11102002 ふたり目のフランスの酔っぱらいは、「ダルタニアン物語」の三銃士の一番の兄貴分のアトスです。
 日本では一般に「三銃士」の話で知られる「ダルタニアン物語」ですが、主人公ダルタニアンとアトス、ポルトス、アラミスの四銃士が大活躍する小説です。小説とはいっても、実に長大なる物語で、3つの物語からなっており、一番最初がいわゆる「三銃士」の物語です。
 私には主人公のダルタニアンというのは、どうにも融通のきかない頑固な田舎親父というような印象があります。このダルタニアンは実在の人物であり、現実の彼もあまり愉しい人物ではなかったようです。それに対して三銃士の三人は、まったくの架空の人物であり、アレキサンドル・デュマの筆はこの3人を描くとき実に愉しく軽快になるといっていいでしょう。

 ところで「三銃士」の最初の話ですが、ダルタニアンと三銃士はルイ13世の奥さんの浮気のあとしまつのためにロンドンに向うわけです。それを邪魔しようというのが宰相リシュリユー。全部で従者(この従者たちのひとりひとりがまた面白い)ふくめて8人でロンドンに向います。それが途中で、みんな銃弾に倒れたりして、ロンドンまでたどりついて、役目を果たすのは、ダルタニアン主従だけです。そして彼はパリに帰ってきます。
 さてそれで、あとの三銃士の計6人はどうしたのかとダルタニアンは捜しにいくわけですが、3組ともいろいろなことになっています。そしてその中でアトス主従が一番愉しいのです。
 あのときからもう2週間たつているのに、アトス主従2人はある宿屋の地下の酒蔵にバリケードを築いて立て篭っています。つまりダルタニアン主従が大活躍している間、アトスたちはずっと酒を飲んでいるのです。
 ダルタニアンはまさかと思いながら、酒を飲んでやたら銃をぶっぱなす悪者二人をなんとかしてくれと宿屋の主人にたのまれます。宿屋の主人も悪い奴だったのですが、とにかくこのままいくと酒蔵の酒がすべて飲まれてしまいそうなのです。
 ダルタニアンが行くと、やつとアトスがバリケードを破って出てきます。その出方がまた凄まじい。中から銃を撃って扉を破って出てきた男の顔は、もうこれ以上はあるだろうかというような飲みすぎの素晴らしい表情をしています。そしてダルタニアンに、「こんないい眼に会えるのなら」何度やってもいいというようなことをいい、またしても、ダルタニアンたちと乾杯しはじめるのです。
 映画でもなんでも、あのダルタニアンのロンドンでの活躍、そしてパリへの凱旋を見るときには、是非ともその間、ひたすら酒を飲み続けているアトスの存在を思い浮かべてほしいと思います。
  デュマはおそらくアトスの方がずっと好きだったのでしょうね。
 (なお、これは記憶だけで書いているので、少し違うところがあるかもしれません)