「戦争と平和」というふうに対照的に言いますが、それでは平和というのは一体何なんだということになります。平和というのは、一人一人の考え方であり得るわけです。ある人は自分のの一家が無事平穏に暮らせて家族内の争いもなく無事平穏にきょうも明日もやっていけるということこそが平和なんだと考えるでしょうし、ある人は自衛隊みたいなものはみんななくしちゃえば平和ということになるというふうにお考えになるかもしれない。夫婦の仲が悪いから、夫婦の仲をうまく調節することができれば自分にとって平和だよという人もおられるでしょうし、子供でいえば自分が望みの学校から望みの学校へと進学することができて勉強できれば、あるいは遊ぶことができれば、それは自分にとって平和だというふうに言うかもしれません。
言い換えれば、平和というのは一人一人ちがっていることができるし、またちがっていいというふうに思います。
つまり、一人一人ちがう状態で自分が「平和」だというふうに考えられる状態をを自分がつくれれば、それは平和ということを意味するんだというふうに、僕は思います。
それ以外に平和というのはないのですよ。
（1995.3.10東京都立科学工業高校講堂における「戦後五十周年」記念講演。「戦争と平和」2004.8.15文芸社に収録された）
私はこの講演を直接聞いていました。昭和２０年３月１０日の東京大空襲から５０年たった日の吉本さんの講演でした。そして今は、イラク・アフガンで戦争が続き、朝鮮半島での戦争も起きるのかもしれないという時期です。このときに、この吉本さんの講演を読み返すことはとても意義があります。吉本さんの言われるひとことひとことに頷いています。
（この講演を聞いたときの私の記録が以下です）
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