今、吉本隆明『思想のアンソロジー』をあちこち読んでみて、もうただただ感心だけしている私がいます。
最初この本を読んだのは、次女の結婚式のある舞浜のホテルへ衣装を借りる日のことでした。私はみんなより早めに一人で帰るのに、降りる駅を間違えて、浦安の街を延々と歩いてしまったものでした。だが、その歩いているときに、この吉本さんの本のいくつもの箇所が私の頭の中に浮かんできていたものでした。
夜桃林を出て暁嵯峨のさくら人（蕪村）
花の雲鐘は上野か浅草か（其角）
蕪村の句は空想のイメージでおおらかな隕になっている。其角の句は視聴の空想の現実性だ。気質、手法の地域差と思える。蕪村の句は俳諧ではなく、漢詩、長歌、端唄の韻律の良さがあり、この俳人の領域の広さがうかがえる。（吉本隆明「思想のアンソロジー」『蕪村書簡集』）
私は昔から、俳句は短歌よりも苦手意識があり、どうしても読み込めてきませんでした。だが、その中でも、この蕪村の句だけは好きになってきたものでした。
でも、思えば私には、この句をどう読むのかなあということすらはっきりしていないのだ。