また第１１章を読んだときと同じで、私にはただただ難しいです。やはりイエスは私たちに安逸な過ごし方を教えてくれるわけではないようです。
だが私は、これでは不安ばかりなのです。自分なんかでは近寄りがたいです。
第１２章
その時、無數の人あつまりて、群衆ふみ合ふばかりなり。イエスまづ弟子たちに言ひ出で給ふ『なんぢら、パリサイ人のパンだねに心せよ、これ僞善なり。蔽はれたるものに露（あは）れぬはなく、隱れたるものに知られぬはなし。この故に汝らが暗きにて言ふことは、明るきにて聞え、部屋の内にて耳によりて語りしことは、屋（や）の上にて宣べらるべし。我が友たる汝らに告ぐ。身を殺して後に何をも爲し得ぬ者どもを懼るな。懼るべきものを汝らに示さん。殺したる後ゲヘナに投げ入るる權威ある者を懼れよ。われ汝らに告ぐ、げに之を懼れよ。五羽の雀は二錢にて賣るにあらずや、然るに其の一羽だに神の前に忘れらるる事なし。汝らの頭の髮までもみな數へらる。懼るな、汝らは多くの雀よりも優るるなり。われ汝らに告ぐ、凡そ人の前に我を言ひあらはす者を、人の子もまた神の使たちの前にて言ひあらはさん。されど人の
前にて我を否む者は、神の使たちの前にて否まれん。凡そ言をもて人の子に逆ふ者は赦されん。されど聖靈をけがすものは赦されじ。人なんぢらを會堂、或は司、あるひは權威ある者の前に引きゆかん時、いかに何を答へ、または何を言はんと思ひ煩ふな。聖靈そのとき言ふべきことを教へ給はん』
群衆のうちの或人いふ『師よ、わが兄弟に命じて、嗣業（しげふ）を我に分たしめ給へ』之に言ひたまふ『人よ、誰が我を立てて汝らの裁判人（さいばんにん）また分配者とせしぞ』かくて人々に言ひたまふ『愼みて凡ての慳貪（むさぼり）をふせげ、人の生命は所有の豐なるには因らぬなり』また譬を語りて言ひ給ふ『ある富める人、その畑（はた）豐に實りたれば、心の中（うち）に議（はか）りて言ふ「われ如何にせん、我が作物を藏めおく處なし」遂に言ふ「われ斯（か）く爲さん、わが倉を毀ち、更に大なるものを建てて、其處にわが穀物および善き物をことごとく藏めん。かくてわが靈魂（たましひ）に言はん、靈魂よ、多年を過すに足る多くの善き物を貯へたれば、安んぜよ、飮食（のみくひ）せよ、樂しめよ」然るに神かれに「愚なる者よ、今宵なんぢの靈魂（たましひ）とらるべし、さらば汝の備へたる物は、誰がものとなるべきぞ」と言ひ給へり。己のために財を貯へ、神に對して富まぬ者は斯くのごとし』
また弟子たちに言ひ給ふ『この故にわれ汝らに告ぐ、何を食はんと生命
のことを思ひ煩ひ、何を著（き）んと體のことを思ひ煩ふな。生命は糧にまさり、體は衣（ころも）に勝るなり。鴉（からす）を思ひ見よ、播（ま）かず、刈らず、納屋も倉もなし。然るに神は之を養ひたまふ、汝ら鳥に優るること幾許ぞや。汝らの中たれか思ひ煩ひて、身の長一尺を加へ得んや。されば最小（いとちいさ）き事すら能はぬに、何ぞ他のことを思ひ煩ふか。百合を思ひ見よ、紡がず、織らざるなり。されど我なんぢらに告ぐ、榮華を極めたるソロモンだに、其の服裝この花の一つにも及かざりき。今日ありて、明日爐に投げ入れらるる野の草をも、神は斯く裝ひ給へば、況（まし）て汝らをや、ああ信仰うすき者よ、
なんぢら何を食ひ何を飮まんと求むな、また心を動かすな。是みな世の異邦人の切に求むる所なれど、汝らの父は、此等の物のなんぢらに必要なるを知り給へばなり。ただ父の御國を求めよ。さらば此等の物は、なんぢらに加へらるべし。懼るな、小き群よ、なんぢらに御國を賜ふことは、汝らの父の御意（みこころ）なり。汝らの所有（もちもの）を賣りて施濟（ほどこし）をなせ。己がために舊びぬ財布をつくり、盡きぬ財寶（たから）を天に貯へよ。かしこは盜人（ぬすびと）も近づかず、蟲も壞（やぶ）らぬなり、汝らの財寶のある所には、汝らの心もあるべし。
なんぢら腰に帶し、燈火をともして居れ。主人、婚筵（こんえん）より歸り來りて戸を叩かば、直ちに開くために待つ人のごとく
なれ。主人の來るとき、目を覺しをるを見らるる僕どもは幸福なるかな。われ誠に汝らに告ぐ、主人帶して其の僕どもを食事の席に就かせ、進みて給仕すべし。主人、夜（よ）の半ごろ若くは夜の明くる頃に來るとも、かくの如くなるを見らるる僕どもは幸福なり。なんぢら之を知れ、家主（いえあるじ）もし盜人いづれの時來るかを知らば、その家を穿（うが）たすまじ。汝らも備へをれ。人の子は思はぬ時に來ればなり』
ペテロ言ふ『主よ、この譬を言ひ給ふは我らにか、また凡ての人にか』主いひ給ふ『主人が時に及びて僕どもに定（さだめ）の糧を與へさする爲に、その僕どもの上に立つる忠實にして慧（さと）き支配人は誰なるか、主人のきたる時、かく爲し居るを見らるる僕は幸福なるかな。われ實（まこと）をもて汝らに告ぐ、主人すべての所有を彼に掌（つかさ）どらすべし。若しその僕、心のうちに、主人の來るは遲しと思ひ、僕・婢女（はしため）をたたき、飮食（のみくひ）して醉ひ始めなば、その僕の主人、おもはぬ日知らぬ時に來りて、之を烈しく笞うち、その報を不忠者と同じうせん。主人の意を知りながら用意せず、又その意に從はぬ僕は、笞うたるること多からん。されど知らずして打たるべき事をなす者は、笞うたるること少からん。多く與へらるる者は、多く求められん。多く人に托くれば、更に多くその人より請ひ求むべし。
我は火を地に投ぜんとて來れり。此の火すでに燃えたらんには、我また何をか望まん。されど我には受くべきバプテスマあり。その成し遂げらるるまでは、思ひ逼（せま）ること如何ばかりぞや。われ地に平和を與へんために來ると思ふか。われ汝らに告ぐ、然らず、反つて分爭（ぶんそう）なり。今よりのち一家に五人あらば、三人は二人に、二人は三人に分れ爭はん。父は子に、子は父に、母は娘に、娘は母に、姑姆（しうとめ）は嫁に、嫁は姑姆に分れ爭はん』
イエスまた群衆に言ひ給ふ『なんぢら雲の西より起るを見れば、直ちに言ふ「急雨（はやさめ）きたらん」と、果して然り。また南風ふけば、汝等いふ「強き暑あらん」と、果して然り。僞善者よ、汝ら天地の氣色（けはひ）を辨（わきま）ふることを知り
て、今の時を辨ふること能はぬは何ぞや。また何故みづから正しき事を定めぬか。なんぢ訴ふる者とともに司に往くとき、途（みち）にて和解せんことを力めよ。恐らくは訴ふる者なんぢを審判人（さばきびと）に引きゆき、審判人なんぢを下役にわたし、下役なんぢを獄に投げ入れん。われ汝に告ぐ、一レプタも殘りなく償はずば、其處に出づること能はじ』
これならやはり「舊約聖書」の方が私には楽に思えてしまいます。どうしても楽なほうを私は求めてしまうのですね。
