11111617　４月１日で消費税が従来の３％から５％に引き上げられたことで、いろいろな報道がありました。私が感じたのは、なんだか便乗価格値上げの転嫁に怒りの声が多かったように思います。
　４月１日午後２時頃、私の事務所の近くの飲み屋（昼はランチをやっている）に入りました。「消費税どうするの？」という問いに、店主は

　　ランチは７５０円で据え置きですよ。

といいます。でも、

　　夜は、今までの価格に５％の消費税掛けてお客さんからいただ
　きます。

というのです。それで当然おかしいなと思いますよね。
　今まで８００円のおつまみを例にします。このおつまみは、４月１日から消費税含めて８４０円になるということです。これは本来なら、以下のようになるべきじゃないですか

　　今までの本体価格　８００×１００／１０３＝７７７

　　４月１日からの消費税額　　７７７×５（％）＝３９

　　４月１日からの消費税込額　７７７＋３９＝８１６

　これで分かることは、この店は４月１日より、このおつまみを２３円便乗値上げして、結果として消費税は余計に１円多くなったことになります。
　以上のことを、けっこうマスコミ上で非難していた市民や知識人が多かったように私は感じました。

　さて、そこで私は申し上げます。私はこの飲み屋の店主の方に身を入れてしまうのです。
　この飲み屋の店主は、「もう５％はお客さんにもらわないとやっていけないということでした。それに対して、私が計算したように、全部ちゃんとやらないといけないというのが各市民主義者や知識人の言い方なわけです。でも、このお店の夜のおつまみや酒類は非常に種類が多く、もしこのように計算通り変えるとしたらすべてのメニューを書き換えねばなりません。消費税計算の根拠の本体価格のみのメニューを作るか、あるいもう、すべての価格を改定してこれまた書き換えねばなりません。店主は「この時期、もうそんなこと無理だよ」というのですね。私は同感してしまいます。この店はここ１０年くらい、価格を上げていません。そんな姿勢なのに、国家の都合による税制のいじくりになんか、つきあっていられないのです。
　正確に計算することよりも、店としてはユーザーに適正なサービスを提供し、私たちユーザーはそれを判断して店を選択していけばいいわけです。上の例でもランチのほうはいわば「便乗値下げ」してしまったことになるのです。

　さて、私はさらにいいたいのです。たとえば、今までもこれからも日本では免税業者や簡易課税制度があって、それらは結局は国家へ納税にはならず益税として業者のポケットに入ってしまうと非難する声があることです。随分前にもこのことは述べてきました。今回も例を上げて説明します。税額３％の時代での例です。

　ここにちょうど年間３、０００万円の売り上げの業者がいます。これは税込み計算で３千万円ということです。
　さてこの業者は課税売り上げは

　　30,000,000×100/103　＝　29,126,213（円）

ですから、非課税業者で、消費税は免税です。
　そうするとこの業者はいくらの消費税分が益税となるのでしょうか。この業者の仕入額を８割とします。仕入原価や賃料や水道光熱費、通信料、文房具代等々が、全部の合計で８割の２，４００万円ということで、残りの６００万円を自分ならびに一緒に働いている奥さんの収入にしているということです（実におおざっぱに計算していますよ）。この業者が課税業者とすれば、課税額は以下の通りです。

　　30,000,000×3/103　−　24,000,000×3/103　＝　174,757

　この 174,757円をこの業者は非課税ということで、納税せずに懐に入れてしまっていると言われていたわけです。
　でも、この業者はこの１７万なにがしを懐に入れているといえるでしょうか。これは計算上出てくることで、これは適確に価格に消費税を転嫁しているという前提がないとならないわけです。値引きしたり、おまけしたりする際にも、そのつど消費税が転嫁されていると考えなければ、この１７万なにがしは意味がありません。むしろ、こうした中小零細業者は、この益税額相当はユーザーにサービスしているのではないでしょうか。そうでなければ、競合相手に勝てる訳がないのです。
　私たちユーザーにとって大事なのは、どうみても非課税業者としか思えない、私たちの近所にある業者やお店が、益税をポケットに入れているという目で見ることではなく、私たちユーザーのために、適確な価格と適確なサービスを提供しているのか否かということではないでしょうか。ようするに、まったく同じ商品でサービスも同じなら、消費税額がどうであろうと、価格が安いのを躊躇なく選ぶのがまともな消費者だということです。

　私のクライアントでは、けっこう簡易課税業者を選択してきました。だが、簡易課税がだんだんより徴税率が不当に増えてきたときに、けっこう課税業者に変更してきました、もう最初から簡易課税を選択しないで、課税業者になった会社もあります。すべてコンピュータでシミュレーションしてきて決定してきました。簡易課税では、たとえ赤字でも必ず徴税されてしまいますが、課税業者だと、赤字の額次第では、消費税が還付されるからです。法人税や所得税は、納税していなければ、還付などありませんが、消費税は一銭も税務署に納税していなくても、還付されることが出てきます。当りまえですね。もうあらゆるもの（すなわち非課税以外のもの以外のすべて）の価格には、消費税が含まれているからです。

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