６たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと（1992.10.14）
本日３時半ころ私の事務所に、毎日新聞学芸部の桐原さんから電話がありました。
の正確な内容です。
毎日新聞学芸部の桐原と申します。「宮本武蔵」の件なんです
が、ただいま井上ひさし氏からＦＡＸがはいりまして、「宮本武
蔵」の後半の「法典野原」で伊織という少年がそれを、麻の実を
跳ぶシーンがあるそうで、井上氏はそのへんから浮かべているよ
うであります。
また改めてご連絡申し上げます。
ということでした。「法典ケ原」ではなくどうしても「法典野原」と聞こえます。
さてそれで私はまた書留にて以下の文書を送りました。
１９９２年１０月１５日
毎日新聞社学芸部
桐 原 良 光 様
ここに私の住所会社電話
ここに自宅の住所電話
萩 原 周 二
前略
昨日はお電話いただきありがとうございました。ちょうどクライアント
で打ち合せ中だったもので、たいへん失礼いたしました。
早速ですが、昨日頂いた電話の内容は、
毎日新聞学芸部の桐原と申します。「宮本武蔵」の件なんです
が、ただいま井上ひさし氏からＦＡＸがはいりまして、「宮本武
蔵」の後半の「法典野原」で伊織という少年がそれを、麻の実を
跳ぶシーンがあるそうで、井上氏はそのへんから浮かべているよ
うであります。
また改めてご連絡申し上げます。
ということでした。それで私は、「へーッ、そんなところあったかな」と
思い、あったら、井上ひさしさんならびに桐原さんに謝らないとと考えま
した。それでまた「宮本武蔵」を調べてみました。
ところがいくら読みすすんでも、こんな章を見つけることができないの
です。それで、この井上ひさしさんがおっしゃっていることは、いろいろ
探した結果、以下ではないのでしょうか。
「空の巻」の「通夜童子」という章の最初に
そこは下総行徳村からざっと一里程ある寒村だった。いや村と
いうほどな戸数もない。一面に篠や葦や雑木の生えている荒野で
あった。里の者は、法典ケ原といっている。
とあります。ここのことではないでしょうか。これは今の船橋市の武蔵野
線船橋法典駅あたりのことだと思いますが、ここで初めて武蔵は伊織と会
います。
でもとにかく前のお送りしました文書のとおり、
作中、武蔵が弟子（伊織だったと思いますが）に麻の実を蒔い
てその上を毎日飛ぶようにと命じる部分があります
という部分はこの「空の卷」にはないのです。いや私が読んだ限り吉川英
治「宮本武蔵」の中にはありません。どうみてもこれは、井上ひさしさん
が、吉川英治「天兵童子」の中のシーンを「宮本武蔵」の話と勘違いして
いるものとしてしか思えません。できましたら、「宮本武蔵」ならびに
「天兵童子」を読み比べていただけないでしょうか。
再度申しあげます。間違いが確認できるのであれば、貴紙の紙面上にて
訂正解説をお願いします。
なお桐原さまにはたいへんご面倒をおかけします。ただ私は吉川英治も
井上ひさしさんも好きな作家であるものですから、話をすっきりしたいと
思っているのです。 早 々
さてこの結果はどうなるでしょうか。しかし今回は最初から書留郵便にしたのがよかったようです。証拠が残りますからね。まさか最初から内容証明（配達証明つき）では驚いてしまうでしょうから。
何をどうでもいいことしつこくやっているのだろうと思われる人もいるかと思います。しかし、私はかなり大切なことだと思うのですね。「やるべきときはやる」ではなく、「いまがやるときなのです」といつも考えているからです。吉川英治のことですから、あまり実生活には関係ないといえるかと思いますが、これが、税金のこととか、政治上のこととかだと問題となるかと思います。私にはどちらだって同じなのですよ。
昨日会った私の親友が、打ち合せのあと少し飲んだとき、金丸のことで、朝のテレビ番組（生島ヒロシが司会やっているといっていた）へ、札幌から３０分抗議の電話したと言っていた。それは、アントニオ猪木が「金丸やめろ」ということで、テレビで「猪木さんはさすがだ」というようなことをやっていたので、思わず、猪木の狡さと、マスコミのいいかげんさに腹がたって仕方なかったのだという。本当にそうですよ。私も今回では、猪木のような人間があまりに多いので頭に血がのぼります。まずその場で抗議することです。その場で阻止することです。
しかし彼がそうして抗議したって、何にも載らないわけですね。彼の怒りは、私と同じでしかもかなりな確信がある内容なのです。まあ私がやりますかね。彼も私も自民党がいけないとか、社会党もいけないとかいうことには、興味のない人間です。でも今回のように現れてくる、ひどい対応、くさつた大勢翼賛の匂には我慢なりません。
ここは宮本武蔵の話ですから、ここまでにしておきましょうか。
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