11010110書名  一九九三年大恐慌が来る
著者  宇野正美
発行所 学習研究社
定価  1,400円

 本のカバーにこうあります。

 経済大国、日本の株が下落し、
 借金大国アメリカの株が高騰を続ける。
 この不思議は何なのか。次に起こる衝撃は…………。
 大恐慌が演出されているといっても、まちがいないだろう。
 いわゆる権威ある人々は、自らの沽券にかかわるゆえに、
 「大恐慌が始まっている」とは言わない。

 いやはやこれが本当なら大変ですね。恐慌で一番困るのは私たち庶民ですから、これはちょっとどうなのだろうかと思いました。そしてこの恐慌が「演出されている」とはいったいどういうことでしょうか。
 まずこの本が出版されたのは、1992年6月です。著者は92年4月1日に公定歩合が4度目の引下げが行われたが、これは日本経済を立て直す上では、過去3回の公定歩合引下げ同様何の効果もないといっています。従来考えられた、公定歩合の引下げとか公共投資の積極策などは今回何の役にもたたない、役にたたないどころか、いっそう景気後退の局面に追いやるのは間違いないといいます。説明としては、小さな「バブル」ができては潰れ、できては潰れするからとのことです。
 なんにしても、事実として景気は後退を続けました。そして93年後半から94年初頭にかけて日米欧同時不況が起きるだろうとと著者はいうのです。それで問題はこうしたことが「演出されている」とはいかなることでしょうか。
 この不況の背景にあるのは、1985年のプラザ合意における「円高・ドル安」合意であるといい、このプラザ合意を演出したのは、国際主義者集団であるといいます。この集団がさらに日米欧同時不況を演出しているというのです。突如としてこんな集団名が出てきて、驚くわけですが、そもそもこの著書はここに焦点をあてて話が展開されています。

  国際主義者集団は、世界を一つにまとめようとしている。「世界は
 一つ」といえば、これまた聞こえがよい。しかし彼らは、世界を一つ
 にまとめたのち、一部の者が独裁的な力で世界を支配するという
 考え方である。    (「バブル経済はなぜ日本で作られたか」)

 この国際主義者集団が日本のバブル経済を作ってきたが、それを崩壊させたのは、ユダヤ系投資銀行であるという。国際主義者集団とシオニストユダヤは共同で世界支配を目指してきたが、「両雄並び立たず」で、この権力闘争の表れが、バブル崩壊であるといいます(もうホントかいな)。
 この両者の闘いが全世界で繰り広げられている、アメリカの大統領選もそうなのです。うん、すこしうなずけますね。このあいだの日米会談みていると、ユダヤ派クリントン対国際主義者集団宮沢という構図なんでしょうか。ブッシュも国際主義者集団だと、著者はいいます。

  では、国際主義者集団がめざすものは何か。端的にいえば、「地球
 全体主義」「世界共産化」である。よく耳にする「世界は一つ」とい
 うスローガンは、国際化と同じ意味である。
           (「アメリカ・ファースト」の意味は何か?)

 国際主義者集団とは、アメリカでいえばロックフェラーであり、戦前の日本でいえば近衛文麿です。おどろくべきことに、この集団がロシア革命を演出しました。ロックフェラーがレーニンやトロツキーに革命の資金を与えたといいます。
 この国際主義者集団とは、源泉が実はイスラエル人が昔バビロン捕囚のときに、バビロンの宗教の影響を受けた「カバラ」宗教徒だといいます(古い話だ)。

  イスラエル人は、バビロン捕囚を解かれて元の地に帰還するとき、
 「ユダヤ人」と呼ばれるようになった。彼らはユダヤ人こそが特別な
 存在であり、自分たち以外の人間は支配されるべき存在であるという
 解釈をするようになる。  (「創造主」を信じる者、信じない者)

 実にユダヤ人でもないのに、この「カバラ」宗教を受け入れたのがこの国際主義者集団だというのです。
 もうしかし、この集団の説明はどうでもいいでしょう。著者はこの集団とシオニストユダヤが共同で世界を支配しようとし、またいま対立しているというところをよく見てほしいという主張を繰返ししています。湾岸戦争のあとは、ブッシュはイスラエルの崩壊を狙いました。だからユダヤ系はクリントンを支持したのです(といいたいんだろうな)。
 この集団の意図していることをよく見ておかないと、怖ろしいことになる、事実世界支配のために世界大恐慌を起こそうとしているのだということでしょう。しかも、

  現在の日本の指導者は、そのほとんどが国際主義者集団に名を連ね
 ている。それゆえ、彼らを頼りにすることはできない。
                        (「おわりに」)

ということですが、まさしくここで、私はまたいうところです。まったくほんまかいな。そして、はっきりいえば、日本だろうが世界だろうが、政治的な指導者とやらが、何に属していようと、それはまったく今後の世界の進むべきこととは関係ありません。そのことを私は声を大にしていいたいと思います。
 ただ、この本で注目したのは、次のようなことでした。

  イスラエルはいま、二重構造になっていることが明確にわかる。政
 治家、企業化、軍の司令官たち、弁護士などのいわゆる高級職業につ
 いているのは、ほとんどがアシュケナジー・ユダヤ人である。それに
 対して、下層階級に属する貧しいユダヤ人がいる。これが実は、アブ
 ラハム、イサク、ヤコブの子孫である本物のユダヤ人である。
             (「宿命の対決───イスラエル対アラブ」)

この本物のユダヤ人をスファラディ・ユダヤ人といいます。
 ナチスが虐殺しようとしたのは、ユダヤ人がアーリア人(インド=ヨーロッパ語族)ではない、セム人だったからです。このセム人であるのは旧約聖書のとおり、スファラディ・ユダヤ人であるはずです。ではこの現在のアシュケナジー・ユダヤ人とは何か。結局、いわゆる西欧社会でいうユダヤ人とは、ほとんどがアシュケナジー・ユダヤ人であったと思います。マルクス、フロイト、ハイネ、トロツキー、アインシュタイン、等々みなこの非セム系ユダヤ人であると思います。

  アシュケナジー・ユダヤ人とは何者なのか。もともとは中央アジア
 にいたカザール人である。カザール人はいまから約一千五百年ほど前、
 現CIS(独立国家共同体)のカザフ共和国のあたりに王国をつくっ
 ていた。のちに二つの勢力がこの王国に圧力を加えた。そのひとつは
 ビザンチンのキリスト教であり、もうひとつはイスラムであった。
  カザール王国の指導者たちはどちらかに加担するのではなく、独立
 の道を歩めないかと思案した。そこでカザール人は、上は王から下は
 奴隷にいたるまで、国をあげてユダヤ教に改宗したのである。改宗し
 たばかりか、彼らは自らを「ユダヤ人」と名乗るようになった。した
 がって彼らはユダヤ人ではなく、ユダヤ教徒カザール人と呼ぶべきで
 ある。しかし彼らは、その事実をひた隠しにしている。
                (「湾岸戦争は仕組まれていた」)

 このことは、アーサー・ケストラー「第十三部族」(邦訳「ユダヤ人とは誰か」三交社刊)で述べられているとのことです。
 実は私は非セム系ユダヤ人のことを第3次中東戦争のときから調べようとして、文献を探してきました。またこの本も読んでいきたいと思っています。
 この非セム系ユダヤ人のことですが、これはかなり大事な事実だと思うのです。民族という概念はまさしく近代的なもののはずなのに、何故かかなり昔からなにか根拠のあるようなことをいいがちです。パレスチナの問題を説明するのに、「彼らはもう何千年と民族、宗教の違いで争ってきた」などと、したり顔で解説する馬鹿がいるのです。すなわち、日本人には到底理解できない次元なように思わせたいのでしょう。そんなのは全くの嘘です。ユダヤとアラブの争いが聖書の時代に起源があるわけではなく、当のシオニストユダヤ人は聖書のセム人ではなく起源が中央アジアにあるとしたら、問題はもっとすっきりします。パレスチナ問題を見るのなら、まだイギリスのやったバルフォア宣言をよく検討したほうが事実に突き当たれるはずです。
 ただすっきりはしても、これが現実にはまた難しいのは、イスラエルにおいてむしろ狂信的なシオニストになるのは、下層のセム系ユダヤ人スファラディ・ユダヤ人なのです。
 上のことを除いて、あとは私はこの本はただ呆れているばかりだったのですが、何とか評価もしてみようかなとも考えてみました。「国際主義者集団」というのは、結局「支配の学」をもってやろうとしている連中と考えると、たしかに日本の多くの、体制側、反体制側問わず大部分だなと思います。世界中でもそうなのでしょう。これはたしかに怖ろしいことです。しかし、私たち以上に彼らは、もっと苛立っているはずです。だって「支配の学」、ケインズだろうがマルクスだろうが、それらと自らの経験をもってきても、少しもこの世界を回せなくなっているからです。それがなんだかわからない。宮沢が「統計数字がおかしい」などと怒ったのがこれにあたります。ざまあみろ、もう君たちの動かせる世界じゃないんですよ。
 結局この宇野正美さんは、そこらのことがまるで分かっていない。逆に嫌な雰囲気のものに至ってしまっている感じです。

  国際主義者集団が仕組む世界大恐慌、世界共産化にしても、未来永
 劫にわたって続くものではない。かってのロシア革命も、ついにソ連
 崩壊となって終った。同じように世界共産体制も終りを遂げるときが
 やってくる。                 (「おわりに」)

 だから、宇野さん、もっと当りまえにいえばいいじゃない。「米の自由化はいけない、彼らの陰謀だ」とかね。(1993.04.26)