歌名　　里の秋
作詞　　斉藤信夫
作曲　　海沼  実
 唄 　　川田正子

一　しずかな　しずかな　里の秋
　　お背戸に木の実の　落ちる夜は
　　ああかあさんと　ただ二人
　　栗の実　にてます　いろりばた
二　あかるい　あかるい　星の空
　　なきなきよがもの　渡る夜は
　　ああとうさんの　あのえがお
　　栗の実　食べては　おもいだす
三　さよなら　さよなら　椰子の島
　　お舟にゆられて　かえられる
　　ああとうさんよ　ご無事でと
　　今夜も　かあさんと　祈ります
                （昭和二一年）

1205050312050504　ちょうど８月１５日に終戦となって、こうして母と子が二人秋の夜に父の帰りを待っています。この子の父が出征したのは南方の戦線のようです。私がこれを唱っていた子どものころは、ただ寂しい歌だなとのみ思って唱っていたように思います。
　この歌は、実は詩が作られたのは、昭和１６年１２月のことです。「星月夜」という題名の詩でした。小学校教師の斎藤信夫が、教え子たちの出征している父親への心情を詩ったものです。それが戦後になって、海沼実が曲をつけ、斎藤信夫が復員兵の無事帰国を祈るために「里の秋」と題名を改めたものです。２１年１２月にＮＨＫで初放送で、「復員だより」のテーマとなりました。
　私も、ちょうど私の母と兄が二人で父を待っている時の光景のように想像できてしまいます。私の父はインドネシアのスマトラ島から昭和２２年秋に復員してきました。もちろん、日本中にいや世界中にこうした母と子の姿がみられたわけでしょうが。
　そして残念なことに、今も世界中に、この母と子が存在しています。（1998.12.01）

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