07112501 この3篇は、今朝食事をしながら読みました。

おちょろ舟
 いやはや、読み出したところで思わず笑ってしまいました。

 昔、相撲取りに「男女ノ川」というのがいたが。あれにパーマをかけ、服を着せ、スカートをはかせたら、こうもあろうかというような、容貌魁偉、大兵肥満の大女が、床板も破れよと踏みとどろかして哄笑していた。

 私はここの箇所を何度も読んで、笑っています。ここをこうして書いていても笑ってしまうのです。
 実は私は、実際の男女(みな)ノ川のことは知りません。もうテレビ放送が始まった頃は、もう引退していました。この私は昔以下の本を読んで、実によく知ったのです。
 以下は過去私の書いたメモです。

川端要壽『下足番になった横綱 奇人横綱男女ノ川』
 以下は周の言う話です。
 私が覚えている相撲というと、千代の山、鏡里、吉葉山、栃錦の4横綱の時代です。その前の東富士、照国はもう知りません(東富士はそののちTBSプロレスのときにレスラーとして見ている)。そしてその前の羽黒山、双葉山というと活字でしかしりません。そしてこの男女ノ川は、その不思儀なしこ名で活字として記憶があるだけです。だが、これを読みまして、あの戦前戦中戦後を自由自在に生きた人がいたんだな、しかもそれが相撲界の人だったということに感動しました。そして、やはり作者の川端要壽さんがいいですね。よくこれだけ書いてくれました。今後はできたら、私としては、大内山と不動岩のことを書いてほしいな。大内山の相撲を私はよく思い出すのです。

 いや、これは男女ノ川の話ではありません。でももうこの小説は、もうあちこちで笑っていました。田辺聖子さんが実に脂ののりきっている時期なのかなあ。

 もうあとも、いくつかのところで笑いました。
 しかし、最後は、私の期待した男女ノ川は出てこないで、大塚テルヨという驚くほどの美人が登場します。これは聖子さんが、「また男女ノ川じゃ、読んでいる人に悪いかなあ」と思ったのかなあ。
 とにかく、愉しい小説です。


世間知らず
 佐和子は、もう適齢期27歳だ。よんどころなく見合いをすることになって、それで今つき合ってきている他ほかの男性を思いだす。そしてその一人と最後に結婚する決意をする。
 でもでも読んでいても、私はあまり頷いて読んでいけません。こうした女性の心理が理解できないですね。


波の上の自転車
 村山とその妻の会話は、もともと私たちの常識で知っていた世界でした。阪急電車と阪神電車の違いが大変に判るつもりです。やっぱり、宝塚かかえた阪急と、下町を走る阪神の違いは知っていたつもりですが、私は今朝食事のときに、「阪神と阪急は合併してどうなったのかなあ、宝塚も甲子園も変わるわけがないしなあ?」と妻に聞きました。私の妻は、大阪でOLだったことがあるのです。
 昨年5月に義父の納骨で神戸に行ったときも、私はその違いを大きく感じていたものです。

 村山が最後浮気する相手は、その二つではなく、阪堺電軌の上町線である。でもでも、この女も、やっぱり村山は、「───オアシスと思ったのは蜃気楼だったというのか」と思ってしまう。
 村山はその晩、夢を見る。その夢が私にはせつない。

 村山はよろめき、寝室のベッドに向かう。今夜も阪神は負けている。


あとがき
 やっぱり聖子さんは書いています。

 やっぱり「おちょろ舟」などは若書きの腕力まんまんというところだ。……このころ私は<中年男性>を主人公にしてかくのが面白くてまたならかった時期、自分ひとりでノリにノッている。

 その通りです。実に面白く読みました。

 最後の解説で、池内紀さんが「波の上の自転車」のことを書いています。

 そのあと彼がソファに横たわって見た夢。月光に照らされた海の上を走る自転車の夢。

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