11022208ミスターX「プロレス名勝負の読み方」
またこの著者には現在の(勿論過去のもいいのですが)女子プロレスの数々の名勝負も論評してほしいと思います。現在の女子プロレス4団体(+いくつか)の試合内容はかってないほどの水準にあります。今は男性のプロレスファンも多く会場につめかけるほどの内容の深さを保っています。

 なんてことを書いていたら、本当に書いてくれました。ただし、前に書いてくれたのはミスターXで、今回はミスターYということになっています。

書  名 女子プロレスの読み方
著  者 ミスターY
発行所 ポケットブック社

 現在は女子プロレスがたいへんに面白いのです。男子プロレスが14団体もあり、団体交流戦などは、一部を除いてできていないのに、4団体ある女子プロレスでは、この夢のオールスター団体対抗戦といえるようなものを実現してしまっているからです。そしてその対抗戦に限らず、戦いの質も高くなっており、またプロレスファンが喜ぶ数々のドラマや名勝負があり、またたくさんの選手たちにさまざまな深みが感じられるようになったからだと思います。それがまた、以前には女子プロレスというと、若い女の子だけが見るものだったのが、いまではたくさんの男性ファンが会場につめかけるところでもあるかと思います。昔のように歌を唄うセレモニーもなくなりつつあります。歌なんか唄っていられないのです。
 前には、女子プロレスといえば全日本女子プロレスだけであり、25歳停年制で、女子プロレス史上最強といわれたジャガー横田も、デビル雅美も、クラッシュギャルズもJBエンジェルスも引退してしまいました。それが、全日本以外の団体もできて、デビルや、JBの立野紀代も元気に復活活躍しています。いまでは、長与千種までプロレスにもどってくるかもしれません。そして、ブル中野によって全日本の25歳停年制もとりやめになってきました。
spt029 今女子プロレスが大きく変わっているのです。そんな現在の女子プロレスを知る入門書としては、この本が最適ではないかと思いました。
 現在の女子プロレスで私がどうしても注目してしまう選手といったら、次の4人でしょうか。もちろんプロレスに関わるすべてが好きなわけですが、とくにそのなかでも、この選手を見ていたいな、やっぱりいいなと思う選手です。
 まずは、北斗晶、デビル雅美、ブル中野、神取忍でしょうか。そのあとというと、尾崎魔弓、アジャ・コング、キューティ鈴木、そして女子ではありませんが、全日本のミゼットプロレスの3人の選手でしょうか。
 たとえば、尾崎魔弓なんて、155センチしかなく、割りと美人の顔した選手です。でも試合になるととても大きく感じるんですね。たいへんにダイナミックな動きをする。しかも、美人レスラーとして化粧をきちんとして、衣装を考え、長い髪のまま試合に臨んでいるのはたいしたプロ根性だなと感心します。

  男子のレスラーと女子プロレスの話をすると、「男のやってい
  るこれこそがプロレスなんだ」という言葉がちょくちょく出てく
  るのだ。
  しかし、すべての男子レスラーが女子プロレスに対して偏見を
  持っているかと言うと、そうではない。たとえば天龍源一郎は、
  「たとえ女子プロ
 レスラーでも、俺は同じ職業の人間として、同じプロレスラーと
  して相手に敬意を表する」「どんな小さな女の子でも、その人が
  プロレスラーだったら、俺はプロレスラーとして、同業者として
  認める」と発言している。世間一般の女子プロレスの認識が上がっ
  てきているのに、男子プロレスラーから見た女子プロレスの地位
  は依然として低いままだ。そのギャップを認識すべきだと天龍は
  言う。「おまえらが考えている女子プロレスじゃないんだよ。い
  まは」こうも天龍は言っている。

 この天龍のいっている認識こそ、現在そしてこれからの女子プロレスを表していると思います。いくら多くの男子プロレスラーが偏見をもっていようと、もうこの現在の女子プロレスの隆盛はたひとりひとりの女子プロレスラーが作り出したものなのです。そしてこの女子プロレスラーの頑張りこそ、この多くの男子プロレスラーのみならず、多くの女子プロレスに対する偏見への闘いでもあると思うのです。

 全日本女子の松永高司会長は、かなり真面目に女子プロレスを考えてきました。プロレスが力道山時代の興業というような形をかたくなに守っているかと思います。また、25歳定年制も、有名な「三禁(酒、煙草、男は禁止)」というのも、よく女の子を考えてきたものなのでしょう。わずか15歳くらいの女の子を親から預かるのだから、きちんとその子を管理し、もし好きな男ができるようなら、プロレスをめでたくやめて、家庭を作りなさい、25歳になるころにはそう考えなさいということなのでしょう。だが、今では違うように考える選手が出てきているのです。
 べつに女である私も、男子プロレスラーと同じようにもっとプロレスをやりつづけたっていいではないのか。別に25歳すぎたら、結婚して、家庭に入らなくてもいいではないのかと。さらには、いや家庭人になって、奥さんだったり、子どもがいたりする女子プロレスラーがいたっていいのではないのかと。男子プロレスラーはそうしているではないのか。
 だからデビル雅美はプロレスを他団体にいってまで続けています。リングを降りたら彼女ほど女らしいレスラーはいないのではなでしょうか。なにしろ、料理が好きで、レース網が趣味だという。だが、リング上での彼女の顔はまるで般若のようで素敵です。ブル中野は、ジャイアント馬場やアントニオ猪木を意識しながら、プロレスをやってきたという。馬場があの年になっても、みんなに親しまれてプロレスをやるように、女子である私が同じようにプロレスラーを続けてはいけないのだろうか。北斗晶は女子プロレスラーには珍しく男子プロレスのビデオなど、けっして見ようとしないといいます。男子プロレスよりも自分のプロレスの方が上だという誇りがあるようなのです。風間ルミは大変な酒豪だという。なんで女だからといって、男子プロレスラーと同じように豪快に酒を飲んじゃいけないのだ。
 こうして今女子プロレスの世界は確実に変わってきています。私にはとてもいいことだなと思えます。今後もさらにこの女子プロレスに注目していきたいと考えています。

 最後に全日本女子プロレスのみに残っている、ミゼットプロレスについての記述をみたいと思います。このいわゆる小人プロレスはテレビの映像にはけっして出てきません。また地方でしか興業しないということです。

  彼らの試合には、いわゆる“人権擁護団体”や“PTAオバサ
  ン”から一方的なクレームがつくのだ。「可愛そうな身体障害者
  を見世物にしている」というのが、彼らの言い分だ。しかし、ミ
  ゼット・レスラーにしてみれば、これはちゃんちゃらおかしい、
  いやとんでもない話だ。「人の仕事を奪わないでくれ。だったら
  あんたたち、生活の面倒みてくれるんですか?僕たちがやりたく
  てやっている仕事なのにそれを奪うんですか?  僕たちは仕事を
  しちゃいけないんですか? 僕たちは人前にでちゃいけないんで
 すか?」と、ミゼット・セスラーは憤る。

 まったく彼らのいうとおりです。これこそ人権侵害です。私はこうしたミゼット・プロレスを内包している女子プロレスのリングと世界を高く評価します。(1993.11.03)