10111218 親友の堀雅裕さんがなくなりまして、もう1カ月以上がすぎてしまいました。なんだか、私はこのごろいらいらしていました。彼と私はよく会って飲んでいたといいましても、互いに遠慮というようなものがありまして、長く連絡を取らないことも多々ありました。彼と会うと、どうしても二人で莫大に飲みますし、そして延々と飲んでいますので、それは彼の身体によくありません。それでは、奥さんの燕尼に心配をかけてしまいます。ただ、このごろは、彼と二人で飲むことよりもMさんという女性と3人で飲むことが多くて、それは実に愉しい瞬間でした。若くて綺麗な女性が間にいると、なんだか二人ともに、けっこう真面目になってよかったなという思いでした。
 でも彼とはしばらく連絡をとらないといっても、さすがに1カ月もすると、電話をしてきたものでした。私の事務所へでも、携帯へでも、自宅へでも電話してきます。留守でも、折り返しすぐに私は電話しますから、結果としてどこかで飲むことになります。1軒で終わろうという固い決意も、飲んでいるうちにもう1軒ということになってしまっていました。
 そんなことをもうずっと繰り返していたわけですが、今回だけは、もう1カ月が過ぎようと、彼から電話がかかってくることはありません。なんだか、仕事をしていても、道を歩いていても、彼からの電話が「なんでないんだろう」なんてぼんやり思っていて、そして気がつくことがあります。「彼はもういないんだな」。
 そしてとくに近ごろは、自宅に帰っても、なんだかすぐ寝てしまっていました。なんだかとにかく寂しい思いで、もう眠ってしまいたいのです。眠れば、この思いが晴れるのではというような感じをもつのですが、実際はそういきません。でも普段は平均4時間の睡眠ですんでしまうのが、ただただ眠ってしまっていました。10時にベッドに入れば、普段ならば、午前2時頃には起き出してパソコンに向かっているはずなのに、眠りから覚めることができないでいました。そんな日が続きました。
 13日に、また11時半頃寝室に向いました。妻が「パパ、歯磨いた?」なんて声を後にして、まず次女の部屋を覗くと、「パパはママの子どもみたいだね」なんて言われました。「でもなんだか元気ないね」という言葉に、

 うん、堀ちゃんがなくなってサ、こんだけ時間がたっても、あいつ電話してこないからね、ほんとに死んじゃったんだと思うとね、もう元気でないよ。

 それで、私としては午前4時には起きられる予定なのですが、なぜかそのまま眠ってしまっていました。
 そしてその朝(14日)私は夢を見ていました。その夢は、私が最初に詩吟で師事しました國誠流吟道会の宗家荒國誠先生なのです。もう先生とはお別れしてから20年になるでしょうか。
 荒先生には、さまざまに励まされてきたものでした。そして何といいましても、先生の詩吟が私は一番好きでした。荒先生の人間そのものが、私は尊敬していましたし、大好きでしたが、先生の詠う吟そもものも大好きでした。
 夢の中で、先生は何曲も詩吟を詠い続けてくれました。言葉は何も喋りません。昔聞いていたときには、先生は宗家ですから、最後に模範の吟を一つやるだけです。そして宴会になると、もともとオペラ歌手でした先生は、カンツオーネをやってくれたものです。
 その先生が、いくつもいくつも詩を吟じてくれます。一体何曲詠ってくれたのでしょうか。私はその吟が終わったときに、思わず大きく拍手します。先生は、私を見て、にっこり笑ってくれました。その笑顔を見て、私の拍手の大きさの中で、私は目が覚めました。
 きっと元気のない私のことを励ましに来てくれたのだなと私は確信しています。私は夢の中の先生の声と笑顔を忘れません。思えば堀ちゃんも、ジャズが好きだったわけですが、詩吟も何故か好きでいてくれたものでした。
 どんなことがあっても、やり続けなければならないのです。元気に生きていかなければならないのですね。
 荒先生、ありがとうございます。また元気にやっていきます。(2000.12.15)