将門Web

周が日々仕事であちこち歩いたり、友人や家族と話した中で感じたことを発信しています。

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11031603書 名  12モンキース
著 者  エリザベス・ハンド
訳 者  野田昌宏
発行所  早川文庫
1996年5月31日発行

 21世紀になって、人類は原因不明のウィルスの為に全滅寸前になっています。わずかに残った人類は、ウィルスにおかされた地表を避けて、地下に隠れるように住んでいます。
 そこで科学者たちは、この原因を解明し人類を救う為に、一人の男を破滅が始まった1996年にタイムスリップさせます。「12モンキーズ」という集団が関係しているらしいのです。その集団は一体何者なのだろうか。
 しかし、その男コールが送り込まれたのは何故か1990年だったのです。ところが段々と判っていくのですが、人類の過去の歴史の中に、このコールは何度も登場しているようです。だがコール自身はそのことが判っていません。
 この「12モンキーズ」というのは動物愛護の団体の先鋭化した部分なのです。いわば環境保護主義者エコロジストの過激先鋭集団と言えばいいでしょうか。彼等はこの地球の動植物を滅ぼしてしまうような傲慢な人間の存在が許せないのです。だから、世界中の人間たちに警告し、その脅しの手段としてウィルスを使おうというのですが、それが脅しではなく、実際にそのウィルスをまいてしまうことになるのかもしれません。しかし未来の世界から、過去実際に起きてしまったことをコールだけの働きで調べようというのですから、真相に到達できるのかは難しいことなわけです。
 過去と未来が交互に錯綜し、しかもコール自身が自分のやっていることが、自らの妄想の中の出来事ではないかと思い込んでしまうこともあります。そしてコールがいつも夢の中に出てくる空港でのシーンは一体何を意味しているのでしょうか。
 自分の現実が未来の姿であり、また過去の姿でもあるということがここに表われてくるのですが、それが明確に理解できるのは最後の最後になってからなのです。
 地球環境を大切に守ろうというようなエコロジストたちが、その実環境を破壊する人類を憎むあまり、その破滅まで考えてしまうというのは、現実の環境保護主義者や反原発の論者を見ているとよく判る気がします。原発の恐ろしさをこの無知な住民に知らしめるためには、原発事故が起きればいいんだと考えているんじゃないのかと思えるふしがあります。このSFの中のこの指摘展開はいいなあと思わせてくれました。
 ただ、どうしてタイムマシンで1996年にいくはずが、90年になってしまったのかとか、また現実(つまり21世紀初頭)に戻ったり、また過去へトラベルするなどということの説明がないように思います。科学的に説明しろということではなく、SF的にでも説明してくれないと、ちょっとよく理解できないなというところでした。(1998.11.01)

10122503 子どもが中学高校生のころ、社会科や歴史が苦手なので(二人とも)、教えことがありました。その中で、直立猿人とかアウストラロピテクスとかネアンデルタール人の話なんか話したことがあります。その中でいろいろ聞かれたのですが、たとえばこのネアンデルタールはいったいそのあとどうなったのだろうということがありました。そのあと出現したクロマニヨン人に滅ぼされてしまったといわれています。このクロマニヨン人の子孫が私たちであるわけです。
 ある一時期はこのクロマニヨン人とネアンデルタール人が一緒に存在していたといわれています。そしてこのクロマニヨン人は実はネアンデルタール人の中から生まれてきたといわれています。
  北京原人-ネアンデルタール人-クロマニヨン人の流れが人類の進化ではないかなんて今の段階ではいわれているようです。
  そこで疑問がでてくるわけです。ネアンデルタール人からクロマニヨン人が生まれてきたように、クロマニヨン人たる我々の間から、新人類が生まれてくるのでしょうか。そしてクロマニヨン人がネアンデルタール人を滅ぼしてしまったように、この新人類は親である私たちを殺してしまうのでしょうか。そしてそれはいつのことになるのでしょうか。
  そうした思いを描いてくれたSFがあります。著者は「2001年宇宙の旅」という難解な映画の原作者です。あの話でも似たようなテーマがあるように思いました。

書  名  幼年期の終り
著  者  アーサー・C・クラーク
訳  者  福島正実
発行所  早川文庫

  20世紀のおわりに、アメリカとソ連がいよいよ宇宙へ宇宙船をとびたたせようとしています。どちらも相手より先にやることが必要なのです。だが、その直前に地球全土に巨大な宇宙船群が現れます。そしてそれは、ニューヨークやモスクワ、東京、北京、パリなどの世界の主要都市の上空に浮んで動こうとしません。

  この船団の総督は上帝(オーバーロード)カレルレンといいます。そしてこのオーバーロードのおかげで、人類は国ごとの争いはやめ、人々の生活は格段と向上します。人々はしだいにこのオーバーロードの存在をもう自然な存在として意識するようになります。しかしその神のようなオーバーロードはいつまでもその宇宙船からおりて来ません。どのような姿形をしているのか人間には判らないのです。そして、カレルレンは、地球に到達してから50年後に人々の前に姿を現すことを約束します。
  その50年後、カレルレンは人類の前に姿を現します。……なんとその姿は人間が「悪魔」と呼んでいる者と同じ姿でした。ここで、実は人類はその発生のころからすでにこのオーバーロードとの出会いが予定されており、その未来の記憶として最初から、この悪魔の姿が人類の頭に記憶させられていたという真相があきらかにされてきます。つまり人類が進んできた過去はもう予定されていたものだということでしょう。

 そして、さらに今後の人類の進むべき道を見守るためにオーバーロードは存在しているのです。その道とは、人類のさらなる進化、新人類への進化なのです。その進化を確実なものとして見守る役割がオーバーロードなのです。こうして人類は幼年期を終って、その先に進むのです。しかし、そのとき旧人類はその未来を知ることはできません。オーバーロードはこの子供の新人類を旧人類から守る役割があるのです。ちょうど過去に、ネアンデルタール人も、新人たるクロマニヨン人と闘い敗れたように、新人類は親を殺して次の段階へ進むのでしょうか。
  そして、この役割を果たしているオーバーロードも実は、その上の存在である「上霊」とでもいうものに従わされています。オーバーロード自身もその上霊がなんであるのか判っていないのです。そして不幸なことに、オーバーロード自身はもはや進化することはなく、進化できる人類を羨ましいと思っているのです。
  このオーバーロードの役割が、「2001年宇宙の旅」では最初に出てくる石板になるのでしょうか。

  たしかに人類が過去、進化してきる過程で、旧人類を滅ぼしてきたことは間違いないはずです。突如出現してきた新しい人類たる自分の子供たちを旧人類たる親はみてどう思ったのでしょうか。そしてそれは過去のことではなく、またこれからも繰返されることなのかもしれないのです。いや間違いなく繰返されることでしょう。

  ギリシア神話において、ウラノスからクロノスが生まれ、クロノスからゼウスが生まれたといいます。それぞれの親は、ウラノスは息子たるクロノスを恐れ、クロノスは息子たるゼウスを恐れました。それぞれやがて息子が自分を殺して世界を支配する運命になることを知っていたからです。そして息子を極度に警戒し、殺してしまおうとしますが、運命どうり、息子に殺されてしまいます。なんだかこのことは、この人類の過去と未来を象徴しているように思えてならないのです。(1998.11.01)

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