、戦後の諸改革と同じように、外圧を利用しようとしているのでしょうか。でももうそれはないんじゃないの。もう自らやるべきですよ。
 逆に日本はアメリカのことここまで分析できているの。なんだか、やっぱり日本はアメリカの前ではまだ幼児なのでしょうか。
 日本は経済大国だという。アメリカは落ち目だ。宮沢にすりよるブッシュを見ていると、たとえ宮沢が嫌いでも、日本は大国になったのかと錯覚してしまいます。だけどそれは全くの錯覚ですよ。日本は自分たちでやるべきことを、アメリカにいわれなければできないのです。
 考えてみれば、実に頭にきます。アメリカみたいな赤字大国に、なんでここまでいわれなきゃならないの。アメリカは自分のこともうまくやれないのに、こうまで口だすな、日本だって独立国だぞ。………でもでもなにをいってもむなしい思いになります。アメリカの指摘勧告はあまりに的確だからなのです。 江藤淳が、戦後の検閲の問題をこと細かくやったり、「NOといえる日本」なんていう風潮がすこしもてはやされたりして、………でもそんなのみんなだめですね。ここまで分析提案してみてください。
 私は、谷中の「双葉」という飲み屋にいくとき、表通りではなく、裏から入る細い秘密の道があるのですが、そこを通るのが好きです。そこから入ると誰でも少し感激します。そんな道知っているのが得意なんですね。でも思ったんです。こんな秘密の細い道もアメリカには分析されつくしているのかな。そしてあれはなくすべきであるとか、いや日本人の飲みコミュニケーションには大事な道だから存続すべきとか、もう論議されつくされているかななんて。それに比べて、俺はニューヨークの飲み屋なんか、一軒もしらない。(1992.07.31)