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Tag:催眠術

11060902 宮部みゆき『魔術はささやく』他1篇 へ 竜崎さんから次のコメントがありました。

1. Posted by 竜崎   2011年06月06日 17:10
初めまして!
竜崎と申します。

「あ、なんだ、魔術ではなく、催眠術か」とも思わせますが、

とてもおもしろそうな内容ですね!

 私が思うのにも、決して催眠術ではいわゆるものすごいことはできないのだと思っています。ああ、私なんか催眠術でもなんでもよくきいてしまうと思われますよ。
 なんとなく、私は毎日すぐに、「ゴォーッ」と寝てしまうので、なんだか「繊細」なんてことを知らない、「眠れない」なんていうことを知らない人間だと思われています。事実その通りですが。

 ミステリー界での人気作家である宮部みゆきの初期の作品です。
 この作家は、1960年生まれといいますから、かなり若い作家ですね。この著者が書いた最初の長編が「パーフェクト・ブルー」で、次に書いた長編が「魔術はささやく」で、この作品で新潮社の第2回日本推理サスペンス大賞を受賞します。

書 名 魔術はささやく
著 者 宮部みゆき
発行所 新潮文庫

11052512 事件は3人の若い女性が次々に不可解な自殺をしてしまいます。だがこの3人の死が関連があるらしいというのは読んでいる私たちしか判りません。この自殺はかなりな謎を秘めているのです。どうして自殺してしまったのか見当がつかないのです。4人目の女性はおびえてしまいます。いったいこの自殺をさせたものは何なのか。どうにかその背後にいるらしい人物が浮んできます。しかし、どうやって自殺させることができるのだろう。3人目の自殺した女性を轢いてしまった運転手の甥が次第にこの謎に迫っていきます。
 この甥の守にも、さまざまな世界を抱えています。不幸な過去、そしてそれを問題にする周りの眼である、彼の通う高校。そして割りと愉しく働いているバイト先。学校にも、バイト先にもいやな奴もいれば、いい人たちもいます。とくにバイト先での同僚たちはどうみても珠玉のような人が何人もいます。この人たちひとりひとりの描き方がとても気持がいいのです。この著者はよくこのように人をみているのだなと思いますし、また著者の生きて働いてきた空間での人間の付き合い方がまともだったのかもしれません。このような細部にわたる登場人物の描写まで丁寧なのは、あまり他にはないように思います。作家というのはどうにも、職場ではうまくいかなかったような人が多いように思いますので、こんなに職場の人間の描き方がいいと、これはこの著者の人間としての資質がかなり優れているのだなと思ってしまいました。
 さてこの物語は、もっと社会的な問題なども絡ませながら、次第に事件を解明していきます。この3人の女性、そしてまた男性が殺されますが、それらを演出しているのは「魔術」としてしか思えないのです。「あ、なんだ、魔術ではなく、催眠術か」とも思わせますが、本当はそれもこの事件の解答ではないのです。
 実に読んでみて満たされた思いがあります。これを初めて読んだときに「これほどの作家がミステリーの世界にいるのだな」と思ったものでした。

書 名 パーフェクト・ブルー
著 者 宮部みゆき
発行所 創元推理文庫

「魔術はささやく」で感激してしまったので、すぐ引続き読んでみました。これは著者最初の長編小説です。ただ、この作品から「魔術はささやく」をみると、随分と僅かな間に著者が成長してしまったのだなという感じを持ちました。ということは、この作品はやはり少し幼い感じが残ります。
 高校野球のスーパースターが、全身にガソリンをかけられ焼殺されます。蓮見探偵事務所の加代子調査員は、この殺された高校生の弟と一緒に、この事件の第一発見者になってしまいます。そしてこの事件をさぐっていきます。この背景には何か社会的な問題が隠されていそうです。どうしても私にはこうして社会的な背景を出してくるのが安易にも思えました。これだとどこにもあるような話だなというところです。
 そうですね、あと多分この作品は著者には思い出深い作品となるわけでしょうから、あとすこし手を加えて欲しい気がします。最後事件が解決したあと、木原という人物がある女性に、「……私には、あなたと話したいことがたくさんあるんです」というところがある。このあとを書いて欲しいのです。これっきりになってしまっている。中年の窓際サラリーマンである木原が、途中からどうしてあのような変幻をしたのか、そうしたどこにもいる中年サラリーマンの姿を彼女にいうはずの言葉の中に、私は見てみたいのです。しかし、まだ若い著者にはその言葉の内容は探りようがないのでしょうか。(1998.11.01)

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