12030815 大口昭彦弁護士より、12・16抗議集会における経過報告が届きましたので以下に掲載します。ぜひ、この文書を転載もしくは、ここにリンクください。(98/12/22 11:35:22)

               経 過 報 告 要 旨
                                 港合同法律事務所

一 一二月六日(日)、当事務所の安田好弘弁護士(第二東京弁護士会)が、警視庁捜査二課により、「顧問会社の賃料隠しを発案・指示した」として「強制執行妨害」被疑事件で逮捕されるという事態が発生しました。

二 安田弁護士は、同日午前中からオウム麻原被告の弁護団会議に出席していましたが、会議終了後の午後三時半ころ、打ち合わせ先の事務所を出たところを警視庁捜査二課の捜査員に任意同行名下に身柄を拘束され、同日午後四時半ころ右被疑事件で逮捕されました。
 同日五時すぎ、警視庁捜査二課の警察官二〇数名は、同日午後五時〇六分ころから同日午後一〇時四〇分ころまで、休日夜間であるにもかかわらず五時間半にわたり、当法律事務所において、安田弁護士の使用関係部分の捜索を行い、会計帳簿等の差押を実施しました。
 捜索に当たった捜査員は、立会人弁護士の強い抗議にもかかわらず、明らかに被疑事件の不動産会社とは無関係の同弁護士の事件ファイルを片っ端から探索し、同弁護士が手がけているオウム事件等の記録まで隅から隅まで調べていったのです。こうして、結局、被疑事件とは一見して関連性が認められない事務所の労働保険契約綴り・給与明細書や家賃の請求書、名刺綴り等百数十点を押収していきました。(この違法不当な捜索差押に対しては現在、準抗告申立中です。)
 勾留決定前の、弁護団を中心とした弁護士による事前の検察官折衝、裁判所令状部折衝にもかかわらず、安田弁護士に対しては、一二月八日に一〇日間の勾留決定(付 接見禁止)が出され、現在警視庁本部代用監獄に拘禁継続中であります(その後、接見禁止一部解除の申立により、弁護士二名については解除されるも、事務員については不当にも、なお接見禁止が継続。この間検察官は、全く取調をなそうとはしていません。この事実にも、本件逮捕勾留に根拠の存在しないことが露呈しています。)

三 ところで、逮捕の理由とされた被疑事実については、すでに弁護団が結成されており、別途弁護団からのアピールも届けられておりますので、具体的内容の詳細の説明については、弁護団に委ねたいと考えますが、安田弁護士が、報道で云々されているような行為をしている事実は全くありません。
 本件逮捕勾留は、違法不当であり、到底許されない国家権力の暴挙であります。
 当方ではさしあたり、逮捕勾留の必要性の欠落にかかわるものとして、以下の点を指摘しておきたいと思います。
 まず第一に、被疑事実の不存在であります。
 被疑事実とされるところは、五年前である一九九三年(本件の告発者である株式会社住宅金融債権管理機構の設立される、はるか以前であります。)安田弁護士が、顧問会社の賃料債権の差押を免れるための行為を発案指示したというものですが、これは全くの無根であり、そのような事実は一切ありません。
  第二に、強制執行妨害罪(本罪には、選択刑として罰金も規定されています。)での逮捕そのものが極めて稀とされており、(株)住管関連でも二件立件されているとのことですが、いずれも在宅起訴とされており、弁護士の逮捕などというのは、前代未聞のことであります。
 そもそも(株)住管の発足するはるか以前である五年前(公訴時効の問題もあります)の事案について、現在このような形で強制捜査がなされることの必要性妥当性も、極めて疑わしいところであります。
 第三に、安田弁護士は、これまで警視庁や検察庁からの右事件に関する任意の事情聴取に積極的に応じており、また今後も応ずる旨の意思を明確に表示していたもので、逮捕の必要性はこの点からも全く欠落しています。
 第四に、被疑事件を起こしたとされる不動産会社は、(株)住宅債権管理機構に対し、最近まで安田弁護士を介して債務弁済に向けて交渉中でありました。
 実際に、今年の一〇月一五日には金四九一〇万円を支払い、更になお、会社所有のビルを売却して、実に三〇億円を準備し、その証拠書類を提出し銀行名も明らかにし、提出用に残高証明書まで提出して、(株)住管に提出する準備を進めていました。
 ところが、(株)住管は、会社及び安田弁護士が誠実に対応しているにもかかわらず、一〇月一六日、突然会社代表者らを強制執行妨害で告発し、右会社役員らが逮捕されるという経緯を辿ったものであります。(なお、会社関係者についての捜査は終結しており、その意味でも安田弁護士の逮捕には必要性が乏しいというべきであります。)
 そもそも債権回収が本来の目的である事案において、債務者が相当額の金額の提供を申し出ているのにもかかわらず、まず刑事手続を先行させるとし、それを理由にして民事上のの和解を拒否するなどという、転倒した対応がありうるでしょうか。
 また、安田弁護士の逮捕は、(株)住管の告発前に強行されており、この点でも全く異例の警察による突出が見られるのであります。このような突出に対して易々として従って行く(株)住管のあり方につき、大きな疑問を感じます。刑事先行との路線は、このような警察との一定の関係の然らしむるところなのでしょうか。

四 右のような経過に鑑み、本件は逮捕の要件が全くない違法不当逮捕・勾留であると考えます。
 それでは、なぜそのような不当逮捕が敢行されたのか。当事務所は、次のように考えます。

�A 第一は、「麻原弁護団」が指摘している弁護団攻撃であります。安田弁護士を主任弁護人とする同被告の弁護活動が、憲法、刑事訴訟法の理念に忠実かつ原則的であるがために、裁判の質よりも、むしろ早期結審=重刑を期待するマスコミを中心とした「世論」及び国家権力の意のままに進行しないことへの焦りであります。逮捕直前に麻原被告の一〇〇回公判が云々され、(国選)弁護活動の意義を否定するかのような内容を含む報道が、ことさらになされた事実を想起していただきたいと思います。
�A 第二は、やはり、安田弁護士が粉骨砕身して取り組んできた死刑廃止運動に対する掣肘であります。同弁護士が死刑廃止運動の実践と行動の要であることは誰しも認めるところであり、近時の廃止運動の一定の前進(まだまだ不十分ではありますが、死刑事実の公表等、一定の成果が見られてきています。)を、苦々しく思ってきていたであろう法務当局にとっても、安田弁護士の逮捕は、大きな意味を有するものであります。
�B 第三は、より構造的に、この間の弁護士(会)への権力の攻撃という流れの中で事態を捉える必要があると思います。人権活動よりもビジネスローヤーへの弁護士像の変質、かかるものとして法曹の大量育成をはかろうというのがこの間の政府自民党・財界の一貫した姿勢です。(株)住管の経営者には弁護士が就任し、また大勢の弁護士が派遣されていますが、その業務に、先述したとおりの権力性が顕著となってきていることに、個別事件としての問題性以上のものが危惧される次第です。強制捜査開始と共に、安田弁護士に対して加えられた「悪徳弁護士」との、実像とは全く正反対の人格攻撃(遺憾ながら、(株)住管の社長である中坊公平弁護士までもが、人権活動で奮闘している現場弁護士に対する攻撃に加わったことは、まさに象徴的と言うべきであります)
 一連の有事立法攻撃が強まる中で、こうした動きは益々加速されるでしょう。安田弁護士逮捕問題を論じた朝日新聞の社説は弁護士活動を自己規制せよと問題の本質をすり替えつつ、しかし一面、今回の問題の基本性格を端的に露呈しているところであります。
 少数者の権利や人権ではなく、まして権力と闘うのではなく、擬制的な「国民的理解」や多数者の論理に、弁護士まで屈服させようとする攻撃として今回の安田弁護士逮捕問題はあると考えます。

五 当事務所は、皆様の御支援と御指導を仰ぎつつ、安田弁護士の一日も早い釈放を目指して、奮闘します。どうかよろしくお願いいたします。
                 一九九八年一二月一六日