もう的矢六兵衛の座り続けるのは終りになるのかなあ、と思っていましたが、そうはならないようです。
鰻を平げると、六兵衛は膝ひとつにじり下がって、深々と頭を垂れた。
大村益次郎がやったことかなあ、そして加倉井隼人がよくやったよと思ったものでしたが、これでは終わらないようなのです。
六兵衛は立ち上がった。その面ざしは晴れがましく、いかにも一事を成し遂げた快哉をたたえているように見受けられた。人々は喝采を惜しまなかった。
だがだが、六兵衛はどうみても城を去るのではなく、違う方向へ行くのです。
「こら、六兵衛。そっちではない、奥に向こうてどうする」
何ひとつ迷わぬそぶりで、六兵衛は御中庭の北から御入側へと足を進める。・・・・・・。
これでまだこの物語は続くのです。江戸は東京となり、時代は明治になるのですが、六兵衛はどうするのでしょうか。