11011510書 名 プロレス名勝負の読み方
著 者 ミスターX
発行所 ポケットブック社
1993年4月30日 初版第1刷発行

 これはプロレスへの一番の入門書といえるかと思います。プロレスにおける名勝負とは何か。これにはたくさんの名勝負とその意味が書かれています。しかもこうしたプロレス関係の有名本とちがって、話が力道山時代からはいるのではなく、かなり近年のプロレスが語られているのが特徴です。

  名勝負のほんとうの意味を理解している人は意外にすくないよ
  うだ。
  たとえば、以前、全日本プロレスのマットで行われたジャンボ
  鶴田と長州力の一戦である。この試合は、新日本の長州力がジャ
  パン・プロレスを設立し、全日本に乗り込んだときの一戦である。
  試合は六十分一本勝負で行われ、両者は熱戦の末、六十分時間切
  れ引き分けに終った。
  プロレスファンの中には、この結果だけ見て、この一戦を鶴田
  と長州の決着はつかなかった熱闘とだけ考えている人もいるだろ
  う。しかしこの試合には、名勝負と呼ぶにふさわしいさまざまな
  意味がふくまれている。たとえば、この大一番は事実上、長州の
  完敗だった。六十分時間切れ引き分けはクラシックなレスリング
  を信条とする全日本の“お家芸”であり、長州は完全に六十分ほ
  んろうされた。長州は、これで全日本のスタイルの頑固さに気づ
  いて新日本にUターン、いまの地位を築いた。
  (「ミスターXからの再挑戦状………まえがきにかえて」)

 これはあの試合を見て、私もこのとおりに感じたものです。試合直後長州は鶴田に手をさしのべ握手しました。そして「鶴田って、なんであんなに余裕があるんだ」というコメントをしていました。あのあと天龍がこの長州が鶴田と握手したことには激怒したようです。鶴田に合わせたら駄目なんです。なんでこれで「俺たちの時代だ」なんて宣言できるのだと、天龍は怒ったのです。

 この本は全編どこでも「そうだ、その通りなんだよ」と唸ってしまうところばかりです。そうです、プロレスってこのように見られるからこそ面白いのです。興味もてるタイトルだけ上げてみましょうか。

  なぜ、ハンセンは馬場戦以降、全日本でトップをはり続けるこ
  とができたのか
  なぜ、タイガーマスク対キッドは、新日本を地獄に落とす原因
  になったのか
  なぜ、天龍は鶴田に異常なまでのライバル心を燃やしたのか
  なぜ、藤波は猪木に勝ち新日本を変えることができなかったの
  か
  なぜ、前田には対ハン戦以外に名勝負がないのか
  なぜ、高田に無残なKO負けを喫した北尾は、その後悪役でな
  くなったのか


等々です。これらの問にどのくらい答えられるでしょうか。私はこんな話を飲み屋でできるのならずっとやっていたいし、いくらでも話していけるように思います。 

spt023 ただ現在とこれからのプロレスがこうした名勝負を出し続けることができるのかということになると、少々不安になります。また今プロレスファンの若い人を見ていると、「俺とは同じような視点では見ていないな」と感じてしまうことが多いのです。それはそれで致し方ないのですが、少々寂しくもなってきます。
 それとプロレスマスコミにおけるつまらない視線を放つ人の存在発言も問題だなと思います。例えばターザン山本の数々の発言です。私はとても不愉快になります。あんな批評から、若いプロレスファンは学んでほしくないなあ。
 またこの著者には現在の(勿論過去のもいいのですが)女子プロレスの数々の名勝負も論評してほしいと思います。現在の女子プロレス4団体(+いくつか)の試合内容はかってないほどの水準にあります。今は男性のプロレスファンも多く会場につめかけるほどの内容の深さを保っています。
 しかし、それにしてもいまは団体数が多いし、試合も必然的に多いから、もう全てに注目しているのは難しくなりましたね。これはいいことなのかな。どうなのだろうか。
 それにしてもプロレスの好きな人は勿論のこと、プロレスが何故いいのか判らない方も是非読んでいただきたい本だと思いました。(1993.08.01)