将門Ｗｅｂ

周が日々仕事であちこち歩いたり、友人や家族と話した中で感じたことを発信しています。

Tag：秋部

15010908
　　　　　九月霜降秋早寒といふ心を
三〇六　虫の音もほのかになりぬ花薄秋の末葉に霜やおくらむ

　　　　　暮秋歌
三〇七　秋ふかみすそ野の真葛（まくず）かれぐれにうらむる風の音のみぞする

三〇八　秋はぎの下葉のもみぢうつろひぬ長月の夜の風の寒さに

三〇九　紅葉々（は）は道もなきまで散（ちり）しきぬ我（わが）宿をとふ人しなければ

三一〇　木（こ）の葉ちる秋の山べは憂（う）かりけり堪へでや鹿のひとり鳴（なく）らむ
15010909
　こうして実朝は鎌倉に虫の音も聴いて、紅葉も見ているのです。私は何度も鎌倉を訪れているのに、少しもそういうことに気がついていませんでした。私はいつも「鎌倉じゃ、飲むべきところが見つからないんだよな」なんていう思いばかりでした。なんか情けない私です。
　今度鎌倉を歩くときには、そういう鎌倉も大いに感じてこようと思っています。
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#源実朝『金槐和歌集』
#巻之上
#秋部
#虫の音も
#秋ふかみ

15010806
　　　　　秋のすゑによめる
三〇一　雁鳴（なき）風寒みたかまとの野辺のあさぢは色づきにけり

三〇二　雁鳴（なき）てさむきあさけの露霜に矢野の神山色づきにけり

三〇三　はかなくて暮（くれ）ぬとおもふをのづから有明の月に秋ぞのこれる

　　　　　惜秋という事を
三〇四　長月の有明の月のつきずのみ来る秋ごとにをしき今日（けふ）かな

三〇五　年毎に秋の別はあまたあれど今日（けふ）の暮（く）るゝぞ侘（わび）しかりける
15010807
　今ふと思いました。「雁」はどう読むのかなあ。「がん」かな。「かり」かなあ。やっぱり「がん」なのでしょうが、私はどうしてもいつも「かり」と読んでしまいます。「雁」は私にはどうしても「がん」とにごるのではなく、「かり」とよめてしまうのですね。　鎌倉を歩いて昔はいつも実際にそばを走るリスを感じていたものでしたが、この「雁」は感じたことはないなあ。
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#雁

15010804
　　　　　水上落葉
二九六　くれて行秋の港にうかぶ木の葉あまの釣（つり）する舟かとも見ゆ

　　　　　深山紅葉
二九七　神無月またで時雨や降りにけむみ山にふかき紅葉しにけり

　　　　　名所紅葉
二九八　初雁の羽風のさむくなるまゝに佐保の山辺は色づきにけり

二九九　雁なきてさむき嵐のふくなべに立田の山はいろづきにけり

　　　　　雁のなくを聞（きき）て
三〇〇　けさ来（き）なく雁がねさむみから衣立田（たつた）の山はもみぢしにけり
15010805
　こうして秋も深まっていきます。雁の鳴くのを聞いている実朝を思います。思えば、私は雁という鳥は知っているわけですが、実際にこうして身近にいる雁は知りません。また余計なことに「森鴎外『雁』」を思い出してしまいます。
　また鎌倉を歩くとき、いくつものことを思い出していくことでしょう。そんな瞬間を思い浮かべます。
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15010801
二九一　独（ひとり）ぬる寝覚に聞（きく）ぞ哀なる伏見の里に衣うつこのこゑ

　　　　　月夜菊花をたをるとて
二九二　ぬれてをる袖の月影深（ふけ）にけりまがきの菊の花の上の露

　　　　　雨のふれるに庭の菊を見て
二九三　露を重みまがきの菊のほしもあへず晴るればくもる村雨の空

　　　　　菊を
二九四　ませの内に夜おく露やいかならむぬれつゝ菊の移（うつ）ろひにける

　　　　　さほ山のはゝそのもみぢしぐれぬるということを人々によませしつい（ゐ）でによめる
二九五　さほ山のはゝそのもみぢ千々の色にうつろふ秋は時雨ふりけり15010802
「まがきの菊の花の上の露」というところを見ると、実朝は菊の花は好きだったのだろうな。私も好きにならないといけないなあ。私は花なんて少しも興味がなく、いや桜くらいは好きかな。いや桜のもとで酒を飲むのが好きなのだなあ。
　こうして実朝が菊を歌っているのを知って、この花は好きになれそうです。
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15010608
　　　　　八月十五夜の心を
二八六　久堅の月の光しきよければ秋のなかばを空にしるかな

　　　　　月前擣衣（とうい）
二八七　秋たけて夜ふかき月の影見ればあれたる宿に衣うつなり

二八八　さよ更けてなかばふけ行（ゆく）月影にあかでや人の衣うつらむ

二八九　夜を寒みね覚（ざめ）て聞（きけ）ば長月の有明の月に衣うつなり

　　　　　故郷擣衣
二九〇　み吉野の山下風の寒き夜をたれふる里の衣うちらむ15010609
「擣衣」が書けなくて（インターネット上で出せなくて）大変でした。「李白『子夜呉歌』」の三にもこの『「擣衣（ころもをうつ」があったな』と思い私のサイト内を見るのですが、私のパソコンが調子悪くて私が書いたものをコピーできません。たった今できるようになり、もう単語登録しました。
　もう実にこうしたことでは苦労ばかりです。
　でも思えば、実朝にはこれを書きながら、もっと苦しい悔しいこともあったのだろうな。実朝を思いたくさんのことをやっていきます。
15010610
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#秋たけて夜ふかき月の影

15010614
二八一　須磨のあまの袖ふきかへす塩風にうらみてふくる秋の夜の月

二八二　塩釜の浦ふく風に秋たけてまがきが島に月かたぶきぬ

　　　　　名所秋月
二八三　さゝ浪やひらの山風さ夜深（ふけ）て月影さびし志賀のからさき

二八四　月見れば衣手さむしさらしなや姥捨山のみねの秋風

二八五　山寒み衣手うすし更級やをばすての月に秋ふけしかば15010615
「姥捨山」という詞を見て驚いてしまいます。あの頃もこうしたことが行われていたのですね。つい近頃もこれに似た事件をテレビで見聞します。当時源実朝はどう思ったのでしょうか。「源家」という貴族をもはや必要とはしていないだろう鎌倉武士団を思います。それを如実に感じていたろうな。
　公暁に殺される朝の「出テイナバ主ナキ宿ト成リヌトモ軒端ノ梅ヨ春ヲワスルナ」という歌を今もまた思い出します。15010616
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#秋の夜の月
#秋たけて

15010206
　　　　　故郷月
二七六　行（ゆき）めぐりまたも来てみむ故郷（ふるさと）のやどもる月はわれを忘るな

二七七　大原やおぼろの清水里とほ（を）み人こそ汲まね月はすみけり

　　　　　水辺月
二七八　わくらばに行（ゆき）ても見しが醒（さめ）が井（ゐ）のふるき清水に宿る月影
　　　　　海辺月
二七九　たまさかに見る物にもが伊勢の海きよきなぎさの秋の夜の月

二八〇　いせの海や浪にたけたる秋の夜の有明の月に松風ぞ吹く15010207
　私の将門Ｗｅｂのサイドバーに源実朝の像を置きました。そこをクリックするとウィキペディアの源実朝が開きます。それと平将門へのウィキペディアを開くように吉本（吉本隆明）さんの上に置きましたのですが、像がどうしても気にいりましたものが見つけられなかったので、大手町の首塚の写真を置きました。もちろん、ここからも平将門様のウィキペディアが開きます。
　思えば私は源氏（源家も）なんて「源氏物語」から好きになれないのですが（源義家は好きですが）、実朝は大好きです。15010408
　ああ、ついでに「平家物語」の平家も好きではないです。ただし、清盛だけは好きですね。
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#やどもる月は
#おぼろの清水

1401050114010501
二七一　天の原ふりさけみれば月きよみ秋の夜いたく更（ふけ）にけるかな

二七二　我ながらおぼえずおつる袖の露月に物思ふ夜頃（よごろ）へぬれば

二七三　思ひ出（いで）て昔を忍ぶ袖の上にありしもあらぬ月ぞやどれる

　　　　　閑居望月
二七四　草の庵（いほ）にひとりながめて年もへぬ友なき宿の秋の夜の月

　　　　　荒屋月
二七五　浅じ原ぬしなき宿の庭の面にあはれ夜の月はすみけむ15010204
　この二七一の歌で当然私は「天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも」という安部仲麻呂を思い出します。私は以下に書いています。
　　http://shomon.livedoor.biz/archives/52040567.html
　　　2012年10月8日安部仲麻呂のことで
15010205
　私はここで以下のように書いています。

　ものすごく残念です。あの時代に篤い友情を感じられた日本人と中国人なのに、なんということなのでしょうか。私は悲しくて悔しくてたまりません。

　これは今も思います。私には中国人との日本人のご夫婦の友人がたくさんいるのです。その二人の子どもも見て哀しいばかりです。
　ただきっと実朝もこの歌で安部仲麻呂を思い浮かべたことでしょう。

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#袖の露月に

15010201
　　　　　秋の歌
二六六　玉だれのこすのひまもる秋風に妹（いも）こひしらに身にぞしみける

二六七　秋風はやゝ肌寒（さむく）成（なり）にけり独（ひとり）やねなむながきこの夜を

二六八　むかし思ふ秋の寝覚の床の上にほのかにかよふ峯の松風

二六九　住吉のきしの松吹（ふく）秋風をたのめて浪（なみ）のよるを待（まち）ける

　　　　　月歌とて
二七〇　月きよみ秋の夜いたく更（ふけ）にけりさほの河原に千鳥しばなく15010202
　このＵＰから、カテゴリを「周の詩歌の館」へ変更しました。
　またこうして「源実朝『金槐和歌集』」を読んでいきます。秋部もけっこう長いのですね。もともと私は実朝が好きなのですが（私は高校三年の３月から好きでした）、それは高校の古典の授業で、正岡子規の見解で、「万葉集がいいが、新古今集はよくない。実朝は万葉調の歌人だ」というのに、もう私は立ち上がってとうとうと抗議したものでした。「『実朝が万葉調の歌人だ』なんて言うのは少しも分かっていないのだ。新古今集は実にいいものなのだ。けっして万葉集にひけをとらないのだ」といったものでした。
　今もまったくそう思います。15010203
　ただ私こそが分かっていなかった。私は日本の詩歌よりも漢詩にこそ興味がありました。そして日本でも、日本人の作る漢詩のほうが詩歌よりもはるかに好きでした。それが今こうして実朝の歌を読んできてまったく私こそがわかっていなかったのです。大きく反省します。

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#秋の寝覚の床の上に

14123132
　　　　　田家露
二六一　秋田もる庵（いほ）に片（かた）しく我袖に消（きえ）あへぬ露のいくよおきけむ

　　　　　田家秋夕
二六二　かくてなほたへてしあとはいかがせむ山田もる庵（いほ）の秋の夕ぐれ

　　　　　海のほとりをすぐとて
二六三　ながめやる心もたへぬ和田（わた）の原八重の塩路（しほぢ）のあきの夕ぐれ

　　　　　秋夕によめる
二六四　大かたに物思ふとしもなかりけりただ我（わが）ための秋の夕ぐれ

　　　　　夕秋風ということを
二六五　秋ならでただ大かたの風のおとも夕（ゆうべ）はことに悲しきものを
14123133
　こうして実朝の『金槐和歌集』を書いていますと（写しているだけですが）、ものすごく実朝が親しくなっていく感じがします。でもまだ「巻之上」も終わっていないのですね。まだまだこの『金槐和歌集』は続くのです。
　あの鎌倉時代によくこの和歌集を書いたものです。しかも都から離れた鎌倉なのです。今後は藤原定家の歌も読みたい思いです。定家の編纂した『新古今和歌集』を読みたい思いです。
14123134
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#原八重の塩路

14123123
　　　　　ある僧に衣をたまふとて
二五六　野辺みれば露霜寒みきりぎりす夜の衣うすくやあるらむ

　　　　　秋の野におく白露は玉なれやといふことを人々におほせてつかう（ふ）まつらせし時よめる
二五七　さゝがにの玉ぬくいとの緒をよわみ風に乱れて露ぞこぼるゝ

　　　　　山辺眺望といふ事を
二五八　声たかみ林にさけぶ猿よりも我ぞもの思ふ秋のゆふべは

二五九　暮かゝる夕の空をながむればこだかき山に秋風ぞふく

二六〇　秋を経てしのびもかねに物ぞ思ふ小野の山辺の夕ぐれの空14123124
　こうして鎌倉の夕暮れの空を見ている実朝を思います。やはりこうした鎌倉の景色に心を奪われている実朝の心は鎌倉武士たちには理解不能なものだったのだろうな。どうしてもそうした風景を見ている実朝とそういう気持が理解できない鎌倉武士たちを思います。「あなたは征夷大将軍なのだよ」という北条義時の思いがものすごく感じられます。でもやはり実朝の心と視線はどうしても悲しく寂しく思えてしまいます。
　実朝の気持はどうだったのでしょうか。公暁に殺される朝の「出テイナバ主ナキ宿ト成リヌトモ軒端ノ梅ヨ春ヲワスルナ」という歌を思います。14123010
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#露霜寒み
#露ぞこぼるゝ

15010106
　　　　　蟋蟀
二五一　秋ふかき露寒き夜（よ）のきりぎりすただいたづらに音（ね）をのみぞ鳴（なく）

二五二　あさぢ原露しげき庭のきりぎりす秋ふかき夜の月に鳴（なく）なり

二五三　秋の夜（よ）の月の都にきりぎりす鳴（なく）は昔のかあげやこひしき

二五四　蟋蟀なく夕ぐれのあき風に我さへあやな物ぞかなしき

　　　　　長月の夜蟋蟀のなくを聞（きき）てよめる
二五五　きりぎりす夜はの衣の薄き上にいたくは霜のおかずもあらんむ15010105
　こうして秋の夜に蟋蟀の鳴く声を聴いています実朝のことを思います。政治は北条義時はすべてをやり、実朝はこうして和歌を書いてゆくだけなのです。でもその和歌はその後ずっと多くの人が見て読んでくれるものでした。
　藤原定家に選ばれたときの実朝の喜びを思います。選ばれたのはこの上に出しました百人一首の歌なのです。

　　世の中は 常にもがもな 渚こぐ 海人の小舟の 綱手かなしも14123113
　この上の百人一首の画像は、昨日おはぎ家族５人が来て食事したあと、孫たち三人とばあばがみんなで「ぼうずめくり」をやっていたのですが、それが終わって私が偶然に手にしていたのがこの札でした。私は驚き、でも嬉しかったのです。
　それとその下の画像はその前に食事のときに、子どもたちにはこれが入っていました。いいなあ。
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#巻之上
#秋部
#蟋蟀
#月の都に

14123006
　　　　　田家秋
二四六　山田もる庵（いほ）にしをれば朝な朝なたえず聞き聞きつるさをしかの声

二四七　から衣いな葉（ば）の露に袖ぬれて物思へともなれるわが身は

二四八　を笹原夜はに露ふく秋風をやや寒し戸や虫の鳴（なく）らむ

二四九　庭草の露の数そふ村雨に夜ふかき虫の声ぞ悲しき

　　　　　故郷虫
二五〇　たのめこし人だに訪わぬ故郷にたれまつ虫の夜はに鳴（なく）らむ
14123007
　鹿の鳴く声だけでなく、虫の声も聴いて歌に詠んでいる実朝です。こうして鎌倉の虫の声も聴いている実朝を悲しくも思います。どうしても鎌倉は私には寂しく思えてしまうのですね。何度歩いてもそうなのです。前々から孫たちと歩きたいと思っているのですが、七番下のじゅにが完全に歩けるようになったら行きますかね。
　ポポが自分より小さいじゅにを気遣う感じがあって、それが見られるじいじはものすごく嬉しいのです。そうした感じも鎌倉でも見ていきます。
14123009
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#しかの声
#露ふく秋風

14123003
二四一　さを鹿のおのが住（すむ）野の女郎花はなに飽かずと音（ね）をや鳴（なく）らむ

二四二　はぎが花うつろひて行（ゆけ）ば高砂のをのへの鹿のなかぬ日ぞなき

二四三　朝な朝なに露にをれふす秋萩の花ふみしだき鹿ぞ鳴（なく）なる

二四四　秋萩のむかしの露に袖ぬれてふるき籬（まがき）に鹿ぞ鳴（なく）なる

　　　　　夕鹿
二四五　なく鹿のこゑより袖におくか露もの思ふ此の秋の夕ぐれ14123004
　ここでも鹿がたくさん出てきます。そうか鎌倉も今と大きく変わったわけではないのですね。ただこうして歌を詠んでいる実朝は違います。私は実朝には到底かなわない自分を感じています。でもこうして少しは知ることができたのは嬉しいです。やはり吉本（吉本隆明）さんを思います。「吉本隆明『源実朝』」を思い出すのです。14123005
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#鹿のおのが住野の女郎花
#夕鹿

14122905
二三六　夕されば霧たちくらしをぐら山やまのとかげに鹿ぞ鳴（なく）なる

二三七　雲のゐる梢はるかに霧こめてたかしの山に鹿ぞ鳴なる

二三八　月をのみあはれと思ふさ夜ふけて深山（みやま）がくれに鹿ぞ鳴なる

二三九　さ夜ふくるまゝに外（と）山の木（こ）のまより誘ふか月に独（ひとり）鳴鹿

二四〇　朝まだき小野の露霜寒ければ秋をつらしと鹿ぞ鳴なる14122906
「鹿ぞ鳴（なく）なる」という表現がいくつも出てきます。実朝の住んだ当時の鎌倉では鹿が見られたものなのだ。私も奈良では市街地を普通に歩く鹿に出会いましたが（思い出せば小学６年の修学旅行の時だ）。
　こうして鹿の鳴く声に何か思うというのは、私には到底考えられないことなのです。私はそんな情緒なんか、あらゆることに感じられない人間なのです。
14122907
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#深山（みやま）がくれ

14122306
　　　　　雁をよめる
二三一　雁鳴（なき）て秋風さむくなりにけり独や寝（ね）なむよるの衣（ころも）うすし

二三二　秋風に山とびこゆる初雁の翅にわくる峯の白雲

二三三　足引（あしびき）の山とびこゆる秋の雁いくへの霧をしのぎ来ぬらむ

二三四　雁がねは友まどはせりしがらきやの杣（そま）山霧たゝるらし

　　　　　鹿歌に
二三五　妻こふる鹿ぞ鳴（なく）なるをぐら山やまの夕霧たちにけむかも14122603
こうして毎日『金槐和歌集』を岩波文庫から書いていきますと実に源実朝がものすごく親しく思えてきます。でも何故だか悲しいです。
「妻こふる鹿ぞ鳴（なく）なる」というところを読みますと、実朝はこの妻とどんな恋をしたのでしょうか。この妻は壇ノ浦で滅んだ平家の娘だったと聞いていますが、どうだったのかな。実朝を思うと私は悲しいばかりですが、これも仕方ないことなのかなあ。
14122603
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#鹿ぞ鳴（なく）

14122502
14122503
　　　　　故郷の心を
二二一　うづら鳴（なく）ふりにし里の浅茅生（あさぢふ）に行く夜（よ）の秋の露かおきけむ

　　　　　野辺露
二二二　かたの空とぶ雁（かり）の涙かもおほあらき野の笹の上の露

　　　　　夕雁
二二三　夕されば稲葉のたなびく秋風に空とぶ雁のこゑもかなしや

　　　　　田家夕雁
二二四　かりのゐる門田（かどた）のいな葉うちそよぎたそがれ時に秋風ぞふく

　　　　　海上雁
二二五　和田の原八重の塩路（しおじ）にとぶ雁の翅のなみに秋風ぞふく14122507
　昨日この『「源実朝『金槐和歌集』」４５』で、今日ＵＰするべきものをＵＰしていました。だからそれをここでやります。なんか、情けないです。
　でもとにかくこうしてやっていきます。
　実朝の思いは、こうして『金槐和歌集』を書いて行くことで、私には分かってきたものなのです。おそらく藤原定家もおおいに感じただろうことを今私も感じていられるのです。「この源家の将軍の歌はどうしてかひきつけられるな」。その通りです。私もそのことを大いに感じています。14122508
　なお「八重の塩路」の「塩」という字は違います。インターネットでは出てこない「しお」という漢字なのです。


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#空とぶ雁

1412240914122410
　　　　　月前雁
二二六　九重（ここのへ）の雲井をわけて久方の月のみやこに雁ぞ鳴くなる

二二七　鳴（なき）わたる雁の羽風（はかぜ）に雲消（きえ）て夜ふかき空にすめる月影

二二八　あまの戸を明（あけ）がた（の）空になく雁の翅（つばさ）の露にやどる月かげ
1412241114122412
二二九　天の原ふりさけみればます鏡きよき月夜に雁なきわたる

二三〇　むば玉の夜はふけぬらし雁がねのきこゆる空に月かたぶきぬ

　翅（つばさ）の字が出なくていつもの「漢字林」に頼りました。
　昨日午後５時頃からおはぎの家へ行ったのですが、新たらしい「Wii U」のゲームをミツ君パパとポコ汰・ポニョ・ポポがやるのを見て（始めてやるのです）、もう私は到底あの人たちにはついていけません。こうして源実朝の歌で「大変だなあ」と感じるほうがいいです。なんとか、やりきれるのですから。
14122413

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#雁の翅の露

1412240114122402
二一六　秋風になに匂（にほ）ふらむ蘭（ふじばかま）主（ぬし）はふりにし宿と知らずや

　　　　　女郎花
二一七　余所（よそ）に見てをらでや過（すぎ）し女郎花名をむつまじみ露にぬるとも

　　　　　葛
二一八　白露（しらつゆ）のあだにもおくか葛の葉にたまれば消えぬ風たたぬまに

二一九　秋風はあやなく吹（ふき）そ白露のあだなる野辺の葛の葉の上に

　　　　　槿　　　　　
二二〇　風を待（まつ）草におく露よりもあだなるものは朝顔の花1412240314122404
　こういういくつもの花を見ている実朝の視線を思います。鎌倉に集まる武士たちは決して見ようとはしていなかったものなのです。いや見てもこうして歌に詠むというようなことは少しも考えなかったのです。そこが実朝が違うところなのです。
　私も今度行きましたら、いくつもの花をしっかり見ていきましょう。
　そういえば、昔は小町通でもリスを見かけたものでしたが、今は見かけないなあ。昔は、大仏のそばで私の脚を登るリスに長女おはぎが驚いていたものでした。一緒に行きました私の母が「周二はいつもそうなのだよ。動物に好かれているんだよ」と言っていたものでした。
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#女郎花
#葛の葉

14122302
　　　　　曙に庭の萩を見て
二一一　朝ぼらけ萩のうへ吹（ふく）秋風に下葉おしなみ露ぞこぼるゝ

　　　　　夕の心をよめる
二一二　たそがれに物思ひをれば我宿の荻の葉そよぎ秋風ぞ吹く

二一三　われのみやわびいしとは思ふ花薄（はなすすき）ほに出（いず）る宿の夕ぐれ

　　　　　野刈萱
二一四　夕されば野路（のじ）の刈萱（かるかや）うちなびき乱（みだれ）てのみぞ露もおきける

　　　　　蘭
二一五　藤ばかま着てぬぎかけし主やたれ問へどこたへず野辺の秋風14122303
　こうした私たちでもよく知っている花を見ている実朝の心の中を思います。母政子もどうしても鎌倉武士団の尼将軍でもありました。もう実朝には、京都公家政権の右大臣になるだけなのです。でもそれは従兄弟の北条義時には、「所詮、公家のおぼっちゃんはしょうがないなあ」と思われてしまうだけなのです。でもその右大臣就任を鶴が丘八幡宮の父頼朝に報告に行こうとして公暁に殺されてしまいました。
14122304
　　出テイナバ主ナキ宿ト成リヌトモ軒端ノ梅ヨ春ヲワスルナ

という最後の実朝の歌が哀しいばかりです。「公暁殿、ナゼ、ソナタハワタシヲ刺シタノカ？」という最後での源実朝の声が私にも聞こえます。この声は「兵頭正俊『全共闘記』」の中の第５作の『死�了魁戮納堕�が発する言葉です。
14122305
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#秋部
#庭の萩
#荻の葉そよぎ

14122034
二〇六　花におく露をしづみ白菅（しらすげ）の真野の萩原しをれあひにけり

　　　　　庭秋
二〇七　秋風はいたくな吹（ふき）そ我宿のもとあらの小萩ちらまくもをし

　　　　　古郷萩
二〇八　古郷のもとあらの小萩いたづらに見る人なしみさき咲か散るらむ

　　　　　路頭萩
二〇九　路のべの小野（をの）の夕霧たちかへり見てこそゆかめ秋はぎの花

　　　　　庭の萩わづかにのこれるを月さしいでて後見るに散りわたるにや花の見えざりしかばよめる
二一〇　萩の花くれぐれまでもありつるが月出（いで）見るになきがはかなき
14122204
　萩の花が出てきています。よく鎌倉で見ていたのだなあ、と思うばかりです。今度鎌倉を歩くときはよくこうした花にも気をくばっていきましょう。
　こうして歌を書いて、実朝は右大臣になるのです。その時は北条義時のわずかな怒りを思います。「あなたは征夷大将軍なのだよ。何でいまさらそんなに貴族になりたいの」。そんなことを言ったって、実朝は本気で貴族の路を歩むのでした。
14122205
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#小野（をの）の夕霧

14122201
二〇一　秋風に夜のふけ行けば久堅（ひさかた）の天の河原に月かたぶきぬ

　　　　　七月一四日の夜勝長寿院の廊（らう）に侍りて月さし入（いり）たりしによめる
二〇二　ながめやる軒のしのぶの露の間にいたくな更けそ秋の夜の月

　　　　　草花
二〇三　野辺に出（いで）てそぼちにけりな唐衣きつゝ分けゆく花の雫に14122202
　　　　　萩をよめる
二〇四　秋はぎの下葉もいまだうつろはぬ（に）けさ吹（ふく）風は袂さむしも

二〇五　みる人もなくて散（ちり）にき時雨のみふりし里の秋萩の花14122203
　こうして実朝は鎌倉での秋を見ています。どうしても鶴が丘八幡宮の下の幼い銀杏の樹では寂しい気持にもなります。でもあれも大きくなっていってくれるのでしょう。
　先週の１９日（金）午前中に「nugooの手ぬぐい 鎌倉」（ここのサイドバーにバナーがあります）から可愛いカレンダーが着きました。これを見てまた実朝を感じていきます。
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#秋の夜の月

14122030
　　　　　七夕
一九六　天の川霧たちわたる彦星の妻むかへ舟はやも漕がなむ

一九七　恋いしくて稀にあふ夜の天の川河瀬の鶴（たづ）鳴かずもあらなむ

一九八　七夕の別ををしみあまの川安（やす）の渡にたづも鳴かなむ

一九九　いまはしも別れもすらし棚機（たなばた）の天の河原にたづぞ鳴（なく）なる

　　　　　秋のはじめ月あかゝりし夜
二〇〇　天の原雲なきょひ（ゐ）に久かたの月さへわたるかさゝぎの橋14122031
　またこうして鎌倉の地で実朝は天の川を見ています。私も中学生の時（甲東中学）に、鹿児島で桜島の裏のほうの大隅半島の垂水市海潟というところへキャンプに行ったことがあります。生徒会の研修キャンプでした。そこで夜空には驚くほどの星空・天の川を見たものでした。
　もうただただ美しい満天の星でした。あんな空を実朝も見ていたのかなあ。
　私はただただ美しい空と天の川を見て感激していたものでした。14122032
この画像はＢＯＯＭの解散コンサートが武道館であったときのものを撮りました。
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14121702
14121703
一九一　独（ひとり）ゆく袖よりおくか奥山の苔のとぼその路のゆふ露

　　　　　秋のはじめに詠める
一九二　天の川みなわさわさかまきゆく水のはやくも秋の立ちにけるかな

一九三　久かたの天の河原をうちながめいつかと待（まち）秋も来にけり

一九四　彦星の行合（ゆきあひ）をまつ久方の天の河原にあき風ぞ吹く

一九五　夕されば秋風涼したなばたの天の羽衣たちや更（こ）ふらむ14121704
こうして天の川・彦星・天の羽衣というような身近に思える言葉が出てきます。実朝の使う言葉はこうして私たちにも身近なのです。これによって（実朝のおかげで清和源氏は私たちにも身近なものになれたのです）源家はより親しめるものなのです。頼朝では、こうはなりませんでした。あとで私が清和源氏も好きなものになったことを示します。桓武平氏たる平将門はこのホームページ・ブログは「将門Ｗｅｂ」というように大好きな存在ですが、実朝のおかげで源家もどうやら好きになってこれそうなのです。
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14121319
一八六　すむ人もなき宿なれど荻の葉の露を尋（たづね）て秋は来にけり

　　　　　白露
一八七　秋ははや来にけるものを大かたの野にも山にも露ぞおくなる

一八八　今よりは涼しくなりぬ日ぐらしの鳴く山かげに秋の夕風
14121320
　　　　　蝉のなくを聞ゝて
一八九　吹（ふく）風は涼しくもあるかおのづから山の蝉鳴（なき）て秋は来にけり

　　　　　山家思秋
一九〇　ことしげき世をのがれしに山里にいかで尋（たづね）て秋の来つらむ
14121321
　実朝も「秋は来にけり」と詠っています。もう鎌倉にいる実朝にも秋なのです。いやもう秋が感じられ、それを素直にこうして表現しているのです。それがこうして実朝が詠っているのです。こうした心根を定家はいいものだと思ったものなのでしょう。
　そのことはもはや『「万葉調」だ、「新古今調」だ』などと言って納まるものではないのです。そのことを感じてしまいます。
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14121313
　　　　　秋風
一八一　ながむれば衣手さむし夕づく夜さほの川原のあきの初風

一八二　夕されば衣手涼し高圓（たかまと）のをのへの宮の秋のはつ風

　　　　　海辺秋来
一八三　霧たちて秋こそ窓に来（き）にけらしふきあげの浜の浦の濫風（しほかぜ）

一八四　うちはへて秋は来にけり紀の國やゆらのみ崎の海人（あま）のうけ縄（なは）

　　　　　初秋歌
一八五　野となりてあとは絶えにし深草の露のやどりに秋は来にけり14121314
　これは７月のことなのかなあ（歌を詠んでいる今は８月でしょうが）。秋の風をおおいに感じます。鎌倉の秋を感じないといけないのだよなあ。鎌倉を歩いたときの秋を思い出しています。
　インターネットで見て、鎌倉のあるお店に頼んだものを思います。たぶん今日到着するでしょう。来ましたら、ここで写真を披露します。
14121315
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