私は、この時のテベリオ・カイザルというローマ帝国皇帝が私には正確に誰なのか分かりませんでした。初代皇帝カイザル・アウグストを継いだティベリウスのことなのですね。私は「塩野七生『ローマ人の物語』」（全１５巻）を読みましたが、この皇帝はいわば悪帝なのですね。
イエスがいう「神のものは神に、カエサルのものはカエサルに」のカエサルとは、この皇帝のことです。でもまたこの言葉も捜してみます。
第３章
テベリオ・カイザル在位の十五年、ポンテオ・ピラトはユダヤの總督、ヘロデはガリラヤ分封の國守、その兄弟ピリポはイツリヤ及びテラコニテの地の分封の國守、ルサニヤはアビレネ分封の國守たり、アンナスとカヤパとは大祭司たりしとき、神の言、荒野にてザカリヤの子ヨハネに臨む。かくてヨルダン河の邊なる四方の地にゆき、罪の赦を得さする悔改（くいあらため）のバプテスマを宣傳ふ。預言者イザヤの言（ことば）の書（ふみ）に
『荒野に呼はる者の聲す。
「主の道を備へ、その路すじを直くせよ。
諸（もろもろ）の谷は埋められ、諸の山と岡とは平げられ、
曲りたるは直く、嶮しきは坦かなる路となり、
人みな神の救を見ん」』
と録されたるが如し。さてヨハネ、バプテスマを受けんとて出できたる群衆にいふ『蝮の裔よ、誰が汝らに、來らんとする御怒（みいかり）を避くべき事を示したるぞ。さらば悔改に相應（ふさわ）しき果（み）を結べ。なんぢら「我らの父にアブラハムあり」と心のうちに言ひ始むな。我なんぢらに告ぐ、神はよく此らの石よりアブラハムの子等を起し得給ふなり。斧ははや樹の根に置かる。されば凡て善き果を結ばぬ樹は、伐（き）られて火に投げ入れらるべし』群衆ヨハネに問ひて言ふ『さらば我ら何を爲すべきか』答へて言ふ『二つの下衣（したぎ）をもつ者は、有たぬ者に分け與へよ。食物を有（も）つ者もまた然（しか）せよ』取税人もバプテスマを受けんとて來りて言ふ『師よ、我ら何を爲すべきか』答へて言ふ『定りたるものの外、なにをも促（はた）るな』兵卒もまた問ひて言ふ『我らは何を爲すべきか』答へて言ふ『人を劫（おびや）かし、また誣（し）ひ訴（うつた）ふな、己が給料をもて足れりとせよ』
民、待ち望みゐたれば、みな心の中にヨハネをキリストならんかと論ぜしに、ヨハネ凡ての人に答へて言ふ『我は水にて汝らにバプテスマを施す、されど我よりも能力（ちから）ある者きたらん、我はその鞋（くつ）の紐を解くにも足らず。彼は聖靈と火とにて汝らにバプテスマを施さん。手には箕（み）を持ちたまふ。禾場（うちば）をきよめ、麥（むぎ）を倉に納めんとてなり。而して殼は消えぬ火にて焚きつくさん』
ヨハネこの他なほ、さまざまの勸（すすめ）をなして、民に福音を宣傳ふ。然るに國守ヘロデ、その兄弟の妻ヘロデヤの事につき、又その行ひたる凡ての惡しき事につきて、ヨハネに責められたれば、更に復一つの惡しき事を加へて、ヨハネを獄に閉ぢこめたり。
民みなバプテスマを受けし時、イエスもバプテスマを受けて祈りゐ給へば、天ひらけ、聖靈、形をなして鴿（はと）のごとく其の上に降り、かつ天より聲あり、曰く『なんぢは我が愛しむ子なり、我なんぢを悦ぶ』
イエスの、教を宣べ始め給ひしは、年おほよそ三十の時なりき。人にはヨセフの子と思はれ給へり。ヨセフの父はヘリ、その先はマタテ、レビ、メルキ、ヤンナイ、ヨセフ、マタテヤ、アモス、ナホム、エスリ、ナンガイ、マハテ、マタテヤ、シメイ、ヨセク、ヨダ、ヨハナン、レサ、ゾロバベル、サラテル、ネリ、メルキ、アデイ、コサム、エルマダム、エル、ヨセ、エリエゼル、ヨリム、マタテ、レビ、シメオン、ユダ、ヨセフ、ヨナム、エリヤキム、メレヤ、メナ、マタタ、ナタン、ダビデ、エツサイ、オベデ、ボアズ、サラ、ナアソン、アミナダブ、アデミン、アルニ、エスロン、パレス、ユダ、ヤコブ、イサク、アブラハム、テラ、ナホル、セルグ、レウ、ペレグ、エベル、サラ、カイナン、アルパクサデ、セム、ノア、ラメク、メトセ
ラ、エノク、ヤレデ、マハラレル、カイナン、エノス、セツ、アダムに至る。アダムは神の子なり。
塩野七生さんの著作でも、『ローマ人の物語VII 悪名高き皇帝たち』の最初の皇帝がこのテベリオ・カイザルですね。このときにイエスはパレスチナに生きたのですね。
