1304290713042908  こうして今より数年前のことが語られます。だからけんはこの絵のような小さな娘なのです。そしてこのけんを左手で抱いているのが山本長五郎=清水次郎長なのです。

 ハシケが船着場に着くまでぴょんぴょん跳びはね、おりたつやいなや勢いあまって体当たりしてきた娘を、次郎長は軽々と抱き上げた。

 そのときの絵がここの挿絵なのです。

 明朗な声がして、風呂敷包みをくくりつけた物干し竿をかついだ若者が、船着場におりたった。いでたちは当時まだめずらしい洋装だ。詰襟の白シャツに三ツ揃いのスーツ、革靴に中折帽。両端がぴんとあがった口髭は威風堂々としているが、色つやのよい肌と澄んだ目は若々しい。13042612

 この若者がけんが好きになってしまう先生なのです。こうして言葉・文字だけでこの先生を説明されると、もう読んでいる私もけんの気持がよく分かるような気になります。「ああ、好きになったんだなあ」と私も思うのです。
 みなこのけんと次郎長を親子と思うようです。そして次郎長もそれは嬉しいのです。

 <そうか、似とるか。海の親より育ての親。ハハハハハ………>
 次郎長はきげんのよい笑い声をあげた。

 もう私は孫のポニョとじゅにを思い出していました。ああ、今日ポニョに会いにいきましょう。
 このときの先生がお医者さまなのです。