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 なんだか、こうしてパソコンに向かっているときにも、つい読んでいまいます。もう人生の実に面白いところを描いています。

泣き上戸の天女

 野中の前にトモエという天女とも思える女性が現れる。彼は彼女とちゃんと結婚しようと思う。彼は41歳だが、トモエも同じくらいにしか思えない。そして同棲をする。
 だけど、いざ結婚、籍を入れようというときに、彼女はふいに居なくなってします。彼にはそのわけがさっぱり判りません。
 でも最後にその真相が見えてきます。実はトモエは60歳だった。彼と一緒に住んでいた彼女に、「『独り生きた女の碑』慰霊祭ならびに例会ご通知」という手紙が届く。彼女に会いたい彼は、これに出かけていく。
 この碑の背面に言葉が彫られている。

 戦争は有為の若者をたくさん死なせましたが、またわれわれ女性も犠牲者にほかなりませんでした。愛する人を奪われ、青春の花を咲かせることもできずに、女性たちは独り生き、老いました。今後はこの悲しみを繰り返さないため、われわれは戦争に反対し、平和を希求します…。

 私はもう涙が止りません。


春情蛸の足

 私はおでんで飲んでいるのも好きなのです。でも関西に行ったときに、あちらで言う「関東煮き」は、どうみても私たちと同じおでんとは思われない。
 サエズリ(鯨肉)とかコロ(これも鯨)とか、関東にはないものを、「これはなんやろか?」と心の中で思いながら(心の中でもなぜか大阪弁になっていたりする)、酒を飲んでいます。記憶がなくなりかけると、そこが北野天満宮なんていうふうなのですね。
 この杉野が、えみ子となぜか結ばれないのかは判る気がしますね。


にえきらない男

 ここに出てくる松山悠一は、甘い美貌をした男である。その彼がモモ子の家に結婚の申込に来る。でも彼は、母親になかなかそのことを切り出さない。美貌の中には、優しさもあるが、気弱さと優柔不断もあるのだ。それを見取る母もすぐに賛成とはいかないようだ。それを悠一が「大丈夫、僕に任せなさい」とでも言いきってくれればいいのに。
 最後にモモ子が悠一にいう。

 あんたって……煮えきらない男ね!

 そうねえ、こんな男はいっぱいいますよ。

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