将門Ｗｅｂ

周が日々仕事であちこち歩いたり、友人や家族と話した中で感じたことを発信しています。

Tag：宮本武蔵

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　２０日の「周の発言」を英訳しようとしてやりましたが、途中で挫折しまして、半端なまま「Shu's opinion」にＵＰしました。だって時間がかかるんだよなあ。
　このところ、土日もなんやかやと用があります。２０日（土）は、港区のクライアントへ行きまして、そのあと浅草で打合せでした。浅草はちょうど三社祭りで、雨の中、たくさんの浅草っ子が神輿をかついでいました。いつも思うのですが、祭りのときの女性って綺麗ですね。いつも見とれてしまいます。
　ただ、私はまた飲み始めまして、そしてまた飲み続けました。「駒形」でどぜうで飲みました。実にひさしぶりだったなあ。私はどちらかというと、西浅草の「飯田屋」のほうのどぜうのほうが好きなのですが、ひさしぶりの「駒形」も良かったな。
　どじょうで飲むときに、いつも「宮本武蔵」で、武蔵が養子になる伊織と最初に会うシーンを思い出します。
　どじょうをたくさん捕まえている少年に、武蔵が、

　　そのどじょうを少し、おじさんにもわけてくれないか。

というと、その少年は、

　　おじさんにみんなあげるよ

と言っては走って行ってしまいます。そしてその晩、偶然に武蔵はこの少年の家に泊まります。そしてその夜、武蔵はその少年が刀をといでいる音で目をさまします………………。
　でも武蔵は、旅の空の下、どうやってどじょうを食べたのかな。焼いたのかな？　煮たのだとしたら、味つけはどうしたのだろう。
　この「駒形」で私は女性と飲んでいたのですが、どじょうというのは、なんだか私は女性と飲むのに向いている気がしますね。男同士だと、もうもっと悲惨なもので飲んでいるのが似つかわしい。どじょう鍋のゆげのあちらにある女性の顔をときどき見ながら飲む酒は実にいいですね。
　まあ、思えば、私は酒なら、なんでもいいのです。でも男同士だと、もう面倒だから、どうせいつもの店でいいやとなりますが、相手がうら若き美女だと、ちゃんと店を考えるから、これがまたいいのだな。
　でも私は、そのあと行きましたお店で、一体何を唄ったか覚えていません。
　（これは英訳しません。だって、もう仕事をしなくちゃね）（05月22日 5時54分）

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#どじょうと女性と酒と
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#武蔵が養子になる伊織と

11082910　さて、

７たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと（1992.10.15）

で引続きやっている件ですが、その後なんの返事もないため、いくらなんでもどうしたのだろうと、本日午後３時５５分頃毎日新聞学芸部桐原良光さん宛電話しました。

　以下その内容です。

　私　「桐原さんお願いしたいんですが」
　桐原「はい桐原ですが」
　私　「前にですね、２回ほどお手紙さしあげた者なんですが、井
　　　上ひさしさんの宮本武蔵の件で、１度お電話頂きまして、そ
　　　のあと１０月１５日にまたお手紙さしあげたんですけれども」
　桐原「あの件はネ、井上ひさしさんがネ、あらためて武蔵を読み
　　　直してみたいとおっしゃっているんですがね。ところがちょっ
　　　と時間がネなくてなかなかお返事ができるまでに到っていな
　　　いです」
　私　「はあ、そうですか」
　桐原「もうちょっとしばらくお待ちいただきたい」
　私　「そうですかでは分かりました、もう少し待ってますので」

というようなことで、まだ時間がかかりそうですね。しかし、これで井上ひさしさんはあの記事の前には吉川英治「宮本武蔵」は読み直してはいないんですね。それで喋ってしまうんですね。恐ろしいことだ。私は「周の書評」の場合も必ず読み直しますがね。吉本（吉本隆明）さんなんか、こんな姿勢と比べると驚くべきことをやっていますよ。先日の講演会の内容を私が未だ報告できていないのは、吉本さんがあげた数々の現代文学作品のそのひとつも私が読んでいないからです。少々恥ずかしくて。吉本さんはちゃんとやっていますよ。まあ、吉本さんと比較しては井上ひさしがかわいそうかな。
　それと吉川英治のことどうでもいいんでしょうね。そんならあんな文書いてほしくないな。井上ひさしをちゃんと読んでいる人がいるんですよ。もうこのままいいかげんなことやったら、必ず彼の読者は減りますよ。だってもう私がそのことに情熱かけちゃうもの。

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#井上ひさし
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#毎日新聞の学芸部
#桐原良光

11082803６たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと（1992.10.14）

  本日３時半ころ私の事務所に、毎日新聞学芸部の桐原さんから電話がありました。

の正確な内容です。

　　毎日新聞学芸部の桐原と申します。「宮本武蔵」の件なんです
　が、ただいま井上ひさし氏からＦＡＸがはいりまして、「宮本武
　蔵」の後半の「法典野原」で伊織という少年がそれを、麻の実を
　跳ぶシーンがあるそうで、井上氏はそのへんから浮かべているよ
　うであります。
　　また改めてご連絡申し上げます。

ということでした。「法典ケ原」ではなくどうしても「法典野原」と聞こえます。
　さてそれで私はまた書留にて以下の文書を送りました。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　１９９２年１０月１５日
毎日新聞社学芸部
桐 原  良 光  様
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ここに私の住所会社電話
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ここに自宅の住所電話
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　萩 原 周 二
　前略
　昨日はお電話いただきありがとうございました。ちょうどクライアント
で打ち合せ中だったもので、たいへん失礼いたしました。
　早速ですが、昨日頂いた電話の内容は、

　　毎日新聞学芸部の桐原と申します。「宮本武蔵」の件なんです
  が、ただいま井上ひさし氏からＦＡＸがはいりまして、「宮本武
  蔵」の後半の「法典野原」で伊織という少年がそれを、麻の実を
  跳ぶシーンがあるそうで、井上氏はそのへんから浮かべているよ
  うであります。
　　また改めてご連絡申し上げます。

ということでした。それで私は、「へーッ、そんなところあったかな」と
思い、あったら、井上ひさしさんならびに桐原さんに謝らないとと考えま
した。それでまた「宮本武蔵」を調べてみました。
　ところがいくら読みすすんでも、こんな章を見つけることができないの
です。それで、この井上ひさしさんがおっしゃっていることは、いろいろ
探した結果、以下ではないのでしょうか。

　「空の巻」の「通夜童子」という章の最初に

　　そこは下総行徳村からざっと一里程ある寒村だった。いや村と
  いうほどな戸数もない。一面に篠や葦や雑木の生えている荒野で
  あった。里の者は、法典ケ原といっている。

とあります。ここのことではないでしょうか。これは今の船橋市の武蔵野
線船橋法典駅あたりのことだと思いますが、ここで初めて武蔵は伊織と会
います。
　でもとにかく前のお送りしました文書のとおり、

　　作中、武蔵が弟子（伊織だったと思いますが）に麻の実を蒔い
  てその上を毎日飛ぶようにと命じる部分があります

という部分はこの「空の卷」にはないのです。いや私が読んだ限り吉川英
治「宮本武蔵」の中にはありません。どうみてもこれは、井上ひさしさん
が、吉川英治「天兵童子」の中のシーンを「宮本武蔵」の話と勘違いして
いるものとしてしか思えません。できましたら、「宮本武蔵」ならびに
「天兵童子」を読み比べていただけないでしょうか。
　再度申しあげます。間違いが確認できるのであれば、貴紙の紙面上にて
訂正解説をお願いします。
　なお桐原さまにはたいへんご面倒をおかけします。ただ私は吉川英治も
井上ひさしさんも好きな作家であるものですから、話をすっきりしたいと
思っているのです。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　早　々

　さてこの結果はどうなるでしょうか。しかし今回は最初から書留郵便にしたのがよかったようです。証拠が残りますからね。まさか最初から内容証明（配達証明つき）では驚いてしまうでしょうから。
　何をどうでもいいことしつこくやっているのだろうと思われる人もいるかと思います。しかし、私はかなり大切なことだと思うのですね。「やるべきときはやる」ではなく、「いまがやるときなのです」といつも考えているからです。吉川英治のことですから、あまり実生活には関係ないといえるかと思いますが、これが、税金のこととか、政治上のこととかだと問題となるかと思います。私にはどちらだって同じなのですよ。
　昨日会った私の親友が、打ち合せのあと少し飲んだとき、金丸のことで、朝のテレビ番組（生島ヒロシが司会やっているといっていた）へ、札幌から３０分抗議の電話したと言っていた。それは、アントニオ猪木が「金丸やめろ」ということで、テレビで「猪木さんはさすがだ」というようなことをやっていたので、思わず、猪木の狡さと、マスコミのいいかげんさに腹がたって仕方なかったのだという。本当にそうですよ。私も今回では、猪木のような人間があまりに多いので頭に血がのぼります。まずその場で抗議することです。その場で阻止することです。
　しかし彼がそうして抗議したって、何にも載らないわけですね。彼の怒りは、私と同じでしかもかなりな確信がある内容なのです。まあ私がやりますかね。彼も私も自民党がいけないとか、社会党もいけないとかいうことには、興味のない人間です。でも今回のように現れてくる、ひどい対応、くさつた大勢翼賛の匂には我慢なりません。
　ここは宮本武蔵の話ですから、ここまでにしておきましょうか。

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11082720　本日３時半ころ私の事務所に、毎日新聞学芸部の桐原さんから電話がありました。ただ私はクライアントで打ち合わせ中で、外出していましたので、そとから留守録を聞く形しかできませんでした。仕事が遅くなり、直帰しましたので、正確な留守録を再現するのは明日にならないと無理ですが、とにかくこのような内容です。

　「宮本武蔵のことですが、きょう井上ひさしさんからＦＡＸが入っ
  てきて、あれは、『宮本武蔵』の後半の『法典ケ原』という章で
  伊織というこどもとのことからとった、ということです。また連
  絡します」

　なるほどそうか、でもそんなシーンあったかなと思いながら、もしあったら私の方が井上ひさしさんにあやまろうと考えました。
　さて自宅に帰ってきて、今は「宮本武蔵」が借りっぱなしですから、酒飲みながら、この章さがしました。しかしどこにも見当らないのですね。いろいろ探した結果、以下ではないでしょうか。
　「空の巻」の「通夜童子」という章の最初に

　　そこは下総行徳村からざっと一里程ある寒村だった。いや村と
  いうほどな戸数もない。一面に篠や葦や雑木の生えている荒野で
  あった。里の者は、法典ケ原といっている。

とありますが、ここのことではないでしょうか。ここで初めて武蔵は伊織と会います。しかし、

４たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと（1992.10.06）

と、毎日新聞学芸部への手紙で書いたように、やはり「宮本武蔵」にはありませんよ。さあ、どうするのですかね。
　私しゃ、「宮本武蔵」全部打たなきゃ駄目かななんて思っていましたが、またこれで、毎日新聞学芸部当ってみます。
　まだまだ続きそうですね。

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11082713　さて、しつこい周は

４たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと（1992.10.06）

のあと、やはりきちんと井上ひさしさん並びに毎日新聞学芸部へ連絡するべきだと思い、以下の文書を書留にて送付しました。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　１９９２年１０月８日
毎日新聞社学芸部
桐 原  良 光  様
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ここに私の住所会社電話
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ここに自宅の住所電話
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　萩 原 周 二
　前略
　突然おたよりさしあげます。私は永年貴紙を愛読しているものです。９月
２８日（月）の夕刊６面の「文化　批評と表現」の

［ひさし響談］井上ひさし　「居座る」吉川英治、生誕百年「武蔵」の理
想に思い

の文面中疑問がありましたもので、こうして文書を差し上げる次第で
す。

　　　いずれにしても、わたしたちの吉川武蔵への傾倒ぶりといったらた
    いへんなもので、たとえば作中、武蔵が弟子（伊織だったと思いま
   すが）に麻の実を蒔いてその上を毎日飛ぶようにと命じる部分があ
   りますが、わたしたちはみんな、自分たちもそう命じられたような錯
   覚に陥って、てんでに裏の畑に麻を蒔きました。蒔いてどうするの
   かいうと、毎朝その上を跳ぶ。
  　　麻は成長が早く丈も高く伸びますから、その上を跳んでいれば自
   然に「天狗飛切の術」が会得できるはずでしたが、たいていの子は
   夏休み前に断念していました。そのころ麻は背丈ほどにもなります
   からこれはもう走り高跳びの選手でなければ跳べません。そこで泣
   く泣く剣客の道を諦めるわけですが、こんなふうに吉川武蔵の影響
   は大でした。

　以上のところなのですが、私はこんなシーンが「宮本武蔵」にあったか
な、これは同じ吉川英治の「天兵童子」ではないのかと思い、調べてみ
ました。そうすると、「宮本武蔵」の「円明の巻」の「麻の胚子」という章
で、柳生兵庫が丑之助という百姓の子が剣道を習いたいというのを、
道場で教え、丑之助が兵庫の肩のうえを跳び越えるのをみて、そのわ
けを聞くところにあります。

　　「ふゥむ？　……麻の胚子でか」
　　「あ、春先、麻の胚子を蒔くんだよ。すると、土から青い芽がそろっ
　て出て来るがな」
　　「それをどうするのか」
　　「跳ぶのさ−毎日毎日、麻の芽を跳ぶのが修行だよ。あたたかくなっ
　て、伸び出すと、麻ほど伸びの早いものはないだろ。それを朝に跳び、
　晩に跳びしていると──麻も一尺、二尺、三尺、四尺とぐんぐん伸びて
　行くから、怠けていたら、人間の勉強の方が負けて、しまいには跳び
　越えられないほど高くなってしまう……」

　しかしこれは井上ひさしさんのいう内容とはかなり違います。丑之助は
誰かに命じられて、これをやったわけではありません。まして武蔵は関
係ありません。次に「天兵童子」も調べてみました。そうすると、これは
「天兵童子」の「地に蒔く麻の実」と「知らずや天兵」という章に次のよう
にありました。
　天兵が石見街道の茶店で、ある浪人者に会い、その弟子になろうと
します。この浪人は南木菩提次という、羽柴秀吉の部下の武将です。
この浪人が麻の実を蒔いて、その上を１２０日間跳びこえろといいま
す。

　　　　　　地に蒔く麻の実
　　　浪人者は、畑の土を足でならした。そして掌（てのひら）の中にに
　　ぎっている麻の実で、大きな一の字を書くように、ばらばらと土へそ
　　れを蒔いてから、また足で土をうすくかぶせた。
　　（中略）
　　　　　知らずや天兵
　　　大地に蒔かれた麻の実は、いく日かたつと、青い芽をふいた。一
　　センチ──二センチ──と、その芽は背を伸ばす。
　　（中略）
　　二メートル近くになると、一センチ伸びても、とぶ困難ははなはだ
　　しく増してくる。──しかし、芽生のうちからまいにち修練していたの
　　で、二ートルになってもとべた。三メートルになってもとぶことがで
　　きた。
　　「おいおい、あの小僧は天狗の子じゃないか。あんな高い麻をとび
　　こえるぞ。──何百ぺんでも麻の葉にさわらないでとびこえるぞよ」

　やはり井上ひさしさんの文は、「宮本武蔵」ではなく「天兵童子」のほ
うではないでしょうか。井上ひさしさんとその友達たちは、これを読んで
真似したのだと思います。
　となると、これは井上さんの勘違いなのでしょうか。しかし、これはか
なりな核心の部分だと思います。ほとんど全編「宮本武蔵」のことで展
開されていますから、この勘違いはかなり致命的な誤謬だと思います。
また、貴紙学芸部としてもこれを校閲で正せなかったものなのでしょう
か。
　どうか納得のいくご返事をいただきたく思います。そして間違いが確
認できるのであれば、紙面上にて訂正解説をお願いしたく思います。
　私普段は事務所におりますので、連絡等はお茶の水の事務所まで
お願いいたします。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　早　々

それで本日不十分な形ですが、電話にて返事がありました。それは次回
ＵＰ分です。

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#宮本武蔵
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#毎日新聞の学芸部
#桐原良光

11082701　本当に周はしつこいですね。とうとう「天兵童子」から、問題の箇所みつけました。さて、これはどうしたものでしょうね。毎日新聞の学芸部に教えてあげるべきかな。
　これは「天兵童子」の「地に蒔く麻の実」と「知らずや天兵」という章にあります。天兵は石見街道の茶店で、ある浪人者に会い、その弟子になろうとします。この浪人は南木菩提次という、羽柴秀吉の部下の武将です。この浪人が麻の実を蒔いて、その上を１２０日間跳びこえろといいます。

　　　　　地に蒔く麻の実
　　浪人者は、畑の土を足でならした。そして掌（てのひら）の中
　ににぎっている麻の実で、大きな一の字を書くように、ばらばら
　と土へそれを蒔いてから、また足で土をうすくかぶせた。
　　（中略）
　　　　　知らずや天兵
　　大地に蒔かれた麻の実は、いく日かたつと、青い芽をふいた。
　一センチ───二センチ───と、その芽は背を伸ばす。
　　（中略）
　　二メートル近くになると、一センチ伸びても、とぶ困難ははな
　はだしく増してくる。───しかし、芽生のうちからまいにち修
　練していたので、二メートルになってもとべた。三メートルになっ
　てもとぶことができた。
　「おいおい、あの小僧は天狗の子じゃないか。あんな高い麻をと
　びこえるぞ。───何百ぺんでも麻の葉にさわらないでとびこえ
　るぞよ」

　こうして１２０日を終るころには、天兵はなんと五メートルも跳べるようになります。
　さてさて、これで９月２８日毎日新聞夕刊にて、

［ひさし響談］井上ひさし　「居座る」吉川英治、生誕百年「武蔵」の理想に思い

にあるこの文

　　いずれにしても、わたしたちの吉川武蔵への傾倒ぶりといった
　らたいへんなもので、たとえば作中、武蔵が弟子（伊織だったと
　思いますが）に麻の実を蒔（ま）いてその上を毎日跳ぶようにと
　命じる場面がありますが、わたしたちはみんな、自分たちもそう
　命じられたような錯覚に陥って、てんでに裏の畑に麻を蒔きまし
　た。蒔いてどうするかというと、毎朝その上を跳ぶ。麻は成長が
　早く丈も高く伸びますから、その上を跳んでいれば自然に「天狗
　飛切の術」が会得できるはずでしたが、たいていの子は夏休み前
　に断念していました。そのころ麻は背丈ほどにもなりますからこ
　れはもう走り高跳びの選手でもなければ跳べません。そこでみん
　な泣く泣く剣客の道を諦（あきら）めるわけですが、こんなふう
　に吉川武蔵の影響は大でした。

は、まさしく「宮本武蔵」ではなく「天兵童子」の中のシーンなのです。井上ひさしならびにその友達たちは、これを読んで真似したのだと思います。間違いないでしょう。それなのに何故井上ひさしはこんな勘違いをしてしまうのでしょうか。文章を書くものとして、まず調べ確認しないのでしょうか。
　そして、毎日新聞は、毎日新聞学芸部は、何故こんなミスをそのまま載せてしまうのでしょうか。校閲はしないのでしょうか。
　どうして、周はこんなにしつこいのでしょうか。それは、私たちのような市井のものの飲み屋での馬鹿話ならいいのです。これは全国紙で、読む人がたくさんいるんですよ。何故新聞として、このようなミスが防げないのでしょうか。私だって、このネットにＵＰする内容で使う資料は確認しますよ。自信のないことは、かならずその旨を書きます。私は悲しいのですよ。こんなのが日本の文化なのですか。これが井上ひさしなのですか。
　私はこれだけの資料を調べるのにも、手間がかかりました。「天兵童子」は我孫子図書館にはないし、本屋でも講談社の「吉川英治全集」はおいてありません。でも私と違って、新聞社はさまざま資料を引き出せる能力があるんではないですか。私が足で調べた資料よりも、もっと確かなのがたくさん蓄積されているのじゃないでしょうか。私は本当に悲しいんですよ。
　私は新聞社にしろ、大学にしろ、もっとさまざまな資料を私たちに提供してほしいですね。それが文化なんですよ。
　周のしつこい結末でした。でも、これを教えてあげるべきかな。また消費税のときみたいに、

（これは毎日新聞の社説で消費税の簡易課税のことで書いてあることで、「これはどうみても誤りなんじゃない」という電話内容です。これまた記録はあります）

「文句をいってきたのはあなただけ、だからまちがいとはいえない」なんていわれちゃうかな（92-10-06 20:46:59）

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井上ひさし「宮本武蔵」のこと（1992.09.29）

で述べたことの続報です。周はしつこいですね。「宮本武蔵」借りてきまして、調べるつもりが、ついつい読み耽ってしまいました。さて、

11082503私はこの文に書いてある、伊織と武蔵のシーンは「宮本武蔵」にはなかったと思います。なんでこんな勘違いするのかな。これは同じ吉川英治の「天兵童子」の中の話なはずです。

と書いた件ですが、「宮本武蔵」の中にこの記述はありました。ただし、これはまず武蔵と伊織の話ではありません。まして「天狗跳切の術」という言葉は出てきません。これは「宮本武蔵」の「円明の巻」の「麻の胚子」という章で、柳生兵庫が丑之助という百姓の子が剣道を習いたいというのを、道場で教え、丑之助が兵庫の肩のうえを跳び越えるのをみて、そのわけを聞くところにあります。

　「ふゥむ？　……麻の胚子でか」
　「あ、春先、麻の胚子を蒔くんだよ。すると、土から青い芽がそ
　ろって出て来るがな」
　「それをどうするのか」
　「跳ぶのさ−毎日毎日、麻の芽を跳ぶのが修行だよ。あたたかく
　なって、伸び出すと、麻ほど伸びの早いものはないだろ。それを
　朝に跳び、晩に跳びしていると──麻も一尺、二尺、三尺、四尺
　とぐんぐん伸びて行くから、怠けていたら、人間の勉強の方が負
　けて、しまいには跳び越えられないほど高くなってしまう……」

　結局、「宮本武蔵」の中にこれがあったわけです。私の記憶にはありませんでした。あとは「天兵童子」を調べたいのですが、どうしようかな。どこにいけば手にはいるかな。我孫子の図書館はあてにならないし。でもそれではっきりすると思います。
　また何とか調べてみます。（92-10-03 04:20:57）

４たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと（1992.10.06） へ

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#柳生兵庫
#天兵童子

11082409井上ひさしが吉川英治「宮本武蔵」のこと（1992.09.28）

のことですが、やっぱりちゃんといおうと思います。昨日は新聞を書き写すのが面倒になってしまったのです。私はもっていないので、確認できないのですが、できましたら、「宮本武蔵」を持っている方、調べていただければありがたいのです。私はこの文に書いてある、伊織と武蔵のシーンは「宮本武蔵」にはなかったと思います。なんでこんな勘違いするのかな。これは同じ吉川英治の「天兵童子」の中の話なはずです。

　　いずれにしても、わたしたちの吉川武蔵への傾倒ぶりといった
　らたいへんなもので、たとえば作中、武蔵が弟子（伊織だったと
　思いますが）に麻の実を蒔いてその上を毎日飛ぶようにと命じる
　部分がありますが、わたしたちはみんな、自分たちもそう命じら
　れたような錯覚に陥って、てんでに裏の畑に麻を蒔きました。蒔
　いてどうするのかいうと、毎朝その上を跳ぶ。麻は成長が早く丈
　も高く伸びますから、その上を跳んでいれば自然に「天狗飛切の
　術」が会得できるはずでしたが、たいていの子は夏休み前に断念
　していました。そのころ麻は背丈ほどにもなりますからこれはも
　う走り高跳びの選手でなければ跳べません。そこで泣く泣く剣客
　の道を諦めるわけですが、こんなふうに吉川武蔵の影響は大でし
　た。

　たぶん井上ひさしさんは、昔紙芝居か、少年雑誌で読んだり見た「天兵童子」が記憶にあり、それを「宮本武蔵」の伊織と武蔵の姿と思い込んでしまったのではないのでしょうか。しかし、これはこの文の中でかなりな核心の部分ですよ。例え記者の問に答える形としても、なんでこんなこと調べもしないでそのまま載せてしまうのかな。いや私はまず井上ひさしを問題にしているのです。すくなくとも井上ひさしは日本の大作家でしょう。こんなのでいいのですか。なんだか日本の作家の水準が疑われますよ。また毎日の文芸の記者も、すくなくとも「宮本武蔵」は読んでいるのだろうから、その場で指摘できないのがおかしい。そうすれば、大作家に恥をかかせないですむのです。
　いや恥をかくのは私かもしれません。誰かご自宅に「宮本武蔵」もっていたら、調べてもらえませんか。私もいつか調べますが、きょうのきょうにはどうにもならないのです。やはり「どうでもいいこと」ではなく、すこし憤りました。だって、大新聞に大きく堂々とのっているんだから。吉川英治と文学をなめられたような気がしたもので。

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#天狗飛切の術

11082209　さきほど毎日新聞の夕刊の「井上ひさし郷談−生誕（吉川英治）百年『武蔵』の理想に思い」を読んでいたら、なんだこれはというところがあって、酔いもあり、書き始めました。「なんだこれ違うんじゃないか」ということなんですね。でも書くうちに、もうどうでもいいかという気になりました。あちこち、いろいろやっていたらきりがないですね。（92-09-28 23:45:47）

井上ひさし「宮本武蔵」のこと（1992.09.29） へ
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#宮本武蔵

11020512　私はこれを中学２年のときに徳間書店の本で読みました。「地の巻」「水の巻」「火の巻」「風の巻」「空の巻」になっていまして、ものすごく短い内容です。
　そしてこれを武蔵は、剣術上達の書物ではなく、兵法（へいほう、あるいはひょうほう）の本だと言いたいようです。そして一人の人間が十人の人間を倒せたら、一万人の軍勢で十万人の敵軍を破ることができると言っています。
　私はもうそのときに、「これは馬鹿じゃなかろうか」と思ったものです。それなら、世の中に兵法家も軍事の専門家もいません。
　だから結局は、江戸時代の最初に武蔵は幕府の指南役にもなれません。きっとなれるだろうと思いこんでいた熊本の細川藩でも雇ってはくれません。
　仕方がないのです。もう戦国の時代は島原の乱で終了したのです。それには武蔵も息子の伊織（実は養子ですが）とともに参加して働いたのです。でもそうした苦労を時代は報いてくれませんでした。
　だから彼は熊本市郊外のある洞穴でこれを書くのです。だが、誰が読んでも「これじゃ雇えないよ」としか思わなかったものでしょう。当たり前のことです。
　たぶん、「これだけの俺をどうしてどこも雇わないのだ」とばかり思っていたことでしょう。
　そして洞穴で寝起きしている武蔵を細川藩は実にうっとおしく感じていたはずです。
　今でも岩波文庫で☆一つで手に入る本です。（2011.02.09）
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#五輪書
#これは馬鹿じゃなかろうか
#戦国の時代は島原の乱で終了
#兵法書

2017070319（92-09-28 23:45:47）井上ひさしが吉川英治「宮本武蔵」のこと
（92-09-29 22:43:08）再び井上ひさし「宮本武蔵」のこと
（92-10-03 04:20:57）３たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと
（92-10-06 20:46:59）４たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと
（92-10-14 23:16:14）５たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと
（92-10-14 23:16:40）６たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと
（92-10-15 19:28:58）７たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと
（92-11-06 21:32:47）８たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと

（92-09-28 23:45:47）井上ひさしが吉川英治「宮本武蔵」のこと

11010609 さきほど毎日新聞の夕刊の「井上ひさし郷談−生誕（吉川英治）百年『武蔵』の理想に思い」を読んでいたら、なんだこれはというところがあって、酔いもあり、書き始めました。「なんだこれ違うんじゃないか」ということなんですね。でも書くうちに、もうどうでもいいかという気になりました。あちこち、いろいろやっていたらきりがないですね。

（92-09-29 22:43:08）再び井上ひさし「宮本武蔵」のこと

『井上ひさしが吉川英治「宮本武蔵」のこと』

のことですが、やっぱりちゃんといおうと思います。昨日は新聞を書き写すのが面倒になってしまったのです。私はもっていないので、確認できないのですが、できましたら、「宮本武蔵」を持っている方、調べていただければありがたいのです。私はこの文に書いてある、伊織と武蔵のシーンは「宮本武蔵」にはなかったと思います。なんでこんな勘違いするのかな。これは同じ吉川英治の「天兵童子」の中の話なはずです。

いずれにしても、わたしたちの吉川武蔵への傾倒ぶりといったら
  たいへんなもので、たとえば作中、武蔵が弟子（伊織だったと思い
  ますが）に麻の実を蒔いてその上を毎日飛ぶようにと命じる部分が
  ありますが、わたしたちはみんな、自分たちもそう命じられたよう
  な錯覚に陥って、てんでに裏の畑に麻を蒔きました。蒔いてどうす
  るのかいうと、毎朝その上を跳ぶ。麻は成長が早く丈も高く伸びま
  すから、その上を跳んでいれば自然に「天狗飛切の術」が会得
  できるはずでしたが、たいていの子は夏休み前に断念していま
  した。そのころ麻は背丈ほどにもなりますからこれはもう走り高
  跳びの選手でなければ跳べません。そこで泣く泣く剣客の道を
  諦めるわけですが、こんなふうに吉川武蔵の影響は大でした。

たぶん井上ひさしさんは、昔紙芝居か、少年雑誌で読んだり見た「天兵童子」が記憶にあり、それを「宮本武蔵」の伊織と武蔵の姿と思い込んでしまったのではないのでしょうか。しかし、これはこの文の中でかなりな核心の部分ですよ。例え記者の問に答える形としても、なんでこんなこと調べもしないでそのまま載せてしまうのかな。いや私はまず井上ひさしを問題にしているのです。すくなくとも井上ひさしは日本の大作家でしょう。こんなのでいいのですか。なんだか日本の作家の水準が疑われますよ。また毎日の文芸の記者も、すくなくとも「宮本武蔵」は読んでいるのだろうから、その場で指摘できないのがおかしい。そうすれば、大作家に恥をかかせないですむのです。
いや恥をかくのは私かもしれません。誰かご自宅に「宮本武蔵」もっていたら、調べてもらえませんか。私もいつか調べますが、きょうのきょうにはどうにもならないのです。やはり「どうでもいいこと」ではなく、すこし憤りました。だって、大新聞に大きく堂々とのっているんだから。吉川英治と文学をなめられたような気がしたもので。

（92-10-03 04:20:57）３たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと

（92-09-29 22:43:08）再び井上ひさし「宮本武蔵」のこと
で述べたことの続報です。周はしつこいですね。「宮本武蔵」借りてきまして、調べるつもりが、ついつい読み耽ってしまいました。さて、

私はこの文に書いてある、伊織と武蔵のシーンは「宮本武蔵」にはなかっ
たと思います。なんでこんな勘違いするのかな。これは同じ吉川英治の
「天兵童子」の中の話なはずです。

と書いた件ですが、「宮本武蔵」の中にこの記述はありました。ただし、これはまず武蔵と伊織の話ではありません。まして「天狗跳切の術」という言葉は出てきません。これは「宮本武蔵」の「円明の巻」の「麻の胚子」という章で、柳生兵庫が丑之助という百姓の子が剣道を習いたいというのを、道場で教え、丑之助が兵庫の肩のうえを跳び越えるのをみて、そのわけを聞くところにあります。

「ふゥむ？　……麻の胚子でか」
「あ、春先、麻の胚子を蒔くんだよ。すると、土から青い芽がそろっ
て出て来るがな」
「それをどうするのか」
「跳ぶのさ−毎日毎日、麻の芽を跳ぶのが修行だよ。あたたかくなっ
て、伸び出すと、麻ほど伸びの早いものはないだろ。それを朝に跳び、
晩に跳びしていると──麻も一尺、二尺、三尺、四尺とぐんぐん伸び
て行くから、怠けていたら、人間の勉強の方が負けて、しまいには跳
び越えられないほど高くなってしまう……」

結局、「宮本武蔵」の中にこれがあったわけです。私の記憶にはありませんでした。あとは「天兵童子」を調べたいのですが、どうしようかな。どこにいけば手にはいるかな。我孫子の図書館はあてにならないし。でもそれではっきりすると思います。
また何とか調べてみます。

（92-10-06 20:46:59）４たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと

本当に周はしつこいですね。とうとう「天兵童子」から、問題の箇所みつけました。さて、これはどうしたものでしょうね。毎日新聞の学芸部に教えてあげるべきかな。
これは「天兵童子」の「地に蒔く麻の実」と「知らずや天兵」という章にあります。天兵は石見街道の茶店で、ある浪人者に会い、その弟子になろうとします。この浪人は南木菩提次という、羽柴秀吉の部下の武将です。この浪人が麻の実を蒔いて、その上を１２０日間跳びこえろといいます。

地に蒔く麻の実
浪人者は、畑の土を足でならした。そして掌（てのひら）の中にに
ぎっている麻の実で、大きな一の字を書くように、ばらばらと土へそ
れを蒔いてから、また足で土をうすくかぶせた。
（中略）
知らずや天兵
大地に蒔かれた麻の実は、いく日かたつと、青い芽をふいた。一セ
ンチ───二センチ───と、その芽は背を伸ばす。
（中略）
二メートル近くになると、一センチ伸びても、とぶ困難ははなはだ
しく増してくる。───しかし、芽生のうちからまいにち修練してい
たので、二メートルになってもとべた。三メートルになってもとぶこ
とができた。
「おいおい、あの小僧は天狗の子じゃないか。あんな高い麻をとびこ
えるぞ。───何百ぺんでも麻の葉にさわらないでとびこえるぞよ」

こうして１２０日を終るころには、天兵はなんと五メートルも跳べるようになります。
さてさて、これで９月２８日毎日新聞夕刊にて、

［ひさし響談］井上ひさし　「居座る」吉川英治、生誕百年「武蔵」の理想に思い

にあるこの文

いずれにしても、わたしたちの吉川武蔵への傾倒ぶりといったらた
いへんなもので、たとえば作中、武蔵が弟子（伊織だったと思います
が）に麻の実を蒔（ま）いてその上を毎日跳ぶようにと命じる場面が
ありますが、わたしたちはみんな、自分たちもそう命じられたような
錯覚に陥って、てんでに裏の畑に麻を蒔きました。蒔いてどうするか
というと、毎朝その上を跳ぶ。麻は成長が早く丈も高く伸びますから、
その上を跳んでいれば自然に「天狗飛切の術」が会得できるはずでし
たが、たいていの子は夏休み前に断念していました。そのころ麻は背
丈ほどにもなりますからこれはもう走り高跳びの選手でもなければ跳
べません。そこでみんな泣く泣く剣客の道を諦（あきら）めるわけで
すが、こんなふうに吉川武蔵の影響は大でした。

は、まさしく「宮本武蔵」ではなく「天兵童子」の中のシーンなのです。井上ひさしならびにその友達たちは、これを読んで真似したのだと思います。間違いないでしょう。それなのに何故井上ひさしはこんな勘違いをしてしまうのでしょうか。文章を書くものとして、まず調べ確認しないのでしょうか。
そして、毎日新聞は、毎日新聞学芸部は、何故こんなミスをそのまま載せてしまうのでしょうか。校閲はしないのでしょうか。
どうして、周はこんなにしつこいのでしょうか。それは、私たちのような市井のものの飲み屋での馬鹿話ならいいのです。これは全国紙で、読む人がたくさんいるんですよ。何故新聞として、このようなミスが防げないのでしょうか。私だって、このネットにＵＰする内容で使う資料は確認しますよ。自信のないことは、かならずその旨を書きます。私は悲しいのですよ。こんなのが日本の文化なのですか。これが井上ひさしなのですか。
私はこれだけの資料を調べるのにも、手間がかかりました。「天兵童子」は我孫子図書館にはないし、本屋でも講談社の「吉川英治全集」はおいてありません。でも私と違って、新聞社はさまざま資料を引き出せる能力があるんではないですか。私が足で調べた資料よりも、もっと確かなのがたくさん蓄積されているのじゃないでしょうか。私は本当に悲しいんですよ。
私は新聞社にしろ、大学にしろ、もっとさまざまな資料を私たちに提供してほしいですね。それが文化なんですよ。
周のしつこい結末でした。でも、これを教えてあげるべきかな。また消費税のときみたいに、

（これは毎日新聞の社説で消費税の簡易課税のことで書いてあることで、「これはどうみても誤りなんじゃない」という電話内容です。これまた記録はあります）

「文句をいってきたのはあなただけ、だからまちがいとはいえない」なんていわれちゃうかな。

（92-10-14 23:16:14）５たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと

さて、しつこい周は

（92-10-06 20:46:59）４たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと

のあと、やはりきちんと井上ひさしさん並びに毎日新聞学芸部へ連絡するべきだと思い、以下の文書を書留にて送付しました。

１９９２年１０月８日
毎日新聞社学芸部
Ｋ　Ｒ    様
 　　　　　　　　　　　　〒101 東京都千代田区神田駿河台2丁目1番19号
株式会社私の会社名
Phone03-3291-8828�� Fax03-3291-4786
ここに自宅の住所電話
  　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　萩 原 周 二
前略
突然おたよりさしあげます。私は永年貴紙を愛読しているものです。９
月２８日（月）の夕刊６面の「文化　批評と表現」の

［ひさし響談］井上ひさし　「居座る」吉川英治、生誕百年「武蔵」の理
想に思い

の文面中疑問がありましたもので、こうして文書を差し上げる次第です。

  　いずれにしても、わたしたちの吉川武蔵への傾倒ぶりといったらた
  いへんなもので、たとえば作中、武蔵が弟子（伊織だったと思います
  が）に麻の実を蒔いてその上を毎日飛ぶようにと命じる部分がありま
  すが、わたしたちはみんな、自分たちもそう命じられたような錯覚に
  陥って、てんでに裏の畑に麻を蒔きました。蒔いてどうするのかいう
  と、毎朝その上を跳ぶ。麻は成長が早く丈も高く伸びますから、その
  上を跳んでいれば自然に「天狗飛切の術」が会得できるはずでしたが、
  たいていの子は夏休み前に断念していました。そのころ麻は背丈ほど
  にもなりますからこれはもう走り高跳びの選手でなければ跳べません。
  そこで泣く泣く剣客の道を諦めるわけですが、こんなふうに吉川武蔵
  の影響は大でした。

以上のところなのですが、私はこんなシーンが「宮本武蔵」にあったか
な、これは同じ吉川英治の「天兵童子」ではないのかと思い、調べてみま
した。そうすると、「宮本武蔵」の「円明の巻」の「麻の胚子」という章
で、柳生兵庫が丑之助という百姓の子が剣道を習いたいというのを、道場
で教え、丑之助が兵庫の肩のうえを跳び越えるのをみて、そのわけを聞く
ところにあります。

「ふゥむ？　……麻の胚子でか」
「あ、春先、麻の胚子を蒔くんだよ。すると、土から青い芽がそろって
  出て来るがな」
「それをどうするのか」
「跳ぶのさ−毎日毎日、麻の芽を跳ぶのが修行だよ。あたたかくなって、
伸び出すと、麻ほど伸びの早いものはないだろ。それを朝に跳び、晩に
  跳びしていると──麻も一尺、二尺、三尺、四尺とぐんぐん伸びて行く
  から、怠けていたら、人間の勉強の方が負けて、しまいには跳び越えら
  れないほど高くなってしまう……」

しかしこれは井上ひさしさんのいう内容とはかなり違います。丑之助は
誰かに命じられて、これをやったわけではありません。まして武蔵は関係
ありません。次に「天兵童子」も調べてみました。そうすると、これは
「天兵童子」の「地に蒔く麻の実」と「知らずや天兵」という章に次のよ
うにありました。
天兵が石見街道の茶店で、ある浪人者に会い、その弟子になろうとしま
す。この浪人は南木菩提次という、羽柴秀吉の部下の武将です。この浪人
が麻の実を蒔いて、その上を１２０日間跳びこえろといいます。

地に蒔く麻の実
浪人者は、畑の土を足でならした。そして掌（てのひら）の中ににぎっ
ている麻の実で、大きな一の字を書くように、ばらばらと土へそれを蒔
  いてから、また足で土をうすくかぶせた。
（中略）
知らずや天兵
大地に蒔かれた麻の実は、いく日かたつと、青い芽をふいた。一セン
  チ──二センチ──と、その芽は背を伸ばす。
（中略）
二メートル近くになると、一センチ伸びても、とぶ困難ははなはだしく
  増してくる。──しかし、芽生のうちからまいにち修練していたので、
  二メートルになってもとべた。三メートルになってもとぶことができた。
「おいおい、あの小僧は天狗の子じゃないか。あんな高い麻をとびこえ
るぞ。──何百ぺんでも麻の葉にさわらないでとびこえるぞよ」

やはり井上ひさしさんの文は、「宮本武蔵」ではなく「天兵童子」のほ
うではないでしょうか。井上ひさしさんとその友達たちは、これを読んで
真似したのだと思います。
となると、これは井上さんの勘違いなのでしょうか。しかし、これはか
なりな核心の部分だと思います。ほとんど全編「宮本武蔵」のことで展開
されていますから、この勘違いはかなり致命的な誤謬だと思います。また、
貴紙学芸部としてもこれを校閲で正せなかったものなのでしょうか。
どうか納得のいくご返事をいただきたく思います。そして間違いが確認
できるのであれば、紙面上にて訂正解説をお願いしたく思います。
私普段は事務所におりますので、連絡等はお茶の水の事務所までお願い
いたします。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　早　々

それで本日不十分な形ですが、電話にて返事がありました。それは次回ＵＰ分です。

（92-10-14 23:16:40）６たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと

本日３時半ころ私の事務所に、毎日新聞学芸部のＫＲさんから電話がありました。ただ私はクライアントで打ち合わせ中で、外出していましたので、そとから留守録を聞く形しかできませんでした。仕事が遅くなり、直帰しましたので、正確な留守録を再現するのは明日にならないと無理ですが、とにかくこのような内容です。

「宮本武蔵のことですが、きょう井上ひさしさんからＦＡＸが入って
きて、あれは、『宮本武蔵』の後半の『法典ケ原』という章で伊織と
いうこどもとのことからとった、ということです。また連絡します」

なるほどそうか、でもそんなシーンあったかなと思いながら、もしあったら私の方が井上ひさしさんにあやまろうと考えました。
さて自宅に帰ってきて、今は「宮本武蔵」が借りっぱなしですから、酒飲みながら、この章さがしました。しかしどこにも見当らないのですね。いろいろ探した結果、以下ではないでしょうか。
「空の巻」の「通夜童子」という章の最初に

そこは下総行徳村からざっと一里程ある寒村だった。いや村という
ほどな戸数もない。一面に篠や葦や雑木の生えている荒野であった。
里の者は、法典ケ原といっている。

とありますが、ここのことではないでしょうか。ここで初めて武蔵は伊織と会います。しかし、

（92-10-06 20:46:59）４たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと

と、毎日新聞学芸部への手紙で書いたように、やはり「宮本武蔵」にはありませんよ。さあ、どうするのですかね。
私しゃ、「宮本武蔵」全部打たなきゃ駄目かななんて思っていましたが、またこれで、毎日新聞学芸部当ってみます。
まだまだ続きそうですね。

（92-10-15 19:28:58）７たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと

（92-10-14 23:16:40）６たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと
  本日３時半ころ私の事務所に、毎日新聞学芸部の桐原さんから電話があり
ました。

の正確な内容です。

毎日新聞学芸部のＫ　と申します。「宮本武蔵」の件なんですが、ただいま井上ひさし氏からＦＡＸがはいりまして、「宮本武蔵」の後半の「法典野原」で伊織という少年がそれを、麻の実を跳ぶシーンがあるそうで、井上氏はそのへんから浮かべているようであります。また改めてご連絡申し上げます。

ということでした。「法典ケ原」ではなくどうしても「法典野原」と聞こえます。
さてそれで私はまた書留にて以下の文書を送りました。

１９９２年１０月１５日
毎日新聞社学芸部
Ｋ　Ｒ　様
〒101 東京都千代田区神田駿河台2丁目1番19号
株式会社私の会社名
Phone03-3291-8828�� Fax03-3291-4786
ここに自宅の住所電話
萩 原 周 二
前略
昨日はお電話いただきありがとうございました。ちょうどクライアント
で打ち合せ中だったもので、たいへん失礼いたしました。
早速ですが、昨日頂いた電話の内容は、

毎日新聞学芸部のＫ　と申します。「宮本武蔵」の件なんですが、た
だいま井上ひさし氏からＦＡＸがはいりまして、「宮本武蔵」の後半の
「法典野原」で伊織という少年がそれを、麻の実を跳ぶシーンがあるそ
うで、井上氏はそのへんから浮かべているようであります。
また改めてご連絡申し上げます。

ということでした。それで私は、「へーッ、そんなところあったかな」と
思い、あったら、井上ひさしさんならびにＫ　さんに謝らないとと考えま
した。それでまた「宮本武蔵」を調べてみました。
ところがいくら読みすすんでも、こんな章を見つけることができないの
です。それで、この井上ひさしさんがおっしゃっていることは、いろいろ
探した結果、以下ではないのでしょうか。

「空の巻」の「通夜童子」という章の最初に

そこは下総行徳村からざっと一里程ある寒村だった。いや村というほ
どな戸数もない。一面に篠や葦や雑木の生えている荒野であった。里の
者は、法典ケ原といっている。

とあります。ここのことではないでしょうか。これは今の船橋市の武蔵野
線船橋法典駅あたりのことだと思いますが、ここで初めて武蔵は伊織と会
います。
でもとにかく前のお送りしました文書のとおり、

作中、武蔵が弟子（伊織だったと思いますが）に麻の実を蒔いてその
上を毎日飛ぶようにと命じる部分があります

という部分はこの「空の卷」にはないのです。いや私が読んだ限り吉川英
治「宮本武蔵」の中にはありません。どうみてもこれは、井上ひさしさん
が、吉川英治「天兵童子」の中のシーンを「宮本武蔵」の話と勘違いして
いるものとしてしか思えません。できましたら、「宮本武蔵」ならびに
「天兵童子」を読み比べていただけないでしょうか。
再度申しあげます。間違いが確認できるのであれば、貴紙の紙面上にて
訂正解説をお願いします。
なおＫ　さまにはたいへんご面倒をおかけします。ただ私は吉川英治も
井上ひさしさんも好きな作家であるものですから、話をすっきりしたいと
思っているのです。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　早　々

さてこの結果はどうなるでしょうか。しかし今回は最初から書留郵便にしたのがよかったようです。証拠が残りますからね。まさか最初から内容証明（配達証明つき）では驚いてしまうでしょうから。
何をどうでもいいことしつこくやっているのだろうと思われる人もいるかと思います。しかし、私はかなり大切なことだと思うのですね。「やるべきときはやる」ではなく、「いまがやるときなのです」といつも考えているからです。吉川英治のことですから、あまり実生活には関係ないといえるかと思いますが、これが、税金のこととか、政治上のこととかだと問題となるかと思います。私にはどちらだって同じなのですよ。
昨日会った私の親友が、打ち合せのあと少し飲んだとき、金丸のことで、朝のテレビ番組（生島ヒロシが司会やっているといっていた）へ、札幌から３０分抗議の電話したと言っていた。それは、アントニオ猪木が「金丸やめろ」ということで、テレビで「猪木さんはさすがだ」というようなことをやっていたので、思わず、猪木の狡さと、マスコミのいいかげんさに腹がたって仕方なかったのだという。本当にそうですよ。私も今回では、猪木のような人間があまりに多いので頭に血がのぼります。まずその場で抗議することです。その場で阻止することです。
しかし彼がそうして抗議したって、何にも載らないわけですね。彼の怒りは、私と同じでしかもかなりな確信がある内容なのです。まあ私がやりますかね。彼も私も自民党がいけないとか、社会党もいけないとかいうことには、興味のない人間です。でも今回のように現れてくる、ひどい対応、くさつた大勢翼賛の匂には我慢なりません。
ここは宮本武蔵の話ですから、ここまでにしておきましょうか。

（92-11-06 21:32:47）８たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと

さて、

（92-10-15 19:28:58）７たび井上ひさし「宮本武蔵」のこと

で引続きやっている件ですが、その後なんの返事もないため、いくらなんでもどうしたのだろうと、本日午後３時５５分頃毎日新聞学芸部Ｋ　Ｒ　さん宛電話しました。
以下その内容です。

私　「Ｋ　さんお願いしたいんですが」
Ｋ　「はいＫ　ですが」
私　「前にですね、２回ほどお手紙さしあげた者なんですが、井上ひ
さしさんの宮本武蔵の件で、１度お電話頂きまして、そのあと
１０月１５日にまたお手紙さしあげたんですけれども」
Ｋ　「あの件はネ、井上ひさしさんがネ、あらためて武蔵を読み直し
てみたいとおっしゃっているんですがね。ところがちょっと時間
がネ　なくてなかなかお返事ができるまでに到っていないです」
私　「はあ、そうですか」
Ｋ　「もうちょっとしばらくお待ちいただきたい」
私　「そうですかでは分かりました、もう少し待ってますので」

というようなことで、まだ時間がかかりそうですね。しかし、これで井上ひさしさんはあの記事の前には吉川英治「宮本武蔵」は読み直してはいないんですね。それで喋ってしまうんですね。恐ろしいことだ。私は「周の書評」の場合も必ず読み直しますがね。吉本（吉本隆明）さんなんか、こんな姿勢と比べると驚くべきことをやっていますよ。先日の講演会の内容を私が未だ報告できていないのは、吉本さんがあげた数々の現代文学作品のそのひとつも私が読んでいないからです。少々恥ずかしくて。吉本さんはちゃんとやっていますよ。まあ、吉本さんと比較しては井上ひさしがかわいそうかな。
それと吉川英治のことどうでもいいんでしょうね。そんならあんな文書いてほしくないな。井上ひさしをちゃんと読んでいる人がいるんですよ。もうこのままいいかげんなことやったら、必ず彼の読者は減りますよ。だってもう私がそのことに情熱かけちゃうもの。（1993.11.01）

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