嵯峨天皇は桓武天皇の第二皇子であり、第５２代の天皇です。よく詩や書を作られたといいます。この詩もその一つです。
山夜 山の夜
嵯峨天皇
移居今夜薜蘿眠 居を移して今夜 薜蘿（註一）に眠る
夢裡山鷄報曉天 夢裏（註二）の山鶏（さんけい） 暁天（註三）を報ず
不覺雲來衣暗濕 覚えず雲来（きた）って 衣（ころも）暗に湿（うるお）う
即知家近深溪邊 即(すなわ）ち知る 家は深渓（しんけい）の辺（ほとり）に近きを
（註１）薜蘿（へいら） まさきのかずら
（註２）夢裏（むり） 夢の中。
（註３）暁天（ぎょうてん） 夜明け
今夜は宮中を出て、かずらのある山荘に眠ったが、
夢の中で山鳥の鳴く声が夜明けをつげている。
雲が来て衣服が暗いなか湿るのをみると、
この家はもやのかかった渓谷のほとりがちかいのだった。
思えば、平易な詩ですが、こういうふうに作詩することがいいのでしょうね。私なんかには、到底こういう心境にも境遇にもなることは遠いことでしょう。
今の私なんかには、遠い境遇なのかもしれません。