将門Web

周が日々仕事であちこち歩いたり、友人や家族と話した中で感じたことを発信しています。

Tag:荊軻

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 毎日「源実朝『金槐和歌集』」を書いていますが(今日はまだ書いていません)、実朝の最後の歌「出テイナバ主ナキ宿ト成リヌトモ軒端ノ梅ヨ春ヲワスルナ」を思い出し、司馬遷の『刺客列伝』を思い出しました。

 この「司馬遷『史記』」の『刺客列伝』の中の荊軻のことで、

   風は粛粛として易水寒く、壮士一度去ってまた帰らず

と書いてあるのですが、私はこの荊軻を思い出しましたのです。思い出せば、私が高校1年の9月に読んでいたものでしたね。高校の授業中に読んでいたものでした。実朝も読んでいたのかなあ。
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11010601 私はこの著者とはこれまで数度お会いしています。何度も言葉を交わしました。ただ、いろいろな雑誌に載る文は読んできましたが、いくつも出されている著作を一つも読んだことがなかったので、少々悪いなという気持がありまして、やっと以下の本を読みました。

書 名 バカにつける薬
著 者 呉智英
発行所 双葉社
定価  980円
1987年2月5日第1刷発行

 しかし、この題名にある「バカにつける薬」というのが本当にあるのなら、まずはご自分につけられたら、というのが私の最初に思った感想なわけです。
「悲しいくらいに、あんたこそ馬鹿だねえ」と思いました。
 呉智英(「くれともふさ」と読むわけですが、私たちは「ごちえい」「ごちえい」と呼んでいます)さんは、実際にお会いすると謙虚な姿勢を見せる方です。それがどうして文章だと、こうまで人や物事を貶し続けるのかなと不思議です。まあ、それが彼の生き方なのだろうなと納得もしてしまいますが、まさしく「何をどうでもいいことを言い続けるの」という思いがしてしまいます。

 この本の中で、上野昂志と岡庭昇との論争が大きく取り上げられています。私はこれが羞かしいのです。まず岡庭なんか、扱うなよ、話しかけるなよ、と思います。あんたが岡庭を貶せば、岡庭は調子づいてしまうだけじゃないの。岡庭なんか、もうとっくに消え去った人であって、それを甦えさせるなよ、と思うんですね。私は70年代の大昔から、岡庭なんか、貶したくもない、なんにも関わりたくありません。
 上野さん(上野昂志とは、私はこれまた顔見知りでありますから、さんずけします)との言い合いは、もう、どっちも同じ資質だよと思いますね。論争する価値なんかありえないですよ。
 上野さんにしろ、呉智英にしろ、「これはさえてるな」と思わせる文章を私は知っています。だが、こうして「これはひでえな」という方が多すぎるのです。なんか悲しいですね。

 昔、呉智英氏と一緒の席で、私が詩吟を披露しました。そうしたら、彼が私に、荊軻の詩をやってほしいというのですね。私はそれは詩とはいえないので、詠えないといいましたら、「なんだ知らないのか」という言い方をしました。私は、

  風は蕭々として易水寒く、壮士ひとたび去ってまた帰らず

という文をあげて、この易水で秦の始皇帝を殺しにいく荊軻が燕の太子丹に別れるときのことを、初唐の駱賓王という詩人が「易水送別」という詩に描いているが、その詩にも、この語句が使われているわけでもないことを伝えました。思えば彼はこの荊軻が言ったという言葉を漢詩だと思っているんですね。今もそう思っているんだろうな。私は、

  あんなに儒教がどうたらこうたらと言っているのに、そんなことも
 知らないのか(註)

  (註)アジアの国の中で、日本を除くと、経済的に発展しているの
   は、韓国、台湾、香港、シンガポールだが、この4つに共通して
   いるものはなにか。それは儒教である。だから自分は今儒教を学
   びはじめたというようなことを呉智英氏は言っておりました。

という思いで、実はこの駱賓王の五言絶句の中に荊軻の語句を入れて吟うやりかたもあったのですが、「やってやるものか」ということでやめてしまいました。まったく馬鹿につける薬はありませんねえ。
 もう一度言います。馬鹿につける薬はありませんねえ。 (1997.08.15)

11010308 司馬遷の『史記』は実に長大な歴史書ですが、なんと言ってもこの書物が驚くべきことは、この書物の後半に『列伝』があることです。これはほかでは見られないものなのです。そしてその『列伝』の中にさらに驚いてしまうのですが、この『刺客列伝』があるのです。言わば、殺し屋-テロリストのことを書いているのです。
 以下の人物の列伝が書かれています。

 曹沫(そうかい)
 専諸(せんしょ)
 予譲(よじょう)
 聶政(しょうせい) その姉の栄(えい)
 荊軻(けいか)
 高漸離(こうぜんり)

 やっぱり私には、始皇帝を暗殺しようとした荊軻と高漸離のことがいつも思い出してしまいます。司馬遷がよく書いていてくれたと思うのですね。
 私は高校1年の秋にすべて読みました。退屈な授業のときにずっと読んでいたものでした。この長大なる歴史書の中で、列伝が実に面白く、そして中でもこの『刺客列伝』を熱く読んでいたことを思い出します。(2010.01.25)

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