07110102人間ぎらい

 これを読み始めたのが、地下鉄半蔵門線の表参道あたりでした。「『人間ぎらい』ってモリエールか、どんな話だっけ?」なんて思い出しましたが、よく思い出せない。「モリエールでは『スカパンの悪だくみ』が面白いんだよな。ええと、あの有名なセリフは…」と思い出せません。「『何で軍艦なんぞに乗り込んだ?』だっけかな?」と思い出せません。
 でもこの話は、大阪新開地のラブホテルに務める女性の話です。もう彼女は子どもがいるが、亭主とは別れてしまっています。その子どもと会うことが、実に想像する親子の情の風景はありません。大阪弁に、「じゅんさいな子や」という言い方があるそうです。

 じゅんさい、というのは大阪弁で、ちゃらんぽらんというか、のらりくらりというか、いいかげんというか、………………………………

 うん、少し判るような気がします。
 そして彼女は少し知り合った少年が鑑別所に勾留されたので、面会に行きます。でも再び面会に行くと、その少年はすでに出所している。なんだか私も悲しい。少し淋しいです。


うたかた

 地下鉄の中で、その前のが、モリエールの「人間嫌い」と同じ題名なので、「今度は『うたかた』か、森鴎外だなあ、あ、鴎外は『うたかたの記』か」なんて思いながら、読んでいきました。大変に面白い男女の出会いと別れを読んでいました。よくあるようで、でもやっぱりこういう出逢いも別れもなかなかあることではないのですね。
 ただ、こんな出逢いも別れも、私には哀しすぎます。


カクテルのチェリーの味は

 この有川は59歳、今の私と同じ歳です。58歳と59歳はかなり違う存在になるようです。ただし、私には皆目判りません。私ももう違う存在になっていかないといけないのかなあ、と必死に考えたものです。


金魚のうろこ

 こんな小説の内容をよく田辺聖子が書けるんだなあと思いました。そしてだから、彼女は芥川賞作家なんだとつまらないことを考えました。


 最後の「あとがき」で、田辺聖子はこう言っています。

 この短編集がそれぞれ、おいしくて綺麗なお菓子のように、読者のみなさまをお喜ばせするものであることを願いつつ。……

 また次の巻も愉しみです。

 周の雑読備忘録「『田辺聖子珠玉短編集1』」 へ

続きを読む