書 名 イスラームの世界
著 者 片倉もとこ
発行所 岩波新書

11060910 近年日本中にイスラムの人が増えてきたと思います。銭湯の湯船に下着のまま入っちゃったとか、チキンのかんずめなのに外側に可愛い豚の絵が付いていたら、これは豚肉ではないかといわれるとか、そのたぐいの話をよく聞きます。
 世界でみても他の宗教に比べて、イスラム教を信仰する人の数は拡大しています。いまやイスラム教はいわゆるイスラム圏の宗教ではない。ヨーロッパ、アメリカ、ロシア、アジア含めて広がっています。しかもどこでも都市で広まっているのが特徴であると思います。
 ある方の紹介でこの本を知りました。イスラムのことはある程度は知っていると思っていましたが、それが単なる思い込みだったのを知りました。

  イスラーム暦は、わたしたちの使っている西暦よりも一年が一一
 日ほど短いため、巡礼月は、毎年、一一ずつ、ずれていく。「巡
 礼月がもう少し涼しい季節にあたるようになったら巡礼しよう」
 などというムスリムもいます。しかし、「いや、こういう苦しい
 ときにおこなう巡礼こそアッラー(アラビア語で神の意味)の祝
 福が多いのだ」と、わざわざ酷暑の時期にでかける人も多い。近
 年は、かつてとは違い若い人たちの巡礼も、急速に増えている。

 こんなこと知りませんでしたね。日本の旧暦だってこんなことないですからね。しかし彼等にはあたりまえなのでしょうから、やはり文化、習俗なんていうのはよく相手を理解するようにしないと駄目なんでしょうね。

  近年、多くの女たちがまたベールをかぶり出した。逆説的にな
 るが、ベールをかぶるということにより女性の社会進出が促進さ
 れるという面もある。ムハッジャバ(かぶりもの、ベールをした
 女の意)であれば、男ばかりのところへ入りこんでもいいとされ
 るからである。女たちは、これをかぶることにより「見られる女」
 から「見る女」に変身する。これにより容姿だけで判断されるこ
 とをきっぱり拒否して、中身で勝負しましょうということになる。

 あの不可解なベール姿も、こう書かれるとふーんそうなのかとも思います。ただここらへんはもっと詳しく説明があればと思いました。
 私はイスラム教の特徴はまだ宗教改革がないことだと思います。ひとつにはそれはまたイスラム社会に資本主義が発達しなかったことでもあると思うのです。マックス・ウェーバーが「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」で述べたような事態はイスラムでは起きなかった。同じく「儒教とプロテスタンティズム」、「儒教と道教」にみられるような儒教の役割もイスラム教は果たすことがなかった。それが、私たち現代日本でどうしても理解しがたいイスラムの姿にもなっていると私には思えるので。
 この本はかなり前に読み終ったのですが、何を書けばいいのだろうかと悩みました。やはり日本に入ってくるさまざまな人々の中のイスラムの人々の習慣、民俗を理解しようとしても、どうしてもこの本だけでは頭に入ってこないのです。再度マックス・ウェーバーを少し眺めてみることにより、その糸口が見えてきた気がします。どうも私は原理論的に押えていかないと駄目なんですね。ベール、断食、メッカへの巡礼などと読んでいっても、もうひとつ分かりにくかったのです。 
 中国との間に魯迅がいるような感じがあれば、もっとよく分かるのだろうななどと思いました。(1992.10.24)