ネット王子とケータイ姫―悲劇を防ぐための知恵 (中公新書ラクレ)
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雑誌名 ネット王子とケータイ姫
悲劇を防ぐための知恵
著 者 香山リカ＋森健
発行所 中公新書ラクレ
定 価 ７００円＋税
発行日 ２００４年１１月１０日発行
読了日 ２００９年２月１８日
私は真っ先に、この題名が「ネット王子」と「ケータイ姫」いうことで、なんで男女差があるのかなあ、と思いました。それについては１章の「なぜ王子はネットで姫はケータイ」で判りました。思えば、こんなことも私には見当のつかないことでした。
しかし、この本の出版されたのは、２００４年１１月であり、ちょうど私がブログを開始したのが、２００５年１月２１日からであり、そしてブログは過去のインターネットのＨＴＭＬによりホームページとは違って、男性よりも女性のほうがやりやすいアイテムだと思われたように、今では「ネット」というのは、若い女性には、実に親しみ安いものであり、またこれが書かれた時点とはかなり様子が違ってきているのかと思います。
まずは、いつものように、この本のいくつものところに書いてあることと、そして目次を以下のあげます。
裏表紙に書かれている文
少年犯罪が起こるたび、ネットやケータイが悪玉にされる。だが、今やそれらの機器が子どもにとって「唯一の居場所」であり、「自己の鏡」とさえなっている。大人はどう接するべきか。
著者略歴
香山リカ
精神科医。１９６０年北海道生まれ。東京医科大学卒業。現在帝塚山学院大学教授。臨床経験を活かし、新聞・雑誌・テレビで時評活動を展開。主著に『テレビゲームと癒し』（岩波書店）、『若者の法則』（岩波新書）、『ぷちナショナリスム症候群』（中公新書ラクレ）、『就職が怖い』（講談社）、『<私>の愛国心』（ちくま書房）、共著に『「愛国」問答』（中公新書ラクレ）など多数。
森健
フリー・ジャーナリスト。１９６８年東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業。『クォーク』『VIEWS』等の記者を経てフリー。生命科学、ＩＴから政治経済まで広範に活動。主著に『人体改造の世紀』（講談社ブルーバックス）、『天才とは何か？』（数研出版）。『社長を出せ！ってまたきたか！」（宝島社）など。http://www.moriken.org
目次
１章 あまりにもアナログな、デジタル機器
佐世保事件の衝撃
犯人はネットとカッターナイフ？
小六少女監禁事件
ケータイが子どもを悪に巻き込む？
「子どもからネット、ケータイを取り上げる」の声
家裁決定文が明らかにした事実
ネットが唯一の居場所
彼らがそれを好きな理由
ネット王子とケータイ姫
なぜ王子はネットで姫はケータイ
２章 学者とメディアを疑え!
ジャーナリズムの目
新聞、雑誌、テレビは右往左往
学者の目―研究者の実情は“言ったもん勝ち”
ゲームをしすぎると「ゲーム脳」に？
「テレビを見すぎると発達が遅れる？
精神科医の沈黙
海外はどうなっているか
３章 電脳世界の恐るべき子どもたち
中二「菜摘」のほんとうの生活
小六「かすみ」の生活
日記（ブログ）にはまる中二の拓哉
渋谷のマンガ喫茶
中三の二人組
地域間のデジタル・ディバイド
チャットのトラブル
女の子の積極的な行動
「出会い系」
コミュニケーションが回復した事例
ケータイ依存、ネット依存
４章 学校が教えられないネット世界
増加するトラブル
フィルタリングソフトの現状 ほか
子どもに向いた検索エンジン
英米の取り組み
日本での活動（ＮＥＣ、まなびばネット）
悪いのは学校か、家庭か
国の情報化政策が見落としたこと
教師間に世代格差？
規制と監視のゆくえ
「インターネットは何でもあり」
提言 王子と姫を護るヒント
ジャーナリスト・森健の提言
精神科医・香山リカの提言
その昔、ケータイがない時代もあったという───あとがきに代えて（香山リカ）
謝辞（森兼）
表１ 各国のメディア・シテラシー教育の特色
表２ 総務省作成の子ども向け「インターネット利用の約束ごと」
ほぼこの本も電車の中と、そしてパソコンの前で何かのときに読んでいました。
第４章の「悪いのは学校か、家庭か」に、次のようなことが書いてありました。
「友だち同士で構成されるウェブ上の交換日記で、けんかのようなことが起きるとまずいからやめたほうがいい、というわけです。おかしいと思うのは、それを親が子どもに言うのではなく、親が学校にお願いして『学校側から禁止してくれ』と言っていること。危険があるから禁止という強直的な考え方もおかしいですが、そうした指針を親が直接子どもに指導するのではなく、学校を通して強圧的に規制を要請するのもまたおかしい。それは親が学校に責任を押し付けているだけにすぎないと思うのです」（世田谷まなびばネットの坂部美恵さんの言葉）
まったく何でも学校に押し付けてしまうから、学校の先生方のやることはただただ増えているばかりです。でも私はパソコンとインターネットはまずは家庭で教えるべきです。もちろん、学校でも個々の教員が使えるのはもはや当たり前だと思います。そうなってからこそ、生徒もその親も教師も話し合うことができるのだと私は思っています。
私は小学校でも「パソコン」という教科と言っていい授業が必要だと思います。私の娘の中学のときに、この「パソコン」の授業があって、そのテストというのを娘に聞いたことがあります。私は「こんなテストできる奴がいるのか？」と大変に疑問でした。「こんなことは知らなくてもいい。ただパソコンが使えればいいんだ」と言いましたが、私の娘も私と同じに考えていましたが、そんなテストでも満点をとる子がいたようです。
そんな時が今から１８、９年前のことです。そのときから、学校は少しも進歩していないように思えてしまいます。ただ実際の学校では、私のホームページやブログを見てくれている先生方がいます。教育委員会の方でも私のブログを見て、メールをくれた方もいました。もう事実は大きく変化してきているのです。
ただ、そういう先生方も、私と直接会ったときに「私はメールはパソコンでしかやりません。携帯のメールはだめです」なんていうのを、私は「それは、字がこの日本に入ってきたときに、『私は字は使いません』と言った大和時代の人と同じです。そんな人はみな滅びました」と言ったら、すぐに「私もケータイメールを使ってみます」と言ってくれたものでした。
でもこの本を読んでいても、今後の日本が心配になります。今後はちゃんんと親たちも学校でもパソコンもインターネットもケータイも教えるべきだと思っても、今のままの現状が進んでいくとしか思えません。できたら、小中学ということではなく、大学で、そかも教員になる学部のあるところでこそ、このパソコン・インターネット・ケータイのことをしっかりと学んでほしいものです。そこでちゃんと学んだ若者が教員として、また子どもたちと接していくわけです。
ただ不安なのですね。私が接してきた大学や大学の教員等は、ほぼパソコン・インターネット・ケータイが駄目だ、不得意という方ばかりな気がします。「情報学部」というところでも、もう驚くほど判っていない方が実際に授業をしているのです。そういうところの教授という方の作られているホームページを拝見したことがありますが、もう目をおおいたくなるばかりでした。
パソコンというのは、もう「理科系」の方が強いものではけっしてないのです。そんなことも判らないかたが、たくさんいます。
そんなことを思いながら、この本を読み終えました。もう今では、この本の内容よりも、さらにパソコンもインターネットもケータイも先に進んでいます。
