「歴史は繰り返す。一度めは悲劇として、二度目は喜劇として」というのは、マルクスの「ルイ・ボナパルトのブリュメール１８日」なのですが、そんなことを思いながら中国の歴史で思い浮かんできたことがあります。
中国の歴史の中で、大きく国が変わるときに、旧支配勢力と新支配勢力の戦いだけではなく、もう一つの勢力があって、その３つの戦い、かけひきの中で、そのあとの時代が形成されるということがあったかと私は思っております。
当然、この三者のうちいずれか一つが勝ち残って中国を支配し、あとの二つはほろびるさるというのが歴史でした。
さて、それで、その例をあげてみましょう。
この３つの勢力の争いの中でかえって、もともとの中国の政権がその立場を奪われるというのは、過去何度も繰り返されてきたかと思います。
宋の国の北辺に遼という強力な契丹人の国ができます。宋は軍事的には敵わないので、この国に弟分というような関係になります。そこでしばらくは、そのまま時代がすすみます。
だが、そこにさらにこの遼の北に女真人が金という国を建て、遼を攻撃してきます。遼は宋に救援を求めますが、宋は所詮どちらも夷狄のことであるからと助けません。それで、遼は滅びますが、金は宋にも進入してきます。ために、宋は長江以南に移動することにより、南宋という地方政権として生きることになります。
やがて、またこの金の北西部に巨大なモンゴル人の国ができます。金は南宋に連携して戦おうと救援を求めますが、今回も宋はほっておきます。ために、金は滅んで、そして結局は南宋も、フビライ汗の元に中国全土を奪われてしまいます。
思えば、その昔の晋の時代でも同じようなことがあったのを思い出します。晋もまた北辺の異民族の為に、長江以下に移り住み、東晋という時代になります。
それで、そのさらに前の時代をずっと思い出していきます。
そうすると、そもそも司馬遷「史記」の最初の最初、五帝本紀の黄帝の時代がまったく同じ事態だったのではと気がつくのです。
神農氏の時代、次第に諸侯の勢力が強くなり、世は乱れます。とくに蚩尤（しゆう）という強力な反乱者がいます。軒轅（けんえん、のちの黄帝）はこの中で勢力を強め、ついには神農氏炎帝と戦い、これを破ります。そののち、さらに蚩尤を破って、天子の位置につき、黄帝と称します。
これこそ、神農氏と蚩尤の２つの勢力の争いの中で、最終的に黄帝が天下をとっていったということだと思います。（註）
（註）蚩尤といい、炎帝といっても、絵で見ると、怪物のような姿
なのです。実際は、中国太古のさまざまな民族のそれぞれの神
だったのでしょう。もっとも、神農氏と炎帝は別な存在として
いる歴史書もありますが、司馬遷は神農氏の最後の皇帝が炎帝
と考えたのだと思います。そして私は、これらの存在は皆、中
国古代の神々ではないのかと思っています。
この形を何度も繰り返してきたの中国の歴史なのだななんて思ったものです。
さて、そこで、私がいいたいのは、２０世紀の話なのです。この３者とは誰なのか。中国国民党であり、中国共産党であり、そして、もうひとつは日本なのでしょうか。いや、私はもっと考えたいのです。それで、この文を始めました。 (2000.12.04)
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